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宇宙ステーションで二日間のんびりと過ごした。いや、個人的には直ぐにでも地球へ行きたかったんだけど、諸々の準備に時間が掛かったから仕方ない。フィーレも頑張ってくれたし、フェルや私達も出来るだけ手伝ったからね。
ただ、新しい船にある不要な区画の一部を使って植物園を作り上げたのはビックリしたけどさ。
「ばっちゃんの船なのに勝手に改造して良いのかなぁ」
「別に良いよ?☆無機質な旅に潤いを与えてくれるんじゃないかな?☆」
「まあ、分からないでもないけどさ」
私達アード人も自然に囲まれて過ごしていると癒されるけど、リーフ人はもっと自然を好む傾向にある。だから宇宙船の内部に植物園を作るなんて発想が生まれる。
フェルとフィーレが安らげる場所になるなら別に構わないし、何より持ち主のばっちゃんが許可したんだから文句を言うつもりはない。今度出来映えを見に行こう。
文句を言うなら、痛軍艦仕様と艦名が銀河一美少女ティリスちゃん号のままな点だよ。もう諦めたけど、名前が長い。いつか略した名前を考えるつもり。
とは言え、デストロイヤー級はプラネット号の三倍以上の大きさだ。それにプラネット号も引き続きアリアが制御してくれるらしいから、艦隊を組むことが出来るようになった。乗組員は私達だけで、ほとんどの管理はアリアがしてくれることになった。まさにSFの醍醐味だ。
ただ、いきなり重巡洋艦を連れていくとビックリするだろうから、ジョンさんには予めメッセージを送ることにした。
「ちょっと大きな船に乗り換えました。これでまた隕石が来ても大丈夫ですよ。ただ、拠点が必要になるから月の一部をお借りしますね」
っと、こんな感じで良いかな?ハイパーレーンを航行中に、ばっちゃんから今後の活動拠点として月面に基地を建設しようって話が出た。
月面には地球の小さな基地もあるみたいだし、連絡を取り合うのも良い。地球上に作ると利権とか国境とか大変になるし。
この国境って概念は、なんとばっちゃんすら理解するのが難しかったんだから驚きだ。むしろアードより小さな惑星に様々な政体がバラバラにひしめき合ってる地球の状態を見て唖然としてたからなぁ。
ばっちゃん達としては合衆国が首都で日本は地方都市やリゾート地。美月さんはアードで言う里長くらいの感覚だったみたい。カルチャーショックを受けたよ、お互いにね。
「なんで地球人はそんなに非効率的な政治体制を維持してるの? どう考えても意見が纏まるとは思えないし、迅速な判断とか一致団結とか無理だよね?資源の奪い合いになるだろうし」
「地球はまだ群雄割拠の時代なんだよ、ばっちゃん」
「へー、それなのにそれなりの技術力があって人口も百億近いんだ?ティナ姉ぇ、地球って滅茶苦茶豊かな星じゃん」
「まあ、大陸は広いし海洋資源も豊富。星系外から飛来する小惑星は大半が木星の重力に引っ張られるから、地球は天体事故も少ないしね」
木星が無かったら地球は今ほど発展はしていないんじゃないかな?それに、数えるのも嫌なくらい戦争を繰り返しているけど順調に人口は増えている。貧困や格差の問題は私が生きていた頃より深刻になっているような気がするけど。
まあ、それは良いや。準備も整ったし、地球へ向けて出発しよう!
取り敢えず艦長席にはばっちゃんを……って。
「ばっちゃん、なにしてんの?」
「宇宙遊泳?☆」
ブリッジに上がったらばっちゃんが逆さまにフワフワ浮いてた。いや、確かに俗世から浮いてるような人だけどさ。
「ばっちゃんが艦長席に座れば良いじゃん」
「えー?この航海のリーダーはティナちゃんなんだよ?☆だから、ティナちゃんが艦長席に座るべきだと思うなー☆年長者じゃん?☆」
「千歳越えた妹(笑)」
「笑うな☆」
「私もティナが座るのが相応しいと思いますよ。この交流はティナが始めたことですから、ティナが私達のリーダーです」
「フェル……」
フェルは当たり前のように管制席に座ってるし。するとホロディスプレイに格納庫で整備中のフィーレが映し出された。
『私も賛成ー、ティナ姉ぇが仕切った方が絶対に面白いし』
「いや、面白さで決めないでよ」
『私も賛成です、ティナ。貴女はリーダーであり艦隊司令なのですから』
「アリア……」
何だか皆にリーダー扱いされてる。散々心配かけてばっかりなのに……うん、やろう!
「分かったよ。じゃあ、ばっちゃん。しばらく借りるからね」
「使い潰して良いからね☆」
「潰しはしないよ。艦隊発進!進路ゲート、目的地は太陽系!」
「はい、艦隊発進します。ゲートへアクセス、目的地は太陽系!」
『プラネット号の同期完了、これより艦隊行動を開始します。目的地到着まで地球時間で七日です』
宇宙ステーションのドッグを抜けると、星の海へ漕ぎ出す。直ぐに巨大なゲートが見えてきた。
「ゲートオープン。ティナ、行けますよ」
「よーし!交流を再開するよ!今回は月面基地くらいは作れるようにしないとね」
そのための資材や装置はプラネット号に積み込んであるし、フィーレも居るから問題ない筈だ。
ゲートをくぐり極彩色の空間へ突入。さあ、地球へ戻るよ!
ティナ達がアード星系を離れた頃、惑星アードにあるアード永久管理機構上層部は大騒ぎになっていた。ポイントケストルで発生したリーフ人過激派とティドルによる前代未聞の武力衝突は大きな波紋を生んでいた。
「事を荒立ててはリーフ人との関係性に致命的な亀裂を生む危険があります!政務局長、ここは唯一捕縛した者を処断することで沈静化を図るべきでは?」
「それは出来ない。よりによってフィーレの姉とは」
「フィーレと言うと、宇宙開発局に居る風変わりなリーフ人ですか!ザッカル局長!」
「残念ながら事実です。フィオレはフィーレを通してティナとも交流がありますし、ドルワの里を出入りしていました。つまり……」
「姉上にとって身内と言うことになる。それに、当事者であるティドル卿からも酌量の陳情が出されている。おいそれと断罪するわけにもいかん」
「むぅ……ならばどうされます?」
「非公式になるが、フリースト殿に抗議する。彼とて事の重大性は認識するだろうし、リーフ側の落ち度であると判断して目を光らせるだろう。再発防止に幾らかの効果はある」
会議室にて事態の沈静化と関係悪化を避けるための妥協案が協議されている最中、一人の女性が扉を蹴破らんばかりの勢いで駆け込んだ。当事者であるティアンナである。
「まさか、ナアナアで済ませるつもりじゃないでしょうね!?パトラウス局長!」
「ティアンナ女史!?だが、事を荒立ててはリーフ人との関係が……」
「こっちは娘を危険にさらされて夫が大怪我を負ったのよ!泣き寝入りしろと言うの!?」
「ならばどうされよと!?」
「フィオレは良いのよ、手は出していないし老害に言いくるめられたんでしょうからね。ただ、扇動した奴らは他に居る筈よ!そいつらの処断!それが条件よ!」
「落ち着かれよ!それは更に事を荒立てるだけだ!」
怒り心頭のティアンナを諌めようとパトラウス達が立ち上がるが。
「『黙れぇえええっっっ!!』」
言葉と更に直接脳内に言葉を叩きつけられ、誰もがよろめき、そして平伏した。
いつも羽織っている白衣を脱ぎ捨て、背にある二対の翼が神々しいまでの存在感を示した。
「|姉《・》|様《・》に会うわ。そこで決めて貰う。文句はないわね?パトラウス政務局長」
「……はっ……」
マンガンらの暴挙は、アードで二番目に怒らせてはいけない存在を激怒させてしまった