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僕が彼の前に差し出したのは、シマエナガのままるいフォルムが型取られた、かわいらしい白いペアマグカップだった。
「え〜! かわええやん!! マグカップ!!」
「かわいいよね!! これなら会社のデスクでも普通に使えるよ!」
「じゅうとお揃い……!! 俺だけの、じゅうとお揃い……!!」
しゅんは両手でマグカップを手に取ると、世界一の宝物でも見つめるみたいに、嬉しそうに顔を蕩けさせた。
「これにしよ! 決まり!」
「うん!! 絶対これや!!!」
さっきまでの不機嫌はどこへやら、無邪気に満面の笑みを浮かべる彼。
僕のために一喜一憂してくれるその姿があまりにも愛おしくて。
僕は気がつくと、自分から手を伸ばして彼のさらさらの頭を優しく撫でていた。
「ちょっ……! なに? じゅう、急に……照れるやん!!//」
耳まで真っ赤にしてしゅんが狼狽える。
いつもは僕に対して「天使やん」「かわええなぁ」って散々やってくるくせに、自分がやられるとこんなに恥ずかしいのかよ……。
そのギャップがなんだかおかしくて、愛おしくて、僕はフフッと笑い声を上げながら、今度はわしゃわしゃと、本物の犬を可愛がるみたいに彼の頭をさらに激しく撫で回した。
「ちょ! ちょい!俺、犬ちゃうねんから!」
口では抗議しているけれど、しゅんの大きな身体からは嬉しそうなハッピーオーラがこれでもかと溢れ出ていた。
お揃いのシマエナガマグカップを愛おしそうに胸に抱える彼を見つめながら、僕は思わず口にする。
「舜太、かわいい」
「い、いや! かわいないやろ!!」
さっきまで頭を撫でられて蕩けていたくせに、何やら急に焦って反抗してきた。
「俺は、じゅうの前ではかっこよくありたいんさ……」
「……はぁ?これ以上?」
思わず呆れたような声が出てしまう。
「…へ?」
「いや、だから、これ以上かっこよくなってどうするの?って」
「……はぇ? 、、」
しゅんは一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして完全にフリーズした。
「え、なに?」
「いや……じゅう、俺のことかっこいいって思ってくれてるん?」
「いや、え? 、、今更??」
「え、だって……えぇーーーー!!!!」
「ちょ! しゅんうるさい!! 売店の真ん中!!」
「ご、ごめん、だって、じゅうにそんなん言われると思ってへんかったから、めちゃくちゃ嬉しかったんよ!」
耳まで真っ赤にして、大型犬がブンブンと尻尾を振るような勢いで喜んでいる。
「……自分のかっこよさに気付いてないわけ?」
「い、いや、自分で言うのもアレやけど、わりとモテる方ではあるとは思うけど……」
「……うざぁ」
「いやでも、他の奴にモテんのと、じゅうにかっこいいって思われるんは、全然別やん!!」
「もうわかったから!レジ混んじゃうよ」
歩き出そうとする僕の浴衣の袖を、しゅんが必死な顔で引っぱる。
「じゅう、もう一回言って!!?」
「は?」
「やから、『しゅんちゃんかっこいい』って! お願い!!」
「え、いやだよ。恥ずかしい」
「お願い!!!!」
「……」
「お願い、じゅうちゃん……」
どうしても僕の口から聞きたいらしく、彼は顔の前で大きな両手を合わせて、完璧な上目遣いを作ってきた。
長いまつ毛の奥にある瞳を、ぱちぱちと健気に瞬きさせている。
「……しゅんちゃん」
「うんっ!!! なに???」
パッと花が咲いたように、彼の目がキラキラと輝く。
でも、そんな期待に満ちた顔を見つめていたら、僕の口から出たのは、やっぱり求めていたものとは違う言葉だった。
「……やっぱり、かわいい」
「うぉーい!!! ちゃうやろ!! そこはかっこええやろー!!!」
「いや、だって、そんな可愛い顔で真っ直ぐ見つめられたら……ねぇ?ふふっ」
「もーーーう!! ちゃうやん!! 俺はかっこいいって言われたいんよ!!」
「ふははっ! もう、いじけてないで、さっさと買って部屋行くよ〜!」
「うぅ、、じゅう、いじわるや……」
ぶつぶつと文句を言いながらもお揃いのマグカップを大切そうにレジへ運んでいく彼の後ろ姿を見つめる。
……かっこいいし、かわいいって、正直言って最強だよなぁ。
そりゃあ、周りの人間が放っておかないわけだ。
そう思った瞬間、胸の奥が、ほんの少しだけチクリと痛んだ。
でも僕はこの感情の正体はわからないまま…。
お会計を済ませて、お揃いの入った小さな袋をふたりで大切に持ちながら、僕たち部屋へと戻っていった。
to be continued…
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