テラーノベル
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「翠子のやつ、帰ったんだな」潤が応接室に現れた。
「うん。なんか、いつもと様子が違ったよ」
「だろうな。争う声が聞こえてた」
「聞いていたならちょうどいいや。どう思った?」
「睦月と同じだよ。あと、例の奥さんの店のチンピラ、翠子が絡んでる」
「えっ……は!? なんでっ、翠子が……」
「なんでってそりゃ愚問だろ」
「もしかして僕のせい?」
「もしかしなくても睦月しか原因がないだろ」
「なんでっ…先生はいっさい関係ないのに…なんでそんな…」
視界が揺れた。僕の家のことで先生にとんでもない迷惑を……しかも半年も前からかけていたなんて……。
「どうしよう…先生にそんな…とてつもない迷惑をかけていたなんて……」
なにかヒントはないだろうか?
なぜ、翠子が先生の店を半年も前から狙ったりしたのか…今までのことを頭に駆け巡らせた。
まずは折り紙に刺客を送り込み、金銭的に厳しい状況にさせる。それからなんとか一発逆転しようとした彼ら親子に、投資話を持ち掛けて失敗させれば、土地を手放さざるを得なくなる…。もしかすると、これが本来の筋書きじゃないのか?
あのあたりを再開発しようとしている可能性はないだろうか。不動産関係の動きを調べよう。
「潤。例の小平の件…もしかして裏で手を引いていたのって、翠子、もしくは湯川の筋かもしれない。小平のやつ、誰かに折り紙の土地を売るつもりだったのは覚えてる?」
「ああ。取り戻すのにかなり苦労したからな」
潤も渋い顔で答えた。
「小平はおそらく、翠子に土地を売るというか、手先として動いていたんじゃないか? 僕が小平の懐に入る大金をチラつかせたから寝返ってくれて助かったけれど、翠子はさっき、都京銀行が未来スーパーに巨額の融資をするみたいなことを言っていたんだ。融資をするなら、そもそも買収話なんか必要ないだろう? あと、フジノのM&Aの件は僕たちが立ち上げた企画なのに、どうして彼女がそのことを知っていたのかな」
「俺の予想を言っていいか?」
「もちろんだ。どんな可能性がある?」
「睦月の行動が漏れていたんじゃないか? 金を積めばいくらでも情報は手に入る時代だ。四井家ならやりかねないと思う」
「同感だ」
僕の行動範囲は狭いし、調べようと思ったらすぐできるものだ。潤の言っていることが正しいと思う。
「M&Aの企画だって、いくつかのスーパーに打診は入れたから、都京銀行の支店長(ゆかわ)の耳に入ってもおかしくない…か。筋書きが見えたな」
こうなると先生やお父さんに危害が及ばないだろうか。
「潤、先生の周辺、お父さんの警護も頼むよ。なんならセキュリティー会社作る?」
「日本一のセキュリティー会社になりそうだな」
「お金は惜しまない。先生や折り紙を守れるなら、どんなことでもやってやる!」
僕の知らないところで話が動き、僕の知らないところで先生に迷惑がかかって彼女やお父さんが傷つけられていたなんて!
自分で自分を許せなくなった。
「そのかっこいいところを奥さんに見てもらえたらいいのにな」
「そういうの、今はいい。僕は怒っているんだ」
「ああ、俺も同じだ。卑怯な奴らだな」
「未来スーパーはマルヨーを潰してこの辺のスーパーの王者になりたいんだろう。きっと、小平も翠子も、それぞれの思惑があって、ぜんぶに絡んでいるんだ。潤、この買収計画、なんとしても未来スーパーとフジノが手を組まないようにしなきゃ」
「どう動く?」
「とりあえずTENGAでなんとかしよう。マルヨーに投資するんだ」
「なぜ投資を?」彼の眉が跳ね上がった。
「マルヨーの取引銀行は、おそらく都京(ときょう)銀行だろう。都京銀行はこの辺の商店や会社を牛耳っているし、僕が相手の立場なら、難癖付けて借入金の返済を急がせる。資金繰りをショートさせる算段でね」
「なるほど。さすが睦月だ。頭のキレが違うな。やっぱお前はビジネスに関しての嗅覚がすぎる。一生ついてくぜ」
潤は僕のことをこうやって認めてくれている。彼も仕事は敏腕だから、僕も潤のことを認めているし、いいバディだと思う。
「しかしマルヨーに投資するっていってもなあ…どうするのがいいんだ?」
「僕に考えがある」
潤の目を見てはっきりと言った。
「株の購入はもちろん、マルヨーの商品を買い上げて、なにかイベントをしよう。そうだな…」
そろそろ暑くなる季節だから縁日もいいけれど、もっと面白いことはできないだろうか。
思考をフル回転させた。
「いい案思いついた!」
突然のひらめきに僕は拳を握り締めた。
「おお。さすが睦月だな。どれ、どんな案だ? 教えてくれ」
潤が興奮気味に身を乗り出す。
「今、シェアしたりレンタルスペースって流行っているだろう?」
「ああ、そうだな」
「だから、スーパーを間借りしよう」
「スーパーを間借り?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている潤に、僕は微笑みかけた。
「大手スーパーに、マルヨーの特産品を売り込むんだ。折り紙も参加させてもらう。僕と潤で営業しよう。ただ、その前に倉庫で特売イベントから始めるからね。さあ、明日から忙しくなりそうだ! っとその前に」
僕は潤にはっきりと言った。「水島(ライバル)対策も一緒に指南を願いたい!」
仕事も先生攻略も、どっちも成功させてやる!!
「ライバル対策なあ…そんなのない」
「ないって…それじゃ困るんだよ!」
「だったら睦月が頑張って、奥さんを放さないようにすればいいだけだろ」
「っ…頑張りたいけど…うまくできるかわかんないし……」
「俺が指南したところで、お前がうまく実践できるとは思えない。相談に乗るつもりだったけれど、いろいろ話聞いていて気が変わった。自分でやれ。俺に頼るな。嫁さん盗られたくなけりゃ、必死になればいい」
「…」
「失敗してもいいから自分で頑張ってみろよ。それが男ってもんだろ?」
「そうだね。うん、頑張ってみるよ」
確かに甘えて相談ばかりしていた。怖いからと言って踏み出すことを躊躇っている。現状打破するには、やっぱり自分で頑張るしかないよね!
「じゃあ、せっかくだから潤が送ってくれたURL参考にしてみるよ」
「え”。今見るの?」
「そうだよ。善は急げって言うだろ」
僕はスマホを取り出し、潤から送られてきていたURLをクリックした。すると画面がイラストに切り替わり、若い大学生くらいのイケメンと、目隠しをされた女性が裸体で絡み合っているものだった。すぐに音声まで流れ出す。
『あっ、あ、だめっ……きちゃっ……きゃああんっ!』
『先生、もう逃げられないよ。もっともっと気持ちよくしてあげるからね……』
いやらしい水音が挿入される。
『やあぁっ。もう……おっき……んんっ、だめ、トんじゃうぅっ……!』
突然のエロボイスに僕は固まった。慌てて潤を見るとニヤニヤしている。
「それ、睦月っぽいなって思ってさ。サンプルボイス見っけたから、送っておいたんだ」
見ると、タイトルが ”筆おろし~憧れの先生を陥落させる年下の野獣~” となっていた。
「気に入ったら買ってみたらいいんじゃね? 初夜前の勉強になると思うし」
「潤――――っっ!!」
応接室に僕の声が響き渡った。
こんな……ドンピシャなエロボイス見つけてくるなんてっ……!
後で買って聞いてみようと思ったのは、内緒の話。
コメント
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みぅです🤍🥀 第8話の04、読了したよ〜。 今回も睦月くんのビジネス脳が冴え渡ってて、思わず「おおっ」って声出た! マルヨーへの投資案もスーパーの間借りも、頭の回転速すぎて尊敬する。でも同時に、自分のせいで先生に迷惑かけてるって思い詰める姿が切なかった…。潤とのバディ感は本当に最高だね。 そんな真剣な流れからの、最後のまさかのエロボイス展開(笑)! 潤のニヤニヤ顔が目に浮かぶよ。睦月くんが買って聞こうとしてるのが内緒って、もう可愛すぎるでしょ🥀 次はどんな攻略を見せてくれるのか、楽しみにしてるね!