テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
24
渉はマンションで一人暮らしをしている。何度も来たことがある三階の部屋まで、エレベーターで昇る。
角部屋の前に立ち止まって、鍵を開けた。部屋に入ると少しだけ埃っぽくて、足を引きずりながら薄暗い部屋に入る。
廊下を抜けてすぐにひと部屋ある。玄関すぐ右にトイレ、廊下の途中に風呂。部屋から見えるベランダには洗濯ものが干していないので、硝子越しに外が見渡せた。
俺がベッドに倒れてゴロゴロしていると、渉が風呂に行って掃除をしている音が耳に入る。久しぶりに訪れた部屋は、彼の匂いしかいなくて今すぐマスをかきたい衝動にかられた。下半身を擦り合わせていれば、足元を濡らした渉が戻って来る。
「一緒に風呂入ろう」
「エロいことする?」
「うん」
「……すけべ」
「期待してるくせに、カマトトぶんなよ」
渉がその場で泥だらけ汗まみれのジャージを脱ぎだすので、俺も一緒に着ている服を脱ぐ。ベッドに座ったまま服を脱いで、彼の手を借りながら浴室へ向かった。
男二人だと狭い。浴室にはお湯が張られているが、捻挫は温めるといけない。浴槽の縁に腰掛け、タライでそのお湯をすくって体にかけた。あちこちにできた擦り傷がしみて痛い。
シャワーを手にした渉が、俺の頭にぬるま湯をかけてきた。目を閉じていれば、シャンプーの液体共々頭を洗われる。指は細くて隅々まで動かしてくれるので、気持ちいい。こいつ、美容師とかにむいてんじゃねぇか。
またシャワーをかけられて、泡を流される。次にリンスもやられた。
渉の家のリンスとシャンプーは男用だから、臭いがきつくなくていい。俺の家はねぇちゃんおふくろのものを使っているので、女の臭いになる。それがイヤで石鹸を使っていると言ったら、すごい剣幕で怒られた。
リンスも終わってまた洗い流されれば、石鹸で泡立てたタオルで体中をもこもこにされる。足の先まで丁寧に洗われると、なんだか金持ちになったようで悪い気はしない。
一度立ち上がってほしいと言われて、片足に重心をかけながら立つ。周囲や中を丹念に洗浄される。
そうして、もういいよと言われて腰をおろした。渉も適当に体を洗って、前髪をかきあげ頭も洗う。シャワーを受取って、今度は俺が渉にお湯をかけてやる。小綺麗になったところで、相手の唇にキスを落とした。相手もキスに答えながら、俺に手を貸して浴室を出る。
バスタオルで体を拭いてから、部屋に戻って素っ裸でベッドへ仰向けに寝転がった。そんな俺に渉が覆いかぶさってきて、今度こそ深いキスをされる。
足のことを思い出したのか横に寝転がって来た。俺も相手に顔を向けるため、体勢を横にする。そして、少しだけやつれて青白い渉の額にキスをした。
そのまま相手に抱きついて、腰を引き寄せる。珍しく俺が甘えてきたことに驚いて、俺の頭を抱きしめてきた。そして頭に顔を押しつけて、匂いを嗅いでくる。
「まだ、少しだけ汗臭いな」
「もっかい風呂入って寝ようぜ……眠い……」
「そうだね、後処理もあるし」
「……渉」
「ん?」
「好きだよ、お前のこと」
「何回いう気だよ」
「三週間溜めこんでたから、その分いってやらないとな。それに俺のために頑張ってくれた、ご褒美たくさんやるよ……」
渉から少しだけ体を離して、相手の首筋を舐める。ご褒美という言葉に、目を見張っていた。
相手の右手を握ってみればまた握り返してもらえる。そのことだけが嬉しく、つい声を出して笑ってしまった。渉も同様に微笑を浮かべる。
彼が風呂に入ろうかといって、俺の手を引く。その手に惹かれて、浴室に向かう。繋いだ手から伝わる熱が心地よくて、風呂に入って抱き合いながら寝るときになっても離すことができなかった。
「起きたら三週間分甘えるから。それと、ご褒美……」
「わかってるよ」
二人同時に目をつぶって俺は渉に、渉は俺にもたれかかりながら夢の世界に入る。寝る寸前に渉の手を握ると、おやすみとでもいうように握られた。
夢の中でも会いたい。いつまでも、この温もりの傍にいたい。
起きたら相手が隣にいる。それこそが幸福だと、夢の世界に身を投じた。
それから、起きて三週間分の愛やら性欲やらご褒美やらでセックス三昧したせいで、俺達が学校に登校したのは、体育祭が終わってから一週間後となった。
コメント
3件
ゆめかだよ〜!!🌸 第19話、読み終えたよ…! もうね、冒頭からずっとずっと「ああ…帰ってきたんだな」って感じがじんわり染みた…!久しぶりの部屋の匂い、埃っぽさ、洗濯物がないベランダ…そこにしか存在しない“彼の匂い”って表現がえもすぎた😭💕 風呂シーン、髪洗ってもらうところの「指が細くて隅々まで」って描写がもう優しさの塊でしょ…!怒られたエピソードも含めて、細かい積み重ねが愛おしさを倍増させてる。 そして「好きだよ」×溜め込んだ三週間分……「何回言う気だよ」のやりとりに完全にやられた…!繋いだ手を離さないまま寝るところ、夢の中でも会いたいって願うところ、もう全てが"幸せ"そのものだったよ…!!最後のオチも含めて、甘くてちょっと笑えて、最高のエピソードでした⋆♡