テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
236
53
お土産を机に置いて、僕たちはどちらからともなく、心地よい畳の上に並んでゴロンと横になった。
天井をぼんやりと見上げながら、静かな時間が流れる。
「あ、そういえばさ、しゅん。明日って何時の飛行機だっけ?」
「えっとなぁ、15時発やな!」
「そっか。じゃあ、向こうの空港に着くのは17時頃かぁ……」
あんなに楽しみにしていた北海道旅行も、明日で終わりなんだな、と思うと少しだけ寂しくなる。
僕はポケットからスマホを取り出し、東京で待っているはやちゃんに「明日17着の飛行機で帰るよ」と、短い連絡を入れた。
「ん? じゅう、なんかあった?」
「いや、ちょっと、はやちゃんに連絡しただけ!」
「……そっか」
しゅんの声のトーンが、ほんの少しだけ、分かりやすく落ちる。
スマホの画面を覗き込んできた彼の時刻表示は、20時30分を指していた。
「もうそんな時間なんだねー。あっという間だなぁ」
「あぁ、ほんまやなぁ……」
「よし、露天風呂行こっ!! 満天の星空見に!!」
「そうやな! 星見て、そのあとは絶対夜泣きそばやな!!!」
ふたりで盛り上がったものの、僕は畳の上で大きく伸びをして、そのままシーツに身体を沈めた。
「あ……でも、やっぱりちょっと待って〜。お腹がまだ苦しいから、30分だけここで休ませて……っ」
「ふふっ、なんやそれ」
「だって、一回寝っ転がったら、身体が重くて起き上がれなくなっちゃったんだもん〜」
「もう、ほんまかわええなぁ〜」
しゅんは愛おしそうに笑うと、横になったまま、僕の方に寝返りを打って身体を向けてくれた。
僕もつられて、彼の方へと身体を向ける。
至近距離で向かい合う。
本当に、綺麗な顔。
やっぱりかっこいいな。
「……しゅん?」
「んー?」
「しゅん、かっこいいね」
大好きな彼の目にかかるさらさらの髪の毛を、ゆっくりと、右手で優しく梳かしながら想いを伝える。
「……っ…。」
「これ以上かっこよくなったら、俺、ちょっと困るかも」
「……え?」
「だって、みーんなしゅんの事好きになっちゃうじゃん。ただでさえ昔からモテモテなのに……」
「……、」
しゅんは一瞬だけ、息を呑んで僕を見つめた。
それから、少しだけ切ない目をして呟く。
「……じゅうからモテないと、そんなん、なんの意味もないやん」
「…え、?」
「じゅうだって、そうやろ? 自分の意志を無視して、勝手に向き向けられる好意なんて……な?」
「……確かに。ごめん、そうだよね、」
お互いに、その「望まない好意」のせいで深く傷ついてきた過去があるから。
しゅんの言葉の重みが真っ直ぐ胸に刺さって、僕は手を引っ込めようとした。
けれど、しゅんはそれを許さないように、僕の指先に自分の手をそっと重ねる。
「そんな、謝ることはないんよ? ……でも、あれやろ? もしかしてじゅう、ちょっとだけ俺に嫉妬してくれたんちゃうん??」
「え……? あ、そっか。これが、嫉妬なのか……」
「うぇ???? まじで!?」
「うん。なんか、他の人に取られちゃうかもって焦るっていうか、胸の奥がなんかもやもやする感じ……」
「……あー、もう! じゅう、そんな無防備に俺を惑わさんでよー……」
しゅんは本気で困ったように顔をごちゃごちゃにさせた。
「恋人でもないのに、いっちょ前に嫉妬なんかするなって話だよな」
「いや、なんでそうなるん!? めちゃくちゃ嬉しいわ!」
「あはは、ちょろいな〜」
「ちょ! 今ちょろいって言った!? ちょろいって何やねん!!」
「ふははっ!」
「ひっどーーーー!」
「ちょろいは冗談だけど!でも、かっこいいって思ったのは本当。ちょっと嫉妬したのも、本当だよ」
「う、うん……」
直球で畳みかけると、今度はしゅんが真っ赤になって視線を泳がせた。
その様子がおかしくて、僕はゴロンと起き上がる。
to be continued…..
コメント
1件