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───ある夏の日
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎シオンの洞窟の中にて───
「う〜ん……」
最近気づいたことなのだが
どうやら私はカラスバさんのことを本気で好きになったみたい
それが恋愛的な好きなのか友達としての好きなのかは分からない
けど少なくとも本来の目的を拒む程、彼の存在が自分の中で大きくなっていた
『──情は持つなよ、六番』
あの人に言われた言葉を思い出すが、そんなの自分が決める事だ
人と関われば人に対して情を持たないなんてことはできない。
「…にしても困ったなぁ〜…」
カラスバさんの事を手にかけるなんて考えれないし、かといってあの子達を見捨てるなんてことも出来ない
そうなると残された方法は1つ
「──そうするしかないか」
元々軽い命だ
生きていてもきっといい生き方はしない
それなら最後の1年、幸せに暮らして好きな人達の為に死のう
それに死ぬのだって怖くない
それなりに感情はあると思っていたが、死への恐怖という感情を感じれないのはやはり私も所詮あの人達に造られた人間という事なのだろうか
「それはなんかヤダなぁ…」
弱々しく言葉を発すると、ゆっくり立ち上がり洞窟を出てミアレシティへ向かった
「カラスバさ〜ん!!」
「お前も飽きへんな」
「カラスバさんの顔1日1回見ないと気が済まないって話ですよ〜
どこ行くんですか?よかったら私も連れてってくれません?なんでもしますよ!」
「アホ、オレはお前と違って忙しいんや」
「えー!!お願いお願いお願い!!」
そう言って車に乗ろうとするカラスバを追いかけるシオン
するとシオンの想いが通じたのか、ため息をしながら「はよ乗りや」とシオンを車の中へ招く
そんなカラスバに少し胸が高鳴りつつ「やっぱカラスバさんって優しいっ!!」と笑いながら車の中へ入っていった
「カラスバさんってどんな女性がタイプですか?かわいい系?清楚系?それとも私?」
「そうやな…とりあえず紫髪でうるさい女は勘弁やな。」
「…なるほど………私がタイプと…」
「お前耳つんぼか??」
そういってシオンの頭をべしっと軽めに叩く
「痛っ!そんな強く叩くことあります!?」
「そんな強叩いとらんやろ」
「叩いたー!!」
怒るシオンを見て、口角を上げ楽しそうに笑うカラスバ
そんなカラスバを見て、最初は怒っていたもののすぐに笑顔に戻りカラスバに釣られて笑う
「カラスバさんって、大切な人が自分の事殺そうとしてきたとしたらどうします?大人しく殺されますか?それとも相手を殺すんですか?」
唐突に重苦しい話に目を見開き「なんやそれ…」と呟くカラスバ
「例え話ですよ?因みに私は大人しく殺される派です〜」
「ふーん、なんでや?」
「だって好きな人の手で死ねるなんて最高の最期じゃありませんか?」
そういっていつものような笑顔で笑うシオンに何処か気味の悪さを感じる
いつも能天気で何も考えていないように見えるが、実際はよく考えている女だとは思っていた
しかし今目の前にいるシオンは、中身が空っぽのロボットのように見えて気味が悪い
「…まぁ、オレやったらそのまんまとっ捕まえて閉じ込めとくかもしれんな」
「殺しもしないんですか?」
カラスバの回答に目を見開き、不思議そうに首を傾げるシオン
「殺してしもうたら、どこからの差し金かわからんなるやろ」
「あ、そっか。じゃあ吐かすだけ吐かして殺すんですね」
「…さぁ、それはどうやろな。オレの気分次第や。」
「怖……」
「今更気づいたんか」
抜け目のないカラスバにひぇ…と小さく悲鳴を漏らすシオンを見てカラスバは口角を上げ楽しそうに笑った
───その日の夜
カチャ…カチャ………
「…これと、これ混ぜて………」
〖クル……〗
「んー?大丈夫よ、リザードン」
心配するリザードンの頭を撫でる
「これでいいかな…」
シオンの目の前には毒々しい色の液体
その液体を少し眺めたあと小さな更に取り、少し間を置いたあと一気に飲み込む
「…っ、ケホッ………」
喉がピリピリと痛む
しかしこれも全てこの装置に抵抗する為
できるだけ長く話せるようにしないと
できるだけ、できるだけ
『───そのまんまとっ捕まえて閉じ込めとくかもしれんな』
「カラスバさん、案外彼女にはゾッコンなタイプなのかなぁ……いいな、カラスバさんの彼女」
少し小声で呟いたあと、シオンはまた液体を小皿に注ぎ、飲み込んだ