テラーノベル
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バスに揺られ30分。そこから乗り換えて更に15分。
蒸し暑い外からシャットダウンされた車内は数人しかおらず、窓からは既にビルが消え去り緑がちらほらと見える。のどかな景色と程よい揺れ、そして何よりも俺の肩でうとうとしている大好きな君がいることでさっきまでの不安が嘘のようだった。
がたんっ、と一際大きく揺れる。涼ちゃんがむくりと起き、着いた?と言いたげにこちらを見た。道が道だししょうがないか。
「あともうちょっとかな。着いたら起こすからまだ寝てなよ、診察長いかもだし」
君はゆっくり頷き、ありがとうと小さく呟いて座り直した為更に距離が近くなる。あーもう、何でこんな時までドキドキさせてくるかな。1番後ろの席は広いから、倒れないようにと言い訳を付け肩を抱き寄せた。自分より身長も年齢も高いのに、傍から見れば不格好だろう。それでも君はどこかに行ってしまいそうで、いても立ってもいられなかった。
目的地に着き、伸びる影を追いながら言も少なくゆっくり二人で歩いた。自然豊かな街にこつ然と佇む大きな病院は、近付かなくても異質な雰囲気を放っているのが分かる。あそこか尋ねる前に、大きな看板で『奇病科専門病院』と書いてあるのに気づく。
「…怖くないから」
隣で息を飲む音が聞こえ、思わず手を握りそう言った。
「どんなことがあっても、俺も若井も味方だから。見放したり裏切ったりなんて絶対無いから」
大丈夫。なんて安直な言葉を使いたくは無かった。歌詞としてはみんなに届くように入れるけど、対面で大切な人がいるなら尚更だ。何よりも信じて欲しかったから。穴が空くほどこちらを見つめた後、君はふっと微笑む。
「…ありがとう。僕、ほんとに…」
続けて何か言いたげだったが、相応しくないとおもったのか口を噤む。代わりに手を握り返し、
「行こう。」
とだけ言った。俺は大きく頷く。速さがバラバラだった影は、紐で繋がったように隣で並んで進むようになった。
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中は思ったより人が多く、特に変わった様子もしていなかった。つんとした消毒の匂いを感じながら受付に向かう。が、向かう途中で窓のそばにいた女の人にぎょっとしてしまった。
この人、体に花が刺さって、いや生えてる…?
顔が半分ほど見たことない毒々しい紫の花で隠れていて、腕にも同じように所々咲いていた。涼ちゃんの背中の羽がフラッシュバッグする。奇病はこういう症状が多いのかな。俺も噂とか昔話程度でしか聞いたことがないから詳しくは分からないけど。
失礼だし視線を引き剥がして受付の人に話しかける。流石にと思って離した手は、まだ温もりが残っていた。
「今日はどうされましたか?」
「友人が…奇病、にかかったような症状が出ていたので、診察をしてもらおうと」
これで合ってるかな。涼ちゃんを見ると彼も不安そうにぎこちなく頷いた。そりゃそうだよな。ひとまず問診票を受け取り、普通のものとは少し違う内容だね、なんて話しながら提出し呼び出されるのを待った。
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読んでくださりありがとうございます!
明日はついに10周年記念日ですね!特番やスカイツリーライトアップや円盤発売だったり新曲も出るし忙しいですが、皆さん息してますか?一緒に特別な一日楽しみましょう💪
次も是非読んで頂けると嬉しいです。
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