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2 - 距離感と呼び名と、昼休みの一騒動

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2025年07月12日

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オフィスの時計が11時40分を指したころ、業務の合間にルカが突然話しかけてきた。


「なぁなぉ、ネグちゃん?」

背後からふいに声が飛んできて、わしは目をぱちくりと輝かせた。”ネグちゃん”とは、ルカがわしにつけた謎のあだ名…まぁ、可愛いから少しは気に入っているが……


呼ばれた瞬間、斜め向かいの席に座る夢魔の表情がピクリと動いた。その隣のすかーは明らかに眉をひそめ、肩がピクついている。

「おいルカ、お前……」

すかーが、注意しようとした瞬間、


「ん?なぁに?ルカちゃん??笑 」

わしは薬と笑ってら少し煽るように首を傾げた。声のトーンもあえて高めに、猫なで声に近いニュアンスを含ませた。

ルカの目が一気に輝いた。

「やったー!名前呼ばれた!!」

満面の笑みでガッツポーズを決めるルカに、思わずわしも、「ふふっ」と小さく笑ってしまう。

その笑みを見た瞬間、すかーは机をコン、と小さく叩いて立ち上がりそうになり、夢魔は明らかに書類の角をぐにゃっも握りつぶしていた。

「…なんや、あれ」

「軽すぎんじゃねぇのか?あいつ…」

どちらも声は小さいが、嫉妬を押隠すには不十分だった。


昼休みになり、社員たちがぞろぞろランチに向かって動き出す中、わしも休憩に入る。ルカとか席を立つが近いこともあって自然と2人並んでご飯を食べていた。


会話はくだらないものだった。最近見たアニメの話とか、コンビニの新作スイーツのこと、わしが真面目な顔で「あのプリン、カラメル少ないよね」なんて言えば、ルカは大袈裟に笑って「めっちゃわかるー!!」と拳を握る。

……ほんと、うるさい。でも、どこか楽しくて、自然と笑ってしまうのだった。


食後、紙コップのカフェラテを飲みながら一息ついていると、突然ルカがふっとこちらを見て言った。


「なぁ、佐藤?今日さ、俺ん家来て遊ばない?」

その声は唐突だったけれど、なんだか子供みたいに純粋で、悪気のない提案だった。


わしが反応するまでに、ドスッと重たい空気が後ろから近づいてきた。


「……は?」

「なんでやねん」


振り返ると、すかーと夢魔が2人並んで、明らかに空気を張り詰めさせていた。夢魔は額に青筋を浮かべて、すかーは笑っているが、目は全然笑っていない。


「課長と部長には関係ないですよ」

わしはにこりともせず、さらりとそう言った。塩対応も本気を出すと空気の温度を一気に数度下げる。


「っ…!」

「なんやと…!!」


すかーは歯を食いしばり、夢魔は苦々しく目を細めた。


そのままわしは、ルカの手をすっと取った。るかの手は意外と骨ばっていて、ごつごつしていたけれど、握ると何となく落ち着く。


「じゃあ行こっか」

わしはルカにそう言って、何も気にしない顔で歩き出す。


「お、おぉ…!」

ルカは驚きつつも笑顔を隠しきれず、わしと手を繋いだまま、すかーと夢魔を残して食堂を後にした。


振り返らずに歩いたけれど、2人の殺気混じりの視線が背中に突き刺さるようだった。



食堂に取り残された2人…


「…どうする?、あれ」

「俺の可愛い妹が連れ去られた気分や」

「誘拐かよ…」


ため息をつく夢魔の目には焦りと、どこか切なさが滲んでいた。


「明日こそ、ちゃんと取り返す」

すかーがボソッと呟いた声に、夢魔は深く頷いた。


「俺たち、甘やかしすぎたのかもな」

「そやな。…ほんま、油断してたわ」


二人の間に沈黙が流れる。

その先で、佐藤とルカは笑いながら廊下を歩いていた。

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