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しばらくその場で待機した結果、事態の収拾を諦めたイディアゼッターが今すぐ全員で帰る事を提案。グレッデュセントは泣いて喜んだ。
「ニオ、ニ~オ~」
「う……あひっ!? テ、テリア様?」
「帰るから起きて」(まだ寝起きだと一瞬怖がられるなぁ。あんな夢の終わり方じゃ仕方ないかもだけど)
「ひゃい……」
起きてからも少々ビクビクしながら杖を持ち、大きなアリエッタを直視しないようにネフテリアの陰で大人しくするニオ。「うちは空気、うちは小石……」という小さな呟きは、ネフテリアにしか聞こえていない。
アリエッタは相変わらず成長した体でピアーニャを離そうとしない。メレイズはアリエッタと仲良くくっつく事が出来てご満悦である。
「アリエッター、メレイズちゃんー、帰るってー」
「はーい、アリエッタちゃん、行こ」
「? はーい?」(とりあえず返事しとこ)
「わちもおおきくしてくれぇ……」
こうしてピアーニャを自らの母性で包んだまま、アリエッタはミューゼとパフィの元に駆け寄った。
「あれ?」
後ろから見ていたメレイズは気づいたが、小さく見える妹分に夢中なアリエッタは、自分のスカートの中の異変にまだ気が付いていない。
「そういえばこれ、どうやって戻ればいいの?」
「お気づきになられましたか……」
「勘のいい子は好きよ」
それよりも自分の異変に気が付いた所で、イディアゼッターと空間から生えた手が近づいてきた。ちなみに空間の裂け目自体を動かしているのはイディアゼッターである。
「あ、ゼッちゃんおじさんと……手のバケモノ?」
「バケモノじゃないわよ! っていうか貴方ゼッちゃんおじさんって呼ばれてるの? ……ぶふっ」
「……せめてゼッちゃんかおじさんの、どっちか片方にしていただけますか?」
「?」
悲しい事に、今この場でまともに会話出来そうなのがメレイズだけだった。大きな種を大事に抱えているネフテリアには、ちょっと近づき難いと思っている。
「そのままでは動きにくいでしょうし、アリエッタさんに聞き出すしかないでしょう」
「わかりましたー」
そんな事を話した矢先、ピアーニャの我慢が限界を超えた。
「だーっ! なんでわちをおおきくしないんだっ! ずるいぞっ!」
ぺちっ
「あう」
キレたピアーニャの掌が、アリエッタの額に炸裂。可愛い音がした。
するとその瞬間、アリエッタの体が縮んでいった。
しゅるるる
『え?』
「にゃっ!?」
「おわっ!?」
ピアーニャを抱えていたアリエッタのバランスが崩れ、たまらずその場に座り込む。
「……ふぅ」
「………………」
そして何かを見たミューゼが涎を流しながら座り込み、復活しかけたパフィも親指を立てて再び倒れた。
「おいどうした!」
「スカートの中もキュートに戻ったのよ」
「やっぱりアリエッタは色気がなくても完璧だわ」
「おまえらサイアクだよ! もどったんだぞ! そんなカンソウはいらんわ!」
ピアーニャは目の前の変質者2人に叫んでいるが、戻った理由はなんとなく察していた。そしてそれは傍から見ていたイディアゼッター達も同様である。
「叩けば直るようですね」
「そうね」
「なんか怖いです!」
身を引こうとするが、イディアゼッターからは逃げられない。瞬時にメレイズの頭付近に空間ごと移動したグレッデュセントの指が、メレイズの額をピンッとはじく。
「あうっ!」
メレイズは元の見た目に戻った。大きくなった時に少し伸びたのか、服は少しヨレヨレになっているが、不自然さの無い着こなしに戻っていた。
「もう! ゼッちゃんおじさんひどい!」
「そんな呼び方するからですよ。戻ってよかったです」
ちょっとむくれて見せた後、メレイズはアリエッタの元に駆け寄った。同時にネフテリアも集まり、帰り支度は万全となった。
ミューゼが壁を消し、外で待機していた王子達と合流。王子2人は小さな布の前で立ち、真剣な顔で悩んでいたが、壁が消えた事に気が付いて慌てて振り向いた。
「アアアアアリエッタ嬢! ごごごきげんううううわしゅう!!」
「何も見ていない! 私は何も見ていない!」
”落ち着け王子様”
ミデア王子は大慌てで、サンクエット王子はチラチラとニオを意識しながら、アリエッタに挨拶をした。その脳裏にはどうしても背後に落ちている三角形の布の事がチラついてしまう。それが分かっているコメントは完全に呆れている。
ここでアリエッタが、サンクエット王子の視線とその先にいる相手を見て、ニンマリと笑みを浮かべた。
そしてトテトテと小走りでニオの背後に回り、キノコのカードを使用した。
ずもももっ
ブチィッ
「……えっ?」
「はっ、えっ、ニオ嬢!?」
(ニオがんばれ。イケメンにアピールするチャンスだよ)
アリエッタと同じように14歳程度まで成長し、トップスが小さいのでおへそが丸見え、スカートも大きくなったお尻のせいでさらにミニに。しかしそんな恰好になったニオの容姿は、正に誰もが美少女と認めざるを得ない美しさになっていた。
これにはアリエッタも驚いた。間違いなく目の前の美少年2人を落とせると確信している。
そしてスカートの中からはらりと落ちる小さな布。ニオはしっかりと千切れる感触とその後の涼やかな感覚に気が付いていた。
「きゃああああ!!」
「おわっ! ニオ!? なんで!?」
隣で急に成長し、スカートを必死に押さえながら涙目になるニオに、ネフテリアが驚いた。
「もしかして、急に成長するのが今の流行りなの?」
「違います! 後ろのアリエッタさんのせいですよ!」
「え、あ、いつの間に!」
「だからセイチョウさせるなら、わちにしろぉ!」
一向に成長させてもらえないピアーニャも涙目になっている。
しかし、犯人はそれどころではなくなっていた。
「……え?」(パンツ千切れ……あれ? なんかスースーしてない?)
ついにパンツを履いていない事に気が付いたのだ。テンションが上がっていたにしても鈍感過ぎである。
そしてなんと、その場でスカートをめくって確かめようとした。
「うおおおおい!!」
間一髪、パフィのナイフが横から伸びてきて、王子達の視線や光妖精の位置から見えないように、アリエッタの下半身をカバーした。
まぁ、カバーしたからといって、その行動によって想像力を掻き立てられてしまったミデア王子は、殴られたように鼻血を噴き出してのけぞった。後ろの兵士達はしっかり教育された大人なので、ニオのパンツが弾けた瞬間から気まずそうに顔を背けている。チラチラ視線を向けたり、ちょっと鼻から血が出ている者もいるが。
「ぐっ、まだだっ。アリエッタ嬢と親密になるまでは、死ぬわけにはいかない」
”近い年代だとそうなるのかぁ……”
”大人の俺らでもやばいからな、あの可愛さでアレは”
”そんな事言ってる場合か! ニオたんが成長して履いてないんだぜ? 俺もう我慢できねぇ!”
”こんな所で脱ぐなっ! 外に出ようとするなああああ!!”
王子達は今も引き続きライブ中である。アリエッタとニオに受け入れられた時に、証人となってもらえる者が多い事が大事だと考えたのだ。結果、ただ辱めているだけだが。
アリエッタに気を取られたが、そういえばニオが美しくなっていた事を思い出したミデア王子は、慌ててサンクエット王子の方を見た。
「うおわああああ! 死んでるうううう!!」
サンクエット王子は安らかな顔で血の池に沈んでいた。もちろん自らが出した血である。顔を背けていた兵士が慌てて駆け寄り、なおも血を垂れ流す顔を上に向け、止血しようと試みた。
”うん、若いし見慣れないモノ見たらそうなるよな”
”私もヤバいからね……おっと眩暈が”
”あーもう、掃除する場所減らないから、どこか隅っこ行っててください!”
なんだか恥ずかしくなったアリエッタは、ミューゼが出した大きな葉に包まれて抱っこされた。ついでにこれ以上変な事させないようにと、イディアゼッターがミューゼに釘を刺した。
ニオはグレッデュセントが急いで元に戻し、こちらも葉で巻いてネフテリアが抱っこした。とても恥ずかしそうにしがみついてる。
「娘が2人に増えた気分ね」
”その種、何?”
こんな所にいても仕方ないと、まずはジルファートレスに強引に戻る事になった。そもそも『敵』がいるから周囲を破壊するのであって、さっさと帰ってしまった方がアリエッタは何もしないと考えての判断である。
しかし、ピアーニャが駄々をこねて残ると言い始めた。
「セイチョウしないとかえれん! わちをセイチョウさせろー!」
そんな言い分は誰にも認められず、パフィに抱っこされてジルファートレスに戻り、シーカー達からクスクス笑われたのだった。
なお、血まみれになったジルファートレス内は、あらかじめアリエッタ達が行きそうな場所だけを集中的に清掃されていた。集まった戦闘狂達が、子供達に地獄の光景を見せないよう頑張ったのだ。多くの戦士達が大型ヴェレストを葬る大技を活用して鼻血を丁寧に処理したなど、アリエッタ達は想像だにしないだろう。
一方、血を流し過ぎてヘロヘロな状態で戻された王子達はというと……
「え? もう帰った?」
「ニオ嬢に声もかけてないのだが!?」
想い人の痴態を見ただけで、何の成果も得られていなかった。このままではいけないと、早く強くなって迎えに行こうと誓い合う2人であった。
そんな姿を見ていた兵士達は、王子達の想いが成就されるという未来は絶対に来ないように思えてしまい、どうしようかと悩む日々を送るはめになる。
「そういえば、落としたパンツはどうしたのよ?」
「あ……」
後に、ジルファートレス内の施設の1つに、とある小さな布が2つ展示されるようになる。元の形状が分かりにくいように飾られているその布は『天使達の衣』と名付けられ、多くの者達に拝まれるのだった。
拝んだら調子が良くなって、いつもより先に進んだり、魔法などの威力が少し上がっている気がしたなどの報告がジルファートレスに寄せられるのだが、真偽のほどは不明である。