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【御来店】
カラン カラン
今日も客がやってきたようだ
「いらっしゃいませ。」
今日の客は
薄暗い顔をして静かに座っている女性
『メニュー表はどこにあるんですか?』
と女性が喋る
声が震えていた
「注文内容はもう決まっています」
と私はいつものように唱える
『つまり、どういう事ですか?、』
女性は驚いているようだ
「あなたが扉を開けたときにはあなたの注文する内容は決まっているです」
「あなたを変えてくれるような注文内容がね」
この言葉を聞いて女性は納得したようだ
珍しい客だ
普通の客なら《意味が分からない》
と言って帰っていくのに、
「ではごゆっくり」
「お待たせしました」
注文内容は オムライス
女性はすぐにスプーンをもち
食べ始めた
そして涙を流す
この店は悩みを抱えた客がやってくる
離婚したい、仲直りしたいなど
悩みは様々だが
その悩みを少しでも楽にする事ができる
のがこの店だ
今日やってきた客の悩み
私には分からない
だけど食べ物には分かるのだ
人の悩みとやらが
食事をすると幸せな気持ちになるというのは
そういう事なのだろう
少し経って
『とても美味しかったです』
『私、母にもう一度会ってきます』
『あのオムライス、母がつくってくれたのに似てて、母を思い出しました』
『ありがとうございました』
と女性は言う
薄暗かった女性
今はとても明るい
今日も悩みがなくなった
次の客は誰かな
カラン カラン
あ、
誰か来たようですね。
ではこの辺で御来店ありがとうございました