テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
激重両片想がいつの間にか謎に青春になってしまったので供養。
r = 青井 らだ男 ( 愛称 らっだぁ )
p = 天乃 絵斗 ( 愛称 ぺんちゃん )
おはようからお休みまで 、 全部俺の言葉で再生されていて欲しい。
そんな事を思い始めたのは 、 何時からだろうか。
友情として好き 、 とはまた違う 、 グロい何かを想いだしたのは何時からだろうか。
右斜め前で 、 午後の陽気な暖かさと 、 先生の声がオルゴールになって 、 どうも眠気を誘われているのか 、 うとうとと今にも眠りそうな彼を見ながらも 、 どこぞのバカップルの彼氏かと問われそうなことを想う。
そんな馬鹿馬鹿しい想いを吐き捨てるかのように 、 深く 、 そして静かに溜息を吐く。
その溜息は 、 たった1人 、 それも年が近く同性の男に調子を狂わされた自分への嘲笑がこもっていたのは言うまでも無いだろう。
p「 — 井? 青井ってば 、 聞いてんの? 」
r「 ⋯ あー 、 何て? 」
耳元 、 少し上の方から零れ落ちてきた名を呼ぶ声に我に返れば 、 上の空を保ったまま応える。
いつの間にか 、 チャイムが鳴り 、 それで意識が覚醒したのか先程とは打って変わって元気な様子の彼が 、 天乃絵斗が俺の机に手を置き 、 図々しくも不信感を抱えた視線を送ってきていた。
p「 お前さあ 、 何回俺が呼んだと思ってんの!? お爺ちゃんかよ 」
r「 オーイ 誰がくそじじぃだって?? 」
p「 そこまで言ってねぇよ!! 」
ここまでテンプレ 、 ここからが本題。
そんなノリを毎日続けてしまったからこの関係値から踏み出せないんだろう 、 と 、 何度思ったことか。
と 、 湿っぽいことを思ってしまってはまた彼に怒られてしまう。こういうことを考えるのは後で 、 家に帰ってからでいい。
p「 それでさ 、 今日の昼のことなんだけど 、 俺一緒に食えんわ 」
r「 珍し 。 何 しにがみくんとかと食うの? 」
p「 いや 、 そういう訳じゃなくて ⋯ まあ 、 理由なんでもよくね? 」
r「 良くないけど。 何 、 告白の呼び出しでもされた? 」
冗談で口を飛び出した問いかけは 、 着地地点を見失ったかのように低空飛行を続け 、 受け取られることなく墜落する。
「 んなわけねぇだろ 」 と 、 軽口が飛んでこないのに驚いては彼を見ると 、 言葉を選んでいるのか何なのか 、 目を泳がせる姿が目に映った。
その姿は 、 自分の冗談が的を射ていることを裏付けているようだった。
r「 ⋯ 誰に呼び出されてんの 」
p「 は 、 はあ?別に呼び出されてねぇけど。てか彼に呼び出されてたとして関係ないでしょ 青井には 」
r「 関係あるに決まってる。誰?委員会で一緒だった奴?それとも他の誰かの友達? 」
p「 ちが ⋯ いやまじでお前には関係ねぇだろって!!!何 、 どした?? 」
r「 ⋯ いや 、 なんも。 」
どうしたのか 、 と問われれば嫉妬している 、 と口から飛び出そうになったが 、 幸いそのタイミングで予鈴がなってくれ 、 なんとか踏みとどまることに成功した。
苦虫を噛み潰したような顔をする俺を不審には思ったものの 、 予鈴がなってしまったせいか 、 首を傾げつつも彼はおとなしく席へ戻ってくれた 。
くだらなく退屈な授業を終えてしまえば 、 今の授業は4限だったので 、 必然的に弁当の時間がやってくる。
何時もなら気分上々で楽しみな昼休みも 、 1つの要素が欠けただけで無駄なものに思えてしまった。
ぼうっと 、 話しかけてくるクラスメートに空返事をしつつ 、 時間が過ぎるのを待つ。
何かイベントでもあったのか 、 近くの女子の集団が色めき立っていて 、 通りやすい甲高い声がいやでも耳元を通ってしまって 。
「 振られちゃった 、 んだよね ⋯ 」
「 え 、 そうなの ⋯ !? 」
「 うん 、 なんか ⋯ なんか 、 付き合えないからって言われちゃって 」
どうやら 、 女の子が振られてしまい 、 その慰め会をしているらしい。
話の内容とタイミング的に 、 彼女が告白したのは絵斗で間違いないだろう。
「 ええ!?見る目ないね アイツ!!信じられない!! 」
「 だよねだよね 、 フツーに断ってくるもんだから苛ついちゃってビンタしちゃったんだけど 、 別に悪くないよね?私 」
ガタン 、 と喧騒に似つかわしくない 、 大きな音がした。
その場にいた全員が驚き 、 その音のした方向を向く。
「 え 、 青井くん ⋯ ? 」
背後から驚いたようななんとも言えぬ声が聞こえてくるが 、 全てを無視して教室を飛び出す。
割と遠い保健室を目指して 、 普段は走ることのない廊下を走る。
向かう途中で予鈴 、 本鈴が鳴った気がしたが 、 お構い無しにただ目的地を目指す。
保健室については勢いを殺すことなく扉を開けると 、 鼻腔に仄かな薬品の匂いと 、 どこか安心する特有な匂いが掠めてくる。
その場で周りを確認すれば 、 椅子に座り今まさに治療を受け終わったであろう 、 右頬にガーゼを貼った絵斗と目が合った。
その姿をみた瞬間 、 ふつふつと怒りに似た何がこみ上げてきて 、 それを隠すこともなく彼の元へ足を動かした。
r「 絵斗 」
p「 え 、 青井!? な 、 何でいんの!? 」
r「 別に 、 理由なんてなくていいでしょ 」
p「 い 、 いや今授業中だろ!! 」
どうしても来て欲しくなかったのかと 、 そんなことを思うくらいの言葉が降りかかってくるが 、 聞かないフリをする。
彼を預かってくれていた保健室の先生に一礼、 そしてまだ状況が掴めていないのか呆然とする彼の手を掴む。
r「 ほら 、 帰るよ 」
p「 え 、 え? 帰るって ⋯ まだ下校時間じゃなくね? 」
r「 いや 、 そうだけど。今からお前は早退すんの 」
p「 なんで!? 俺 ⋯ 俺まじで健康だけど !? 」
帰りたくないのか ⋯ 否 、 ’ 俺と ’ 一緒に帰りたくないのか 、 あーだこーだ言い訳を並べてくるが 、 全て無視する。
こういうときの絵斗は何を言っても否定して変な言い訳を並べるから無視するのが1番速い。
結局 一度俺だけ教室に戻っては自分と彼の分 、 2つ分の荷物を回収し 、 未だ駄々を捏ねる大きい荷物を引っ張りながら 、 俺は合法的に学校を後にした。
最近は日が落ちるのが速くなったようで 、 顔の半分を夕陽で照らされていて 、 熱ささえも感じる。
苛々する。
熱さに 、 も強ち間違いではないが 、 1番はきっと 、 絵斗を傷つけられたことに 、 だろう。
彼が絶対にやり返してこないからと 、 自分の傷ついた鬱憤を晴らすなんてことをする輩は死んでいい。
そんな事を考えてしまっては 、 思わず口を固く閉じる。
今口を開けば 、 きっと 、 火傷るほど熱い何かが爛れて出てくるから。
ただ只管無言で 、 汗の滲んだ彼の手を引きながら 、 目的地へと向かった。
彼は何を考えているのだろうか。彼のことだから 「 お前無言で怖いって 」 、 とか 、 「 迷惑かけてごめん 」 とかだろうけど。
何思ってんの お前は 。
好きだなあ。
こう思い始めたのは何時からだったか 、 よく覚えている。
けれど 、 それ以上の ⋯ それ以上の 、 汚らしい 、 友情と言う超えてはいけないラインを超えてしまった感情が何時から芽生えたのかは覚えていない。
こちらを一度たりとも見ず 、 俺の手を掴んでは引き続け 、 夕陽に横顔を照らされる彼を見つめながら 、 まるで乙女のようなことを想う。
改めて熟した彼への想いを飲み込むように 、 深く 、 そして静かに息を吸う。
この吸った息が 、 甘い恋心とは言い難い 、 まるで溶けきってしまったビターチョコのような何かの味がしたのは俺にしかわからないだろう。
きっと汗が滲んでベトベトの手に 、 バレない程度の力を込める。
俺さ 、 お前に言いたいこといっぱいあるんだよ。
喋んないのマジで怖いから喋れって言いたいし 、
変なとこ見せてごめんって言いたいし 、
見に来てくれて 、 俺の気持ちわかってくれて有難うって言いたいし 、
でも正直 、 こういう優しい行動を他の人にもやってるって考えるとモヤモヤするし 、 嫉妬してるって声を大にして言いたい。
と 、 まあ 、 言いたいことを心のなかで羅列したって言えないことには変わりないんだけどさ?
そんなように言葉を選んでいれば 、 いつの間にか家周辺まで辿り着いていてことに気づき 、 それと同時にお別れの時間が迫っていることにも気づいた。
どうしよう 、 と1人で慌てていれば 、 時は虚しく過ぎ 、 見慣れた家まで辿り着いてしまった。
ここまでずっと無言で 、 一切俺の方をみなかった彼は 、 ここで漸く俺の方を向いた。
だが 、 その口は開くことなく 、 俺に鞄を押し付け 、 また明日 、 と小さく小さく呟いては俺に背を向けてしまった。
言って欲しくない 、 と本当に強く思ったのか 、 さっきまでカラカラに乾いていて 、 声を出せなかった喉が大きく開き 、 声が漏れた。
p「 ⋯ あお ⋯ らっだぁ 」
r「 ⋯⋯ 何? ぺんちゃん 」
俺の呼びかけにのっそりと振り返った彼は 、 懐かしい呼ばれ方をした 、 と言わんばかりに目を見開き 、 少し嬉しそうに頬を綻ばせているように見えた。
その様子に思わず口角が緩みそうになるが 、 慌てて制止 、 真面目な顔を作る。
p「 俺さ 、 らっだぁに言いたいことあんだよね 」
涼しくもなんにもない 、 ただの熱風が全身を舐めるように吹いている。
あまりに 、 あまりにこんな台詞を語るには相応しくないシチュエーションなんだろう。
けど 、 言いたくなってしまったものは仕方がない。
火傷て爛れた空気を胸一杯に吸い込んで 、 俺は口を開く。
p「 俺 、 お前のこと好きだよ 」
〆
コメント
4件
え、ほんとにほんとに最高です! _:( _ ́ཫ`):_ 終わり方天才すぎません???? こういうの大好物です💕 ありがとうございます┏○┓(←土下座) 前の話を見返しながら楽しみにしています🥰︎💕
駄さんの表現力分けてください。