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「……別れよう。」
その四文字だけが、スマホの画面に静かに映っていた。
送り主は、一ノ瀬 蒼。
三年間付き合った、大好きな人。
陽菜は何度も画面を見返した。
見間違いであってほしい。
冗談であってほしい。
そう願っても、メッセージは変わらない。
指が震えながら「どうして?」と打ち込む。
送信。
けれど返事は来ない。
既読もつかなかった。
「なんで……。」
涙が一粒、画面の上に落ちる。
昨日まで、何も変わらなかった。
一緒に映画を見て、帰り道には「また来週ね」と笑い合った。
その笑顔は嘘じゃなかったはずなのに。
何がいけなかったのだろう。
何度考えても答えは見つからない。
その夜、陽菜は一睡もできなかった。
⸻
翌朝。
大学へ向かう足取りは重かった。
春らしい暖かな風が吹いているのに、陽菜の心だけは冬のままだった。
「陽菜!」
後ろから聞き慣れた声がする。
振り返ると、親友の中島 莉子が駆け寄ってきた。
「おはよう……って、その顔。」
陽菜は慌てて笑顔を作る。
「寝不足?」
「う、うん。」
「嘘。」
莉子は陽菜の目をじっと見つめた。
「泣いたでしょ。」
その一言で、張り詰めていた心が崩れる。
「……蒼と別れた。」
莉子は驚いたように目を見開く。
「え? 一ノ瀬くんと?」
陽菜は小さく頷いた。
「昨日、急に……。」
「理由は?」
「分からない。」
「え?」
「『別れよう』って送られてきただけ。」
莉子はしばらく黙っていた。
そして、大きくため息をつく。
「蒼くん、そんなことする人じゃないよね。」
「うん……。」
そこが一番つらかった。
蒼は不器用だけど、人を傷つけるような人ではない。
だからこそ、理由が分からない。
「今日は授業終わったらカフェ行こう。」
莉子が優しく微笑む。
「一人にしないから。」
陽菜は涙をこらえながら「ありがとう」と答えた。
⸻
授業が終わった帰り道。
大学近くの公園を歩いていると、不意に声をかけられた。
「……陽菜?」
振り向くと、一人の青年が立っていた。
天羽朔 🪽🌙
ちけっと!!!サブ垢
11
なみ
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黒髪に優しい笑顔。
どこか懐かしい雰囲気がある。
「覚えてない?」
「えっと……。」
青年は少し照れたように笑う。
「小学校、一緒だった。」
その瞬間、陽菜は思い出した。
「もしかして……颯くん?」
「正解。」
朝倉 颯。
小学生の頃、毎日のように一緒に遊んでいた幼なじみだった。
「久しぶり!」
「本当に久しぶりだね。」
自然と笑顔がこぼれる。
「大学、この近くなの?」
「うん。陽菜は?」
「私も。」
偶然とは思えない再会だった。
「今度、ご飯でも行こうよ。」
「うん。」
連絡先を交換すると、颯は昔と変わらない優しい笑顔を見せた。
「じゃあ、また。」
その笑顔を見送ると、少しだけ胸が軽くなった気がした。
⸻
しかし、その様子を少し離れた場所から見つめる人物がいた。
一ノ瀬 蒼だった。
陽菜が颯と笑い合う姿を見て、胸が締めつけられる。
「……笑ってる。」
思わず漏れた声は、寂しさに満ちていた。
「それでいい。」
そう言い聞かせるように呟く。
けれど、その拳は強く握りしめられていた。
ポケットの中には、病院でもらった薬のケース。
蒼はそれを見つめると、小さく目を閉じた。
「陽菜……ごめん。」
誰にも聞こえないその言葉だけが、春風に静かに消えていった。
コメント
1件
第2話、読ませていただきました…切ないお話ですね。突然の「別れよう」のメッセージ、陽菜さんの戸惑いや不安がすごく伝わってきました。特に“昨日まで何も変わらなかった”という回想が、余計に胸に刺さります。そんな中での幼なじみ・颯くんとの再会、タイミングが絶妙でした。そして最後の蒼さんのシーン…薬のケースと「ごめん」の言葉で、ただの理由のない別れじゃないんだなって感じられて、続きが気になりすぎます。二人の視点の行き違いが、この先どう動くのか楽しみです🌷