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これは、ずっと昔の話。
けれど、昨日のことのようにも感じられる。
同じ存在の二人が笑い合う。
どちらが先に産まれたのか、
どちらが姉で、どちらが妹か。
───そんなもの、二人にとってはどうでもよかった。
「わたしは、あなた」
「あなたは、わたし」
「それでいいの」
お互いの手を合わせ、
離れないよう指を絡め、
二人だけの内緒話をするように、
耳元に口を寄せてそう囁いた。
本丸の奥、静かに咲く桜の木の下で───
白と紅、ふたつの狐面が並ぶ。
どちらが姉か、妹か。
どちらが彩桜花で、桜乙花か。
そして、今ここに立っているのは───誰か。
全ての真実を知るのは、狐面の女性たちだけ──。