テラーノベル
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朝の会社、いつも通りの静かな時間が流れていた。オフィス内はすでに賑やかで、社員たちのひそひそ声が響いている。わしはデスクに座り、水を1口飲んでパソコンを開いた。今日は少しだけ気分が乗らない。
それでも、すぐに引き締めて仕事をしなきゃならないからやるべき事を始める。
その時、隣のデスクからすかーが気だるげな声で呼びかけてきた。
「おーい、佐藤?今日も元気かー?」
わしは、その声を無視して、あえて顔も上げずに、カタカタとキーボードを叩き続ける。今日はちょっとしたイタズラがしたくて仕方なかったから、少しだけ塩対応することに決めた。
「……元気だが?」
そう言って、顔を上げることなく、ちらっとだけすかーの顔を見る。
彼は少し驚いた様に目を大きく開き、首を傾げるが、それでも「まぁ、元気そうでよかったわ」と少し不安げに笑った。
そのまま仕事を続けていると、今度は夢魔が声をかけてきた。
「佐藤、今度のプロジェクトのことだけど……」
わしはその声も無視、あえてあまり返事をしないようにしていた。
「うーん……まぁ、後で考える」
そう言うと、夢魔は少し困った顔をして、言葉を選びながら言った。
「おいおい、そんな曖昧な言葉で大丈夫か?」
その声には、少しだけ甘さが含まれていたが、やっぱりわしの反応を待っている様子。だが、わしは敢えてそれに応じることなく、パソコンの画面に目を向けた。
無視を決め込んだわしを前に、夢魔とすかーはしばらく困惑した表情を浮かべていたが、結局2人はどうすることも出来ずに、そのまま黙って席に戻る。
その数分後、突然オフィスの扉が開く音がした。そこに現れたのは今回新しく入ってきたルカだった、ルカは明らかに他とは一線を超えている。男っぽい見た目、口調と態度の悪さ……どう考えても女性らしさを感じない。
「佐藤じゃん!聞いたで?仕事できるやつって!ほんまなんやな!笑」
ルカはわしの方へ近づき、気軽に肩を叩く。その距離感に少し違和感を覚えつつも、何も言わないで頷いた。
「近づくな、うるさい」
わしはルカに対して冷たい一言を放つ。だが、ルカはそんなわしの態度に全く動じることなく、にっっこりと笑う。
「まだ距離足りてへん?まぁ、ええわ。あ、でも仕事の方は任せろよ?これでも頭は良いんだからな!」
その言葉に、わしは少しだけ眉をひそめる。どうしてこんなにも、ルカは距離感がバグっているのだろう……?
すかーと夢魔もルカが近づいたことに気づいたのだろう、2人とも一瞬のうちに警戒の視線を送る。ルカの無縁量な態度に2人は明らかに不快そうな表情を浮かべている。
「ルカお前な?佐藤とそんな近くで話すなや」
すかーが少しだけ声を荒げる。
「はぁ?なに?俺と佐藤の再会に邪魔すんなや」
ルカは少し不機嫌になりつつ、言葉の挑発的なニュアンスを含ませている。
「距離感考えろよ」
夢魔も、ルカに冷たく言うが、ルカは2人を無視してわしに向き直る。
「佐藤、今日はランチに行かん?俺、最近あんまり外食してないからさ、付き合ってくれよ」
わしはその提案に少し驚くが、あえて無表情を装いながら返事をする。
「…まぁ、行ってもいいけど…」
ルカは嬉しそうに笑い、他のふたりを無視して一足先に席を立つ。
「おいおい、佐藤いいん?」
すかーは少し心配そうに声をかけるが、わしは「うるさい」と小さく言って、そのままルカを追いかけてオフィスを出でる。
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