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<瞳>
暖かくて懐かしいにおいがする。
シャツの上からでもガッチリとした胸筋がわかる腕の中にいると気持ちがいい。
昨夜は本当に怖いと思った。
過度なボディタッチやセクハラ発言はあったがあんな行動に出るとは思わなかった。
もしかすると私以外にも被害者がいるのかもしれない。
そろそろ起きようと思って顔を上げると目が合った。
「おはよう」
別に肌を合わせたわけじゃないけど、なんとなく気恥ずかしい。
「おはよう。昨日はありがとう」
「カフェでモーニングでも食べようか。その後に病院へ行って検査を受けよう。後頭部を打っているそうだから、CTも撮らないと」
「過保護」
「ああ、瞳には過保護なんだ」
「なにそれ」
里中君から検査をして診断書をもらってきてほしいといわれているから、病院へ行ってから仕事に行こう。
昨夜の里中君の言動に違和感を感じる。
絶対にただの新人じゃない。
マンション近くのカフェでモーニングを食べた後病院へ行き検査を受けた。
背中に軽い打撲がみられるくらいで心の傷以外は傷はなかった。
一人で大丈夫だと言ったのに、凌太がずっと付き添ってくれていた。
仕事は大丈夫なのか?とかいろいろ思うところはあるけど、本当は心強かった。
出勤すると伝えると会社まで送ってくれるというので、甘えることにしたのだけど
「好きなものを選んで」
多分、自分がいつも行くような場所ではなく少し高級なものを扱っているショップで私の前には店員が選んだ私にあうであろう洋服が並んでいる。
たしかに、昨日のままの服なので着替えることができるのはありがたいが、ちょっと高級すぎる。
戸惑っていると凌太が勝手にこれとこれとこれと言いながら選んでいく中に何故かすごくカジュアルで部屋着になりそうなものが含まれていた。
慌てて、パンツスーツと白いシャツを持ち「これだけで」と言ったが、凌太に先手を打たれてしまった。
これはボーナス分を当てるしかないか・・
と腹を括ると
「着替えてくるといいよ。会社に行くのにそのままじゃ嫌だろ」
「うん」と答えて先ほど手に持ったパンツスーツとシャツを持って着替えて出てくると会計が終わっていて、ここで話をしても仕方がないので、車に乗り込んだ。
「とりあえず俺のマンションに置いておくから、部屋着は泊まった時に着るといいよ」
「泊まること前提なの?」
「もう泊まらないのか?」
そう言うと、すこし寂しそうな表情をされて「そんなこともないかもしれないけど」とよくわからない返事をしてしまった。
そうこうするうちに社屋ビルの前に到着した。
「また連絡する。あと、顧問弁護士にこういう案件に強い弁護士を紹介してもらうから。俺に任せて欲しい。じゃあ」
「ありがとう」
走り去る車を見つめる。
凌太がいてくれてよかった。