昔からずっと
男の子に恋してきた。
女の子を好きだと思ったことはない。
でも、
世の中は異性を好きになるのが当たり前で
同性が好きだなんて言ったら
変わってるって言って
きっと嫌うんだろう。
だから
好きでもないやつを好きって言ってみたりして
なんとか嫌われないように生きてきた。
嫌われて生きづらくなるより、
自分の気持ちを殺して生きる方が
きっと楽だから。
だから、同性を好きなんて
口が裂けても言えなかった。
青 『桃くん好きな人いないの?』
高校生たるもの、恋バナはつきもので、今日は親友の青にそれ系を振られてしまった。
桃 『好きな人…か…』
青なら、言ってもいいのかな。
青なら、わかってくれるかな。
そんな少しの期待で、
桃 『もし…同性が好きって言ったら…どう思う?』
なんて、わかりやすい言葉を返した。
青 『別に良いんじゃない、』
青 『僕は誰を好きでも良いと思うけど』
青は意外にも理解のある反応を示した。
桃 『ほんと…?』
どうしても疑ってしまってそう聞き直しても、青は同じような反応をした。
同性を好きでも良いのかもしれない。
同性愛は、変ではないのかもしれない。
やっと、そう思えた。
でも、違った。
次の日学校に行くと、「桃って男好きなんだろ?」とクラスメイトやら知らないやつにも散々言われるようになった。
俺は青にしか言ってないのに。
なんでみんな知ってるの。
親友だって思ってたのは
俺だけだったのかな。
橙 『桃ちゃん』
桃 『橙…』
廊下でたまたますれ違った橙に声をかけられた。
そして橙こそ、俺の想い人である。
桃 『今は…俺と話さないほうがいいよ、』
橙 『…なんか変な噂されとんなぁ、』
もう、俺の想いなんて伝わらないんだろうな。
桃 『やっぱり…変だよな、』
橙 『…俺は変だとは思わんで』
橙 『誰が誰を好きでも…別に良いと思う』
桃 『……、』
少しでも君に認める気持ちがあるなら
伝えるだけ伝える価値はあるのかな。
桃 『…あのさ』
桃 『放課後、屋上来てほしい』
橙 『なんで?』
桃 『…なんでも、笑』
橙 『なんやそれ笑』
橙 『まあええわ、りょうか〜い』
伝えるだけ、だしね。
桃 『ぁ、橙』
橙 『ちゃんと来たで〜』
橙 『えらない?笑』
桃 『ふふ、笑』
桃 『偉いね笑』
橙 『…で、なんで呼んだん?』
桃 『……、』
桃 『実はさ』
桃 『俺…橙のこと好きなんだ』
桃 『…ごめん、気持ち悪いこと言って…、』
橙 『んーん、』
橙 『気持ち悪いとかは全然ないよ』
橙 『でも…ごめん、』
橙 『俺は女の子が好きなんよ、』
橙 『やから…付き合うとかは出来へんのやけど…、』
橙 『この先も友達でいてほしい、』
桃 『…っ、』
そうだよな。
「俺もお前が好きだった」とか漫画みたいな展開があるわけないよな。
わかってたじゃん。
わかってたのに…
なぜこんなに苦しいのだろう。
桃 『そうだよね、』
桃 『ごめん、変なこと言って』
桃 『俺でよければ…友達でいてください』
橙 『もちろん…!』
橙 『…じゃあ、俺部活あるから、また』
桃 『うん…!頑張って、!』
手を振って走り出すその背中を、ただ一人見送る。
たった今、夕日に照らされる屋上で、ずっと好きだった相手に振られた。
この先、彼と友達という関係ですらいられないのではないか。
もう二度と、関わってくれないのではないか。
そんな不安や悲しみが俺を襲って離れない。
わかっていたのに。
全部、わかっていたのに。
生きづらくなることも、周りからの目が厳しくなることも、振られることも、全部全部、わかっていたのに。
少しだけ、
少しだけ期待しちゃったんだよ。
同性愛が認められる世界を。
変わってるだなんて言われない世界を。
少し、期待しちゃっただけ。
ああ、期待なんかしないで
こんなことなら
告白しなきゃよかったのに。
永遠に、
自分の気持ちを殺して生きていけば楽だったのに。
こんなことなら_____
俺は、あの時どうするのが正解だったのだろう。
もう二度と会えないとわかっていたなら
もっと一緒にいた。
もう最後だとわかっていたなら
ずっと隣で、君を支えた。
俺は
俺はただ
あのまま友達でいたかっただけなのに。
ずっと、親友でいたかっただけなのに。
こんなことなら
断らなきゃよかった。
『こんなことなら』
コメント
3件
好みすぎてやばいです…笑 フォロー失礼しますっ!!
最後の橙くん視点で涙腺が崩壊しました フォロー失礼します
毎日投稿3日目!