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本編どうぞ
~♪
…うるさい。
もうちょっと小さくなんねーかな,アラーム音…
昨日と同じく手探りでスマホのアラームを止め,布団の中でぐだぐだする。
(起きなきゃ…)
のそのそと布団から出て床に足をつくと,想像よりもひんやりとしていて,思わず足を上げる。昨日とは違って僅かに朝の冷気が立ち込める部屋は,俺をまだ夢の中に居るような気分にさせた。
何とか眠気を振り切って着替えようとクローゼットを開けたら,それはベッド横の窓だったことに気付いて,俺の目は完全に覚めた。
「おはよう,兄さん」
リビングのドアを開けるとふわりと優しい香りが鼻を突く。
「おはよう…今日はサンドイッチ?」
「そうだよ,良く分かったね!ふわふわの玉子サンドだよ」
「当たり前じゃん,カナダの料理好きだもん」
「えへへ,兄さんはお世辞が上手だね~」
お世辞じゃ無いよ,と言おうとした所であいつがリビングのドアを開く。
「朝から何ですか貴方達は,新婚ですか?」
「…新婚じゃ無いだろ,熟年だよ!見ろ俺とカナダの仲を!」
「熟年は互いに早く死ねと思ってますよ」
…そう現実的な答えを返すなよ。
「相変わらず口が減らないな…」
先程までの幸せな気分とは一転,ぶつぶつと愚痴を漏らしていると,イギリスは勝ち誇った様な顔でサンドイッチに手を伸ばしていた。
このままでは俺の分まで食べられてしまいそうなので,慌てて俺もテーブルに着いた。
ガチャッ
「いってきまーす」
ドアを開くと同時に熱い風が吹き抜ける。
目覚めたときに感じたあの僅かな冷気はもう何処かに行ってしまったようだ。
少し残念に思いながらも,それを超す胸の高鳴りが俺を動かした。
「おはよう,ロシア」
「…アメリカ…」
げっそりとした声を上げるロシア。理由は言わずとも分かる。隣にベラルーシが居るからだ。
昨日の事があってか,ロシアの腕に手を回し,離れようとしない。
「アメリカさん,今日は私達2人で登校するから。悪いけど先約よ」
「…悪い,今日はベラと行かないと駄目だから…」
「…おう」
不憫が過ぎる。ブラコンもここまで行けばヤンデレに変わり無いだろう。
「じゃ,またな」
「ああ…」
またな,とは言ったけど多分帰りもベラルーシと一緒だろう。あいつは一度ああなると暫くロシアにベッタリだ。つくづく,下の子がああいうのじゃ無くて良かったと思う。
そういえば,昔ロシアが家に遊びに来たとき,カナダを見て凄い顔してたな。普通兄を束縛するもんなんじゃ無いのか,と。
俺もカナダも不思議な顔するもんで,あいつ暫くショックで口聞いてくれなかったな。カナダみたいな子が良かったなんて,何度言われた事か。
思い出し笑いをしていると,凛とした声が耳を突いた。
「アメリカさん?」
_____運が良い。不覚にも,そう思った。
「日本…」
「おはようございます…!」
昨日の今日だけど,初対面の様な感覚に陥ってしまった。多分,日本があんまりにも綺麗だからだろう。昼の日差しとは違う,朝の青白くて透明な日差しが日本を照らす。見たことの無い,日本。
「アメリカさん…?」
不安そうに俺の名前を日本が呼んだところで,ようやく現実に引き返された。
「悪い…おはよう!」
挨拶が返された事に安心したのか,日本はふにゃりと微笑んだ。
「…一緒に,行く?」
しまった,何で。
自分の失言に気付いた。それは色んな意味で。けど,時既に遅し。日本は今度はしっかりとした笑顔を浮かべ,
「…はい!」
…結果的には,良かったんだ。
今度からは,「一緒に行こう」と言おう。固く誓った俺は,またも日本の笑顔に見とれていたんだ。
キーンコーンカーンコーン…
「起立,礼」
「「「おはようございます」」」
「皆さん,夏休み明けできついと思いますけど,今日から授業も掃除もありますからね!新学期も頑張りましょう!」
おい,夏休みが終わったってだけで絶望してる俺達にそんな酷い言葉を掛けるな。
「それから,日本さんは分からないことが多いと思うから,困ってるときは助けてあげて下さいね」
…そうだ。日本が居るんだった。
それだけで,退屈な授業も掃除も,非日常に変わりそうな気がしてならなかった。
…ふと日本の方を向くと,何だかバツが悪そうに俯いている。どうしたんだよ。そんなに不安なのか?
昨日の,酷く曇った表情が思い返される。
大丈夫,不安になんてさせないから。そう,言いたかった。勿論口になんて出せないけど。だから,
「分からないことあれば言えよ」
と,声を掛けた。
「…ありがとう,ございます」
次の瞬間には,日本は嬉しそうに微笑んでいた。
_____今回は凄く短いのですが,切りが良かったのでここまでにしました。次回は明日にでも投稿すると思います。気付いたら1週間投稿してなくてびっくりです。絵を描いたりpixivの小節読み漁ってたら時間が溶けてました。pixivの小説は本当に皆さん文才があって表現が凄い…いつかあんな風に書けるようになりたいです。
後書きが長かったですね。
ここまで読んで下さりありがとうございました!
コメント
2件
ほんとに大好きです(語彙力喪失)