花火大会当日、不器用ながらに頑張って結んだ髪はバッチリと決まった。そして待ち合わせ場所に向かう。
家からそんな遠くないので、すぐに着いた。そして早く着きすぎた。暇すぎる。
「……………花火が夜を照らした。また来年も君と居られるかな。」
小さな小さな、誰にも聴こえないように歌った。
“花火”という話が出た瞬間、この曲が最初に思い浮かんだ。「苺色夏花火」。私の大好きなstprの曲だ。るぅ💛くんも制作を携わっている。
歌っているうちに、学生の頃、登下校で一人の時、よく歌を歌っていたのを思い出す。あの時も小さな声で歌っていたつもりだが、きっと声の加減がわからず、普通の声で歌ってただろう。今思うと恥ずかしい。
そうこうしていると、曲も終わりを迎えていた。
「花火の音にかき消されるように。ただそっと、そっと声にした。」
「愛してる」
「!!??」
私は、セリフを歌わない派なので、このまま黙ってようと思っていたら、まさかの背後から歌に参戦してきた人がいた。
「るるるるるさッッッ!!いつからッッッ!!??」
「んーと、2番歌い終わってからくらいですかね?」
いつもよりなんかがカッコいい、とか、さっきの「愛してる」がめちゃくちゃイケボだった、とか、そういうことはそっちのけで、今はただただめっちゃくちゃ恥ずかしい。歌ってるとこ見られた。顔見たくなさすぎて私はしゃがんだ。
「………帰りたい。」
「早くないですか?」
るぅ💛さんが笑いながら言う。…その笑顔反則です。
「うぅー………。」
「ほら行きますよ。良い曲作りたいんでしょ。」
「……はい。」
るぅ💛さんが腕をを出す。そのまま、私の手を掴んで持ち上げてくれた。
そして、少しそっぽ向いて、
「……あと、今日の格好…すごく良いと思います。」
「ほ、ほんと?……ですか。」
「……はい。……………とても。」
頑張ってよかった。そう思ったら、いつの間にかさっきの自分の醜態について忘れてしまった。
あちこちから太鼓とか尺八とかの日本の楽器の音がする。それプラス人が沢山いて、家族とか友達とか恋人とかと各々楽しそうにやりとりをしている。すごく賑やかでたまにはこういうのも悪くないと思う。
すると、あるものを見つけた。
「るぅ💛さん!私あれやってみたいです!一回もやったことないので!」
「射的ですか。あーゆーのってあんま当たらないらしいですけど…。」
「チャレンジしてみたいんです!」
狙いはル●バ。あれがあったら絶対掃除が楽になる。そして小さい頃からの憧れだった。なんか楽しそうじゃん?
そして見事、全ての球が何にもカスんなかった。
隣でるぅ💛さんがめっちゃ笑ってる。
「……私、逆に才能かと思うんですよ。」
「なんですその才能。」
ここまで笑われると、つられてこっちまで笑いたくなってしまう。
「まあこれで射的は私に向いてないってわかったんだし、良しとします!もう二度とやりません!」
「そういえば、子どもの時もやった事なかったんですか?」
「親が『あーゆーのは全然落ちないからやんないほうが良い』ってずっと言ってたので。やりたくてもやらせてもらえませんでしたね。」
「なるほど。」とるぅ💛さんはなんか感心したように頷く。
「それに、そもそもこういったお祭りにはあまり来れなかったんです。」
「来れなかった…?」
「私、学生の頃、夏は習い事の発表会があって、毎日のようにその練習に行ってたんですよ。」
自分で選んだことだ。楽しんでやってたし、後悔は全くしていなかった。けど、
「夏休み、友達と祭りに行ったりプールに行ったりするの、夢だったんですよね。」
大学生になって、習い事をやめ、いざ遊ぼうと思ったら、周りの友達はみんな彼氏持ち。私は家でダラダラしてるか勉強だった。ダラダラの方が割合多かったけど。
それを聞いたるぅ💛さんは笑顔で言った。
「では、今日は沢山楽しみましょう!」
るぅ💛さんはやっぱり優しい。私も今日は楽しもう。