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蛸星の記憶喪失について考えていたら思い浮かんだ話
2人の不憫属性を存分に発揮させているのでは苦手な方注意
話の途中からR18
彼が他の誰かを見ているんじゃないかと思うようになったのはいつからだったか。
浮気を疑っているわけじゃない。
だって、他の誰かと恋仲かと錯覚するほど仲睦まじく一緒にいるところを見た事はないし、そもそも彼は誠実な人だと思うし、そんなに器用な人じゃないし。
どれだけ考えても答えは出ない。
彼に聞く勇気もない。
だって怖いから。もし他に好きな人がいて、じゃあいらないって言われたら。
そんな淡白な人じゃない。
そんなに簡単に割り切れるほど薄い関係を築いた覚えはない。
だけど、だけど……。
確証が何1つない。
俺の顔を見て、誰かと重ねて見ているんじゃないかってある日ふと、思ってしまったから。
前の恋人もしくは、浮気相手と自分がもしかしたら似ているのでは。
突然そう思いついたとりとめもない仮定が妙に納得出来て、これがもし本当なら、と考えたら形を表した。
思いつかなければこんなに不安になることなんてなかったはずなのに。
「恋人に”ずっと一緒だよ”って言う心理?」
「うん」
「それはずっと一緒にいたいからでしょ 」
「いや、そうなんだけどさ」
小柳は仕事の休憩時間、伊波にとある話題を持ちかけていた。
「ずっと一緒なんて無理じゃん。冷静に考えたら。いつかは死んじゃうし」
「うわ、冷めてんな。案外ロマンチストなんじゃないかと思ってたけど」
「嘘付きたくないんだよ。ずっととか、絶対とか約束できないことは言いたくない」
「盲目と誠実のダブルコンボじゃん。割と重いね、ロウ」
「いいからお前の考え聞かせてくれよ」
分かっていたはいたが辛辣な返しをしてくる伊波にしおしおとなりながら聞けばあっさりと答えた。
「あれって比喩表現だと思うんだよね」
「比喩?」
「そう。絶対無理なのは分かってて、それでも
“そのくらい今お前のこと想ってるんだよ”
っていう比喩表現」
「はあ」
思っていたより単純で淡白な回答。ただ、だからこそすんなりと納得できた。
難しくない短い言葉でここまでしっくりくるなら真理を突いているんじゃないかとさえ思えた。
「なんだよ答えたのにその反応は」
「大変参考になりました」
「よろしい」
不服そうな顔した伊波に素直にお礼を言えば背筋を伸ばして仁王立ちになって見せた。
「じゃあ俺、メカの修理に行ってくるから」
かと思えば工具箱を引っ掴んで早々に休憩室を出て行ってしまった。
慌ただしい。急ぎで仕事が入ったのだろうか、と思ったが誰かと連絡をとっていた素振りはなかった。
伊波は予め入っていた仕事に遅れるようなことはしない。
だとしたら、 気を遣って話に乗ってくれたのだろうか。
伊波の出て行ったドアを見ていればスマホに通知が入る。
確認してみるとそれは恋人の星導からの連絡。家への誘い、と思ってよく見れば夜の誘いも兼ねた文面だった。
小柳は少し考えてから”いいよ”と送った。