蜘蛛に魅入られる
甘い香りが燻る。
「煙い。」
「じゃあ近寄ってくんな。」
霞む視界の向こうに彼がいる。その幸せを噛み締める。
焦がれて焦がれて、やっと手に入れた幸せだから。壊さないように、終わらないように、俺が守ってあげるんだ。
白い肌が脈を打つ。伝う夢の下には紅い花。
指先が交わって、混ざり合って。
ねぇ、その宝石みたいな瞳の奥で何を考えているの。その柔らかい舌で何を感じているの。その細い指で何を求めているの。
それらは全て、咀嚼し、飲み込む。
白濁とした夜に幸せを吐く君が好き。
失意の中に滲む君の激情が、俺の心を揺らしてやまないから。
今日も、美しく、優しく、明日を締め上げる。
渾々と輝く星が薫りに沈む。漏れ出る吐息と、溢れる夜露がもっともっと君を汚せばいいのに。
愛してる。
一欠片でもいい。君に、この想いが届きますように。
ジャラリ
と、鎖の擦れる音がした。
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