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続きです
スタジオでのセッションが終わった頃には、日は疾うに暮れていた。藤澤は次の現場へと足早に向かっていった。
「…元貴」
大森と若井、2人きりの空間で若井が口を開く。
「何?若井」
「……」
いつもなら若井はよく喋る人なのに、今は珍しく黙っている。
「…若井?」
大森が不思議そうに声を掛けると、若井は決心したかのようにゆっくり大森の方を向いて言った。
「元貴、真面目な話してもいい?」
引き攣った笑顔を浮かべる若井は、長年一緒に過ごしてきた大森にとって新鮮なものだった。
「…うん」
若井は真っ直ぐな目で言った。
「俺、実は…涼ちゃんのことが好きだった。」
一瞬、空気が止まる。
大森は驚いたものの、視線を逸らさずに聞いた。
「多分、だいぶ前から。」
若井は苦笑いをして続ける。
「自分でも気づかないふりしてたけど」
「とにかく優しくて笑顔が素敵でとっても可愛いけど、自己肯定感は低くて、いつも一人で抱え込んじゃうような涼ちゃんを……
俺が支えてあげれたら、ってずっと思ってた。」
大森は何も言えず、黙って聞いている。
「でもさ、俺分かってたんだよ。」
また、若井は引き攣った笑顔をする。
「涼ちゃんが1番欲しそうにしてるの、俺じゃないって」
「…元貴だって。」
若井の目には涙が浮かんでいる。
「…あの、、ごめん、若井の気持ち知らなくて…ほんとにごめん」
大森の涼ちゃんを好きという気持ちは嘘では無い。紛れもなく本物だ 。
でも自分のせいで若井を傷付けてしまったことにひどく後ろめたさを感じた。
「…だから」
若井が泣きながら笑顔を作って続ける。
「俺は諦める。2人のこと、ほんとに応援してる。」
「涼ちゃんすっごく幸せそうだったもん。俺なんか、割って入ることなんて許されないくらいに、、笑」
「それを壊したくないから」
「ただし」
若井が真面目な顔つきになる。
「もしさ、万が一、涼ちゃんを傷つけるようなことしたら」
若井は精一杯の笑顔を大森に向ける。
「その瞬間、俺が奪うからねっ」
大森は驚いたが、自然と表情が和らいだ。
「…それ、脅し?」
「忠告」
若井は即答する。
「涼ちゃんは守られるべき人だから。」
大森はゆっくり頷く。
「分かってる、傷つけないよ、絶対。」
「…ならいいや」
若井はいつも通りの若井にもどる。
「俺は、1番近い2人の味方兼、涼ちゃんの最終セーフティネットってことで」
「役職多いね」
「忙しい男なんで」
そう言って笑う若井を見て、大森は心の中で思った。
───この人も、本気で涼ちゃんを想っていたんだ。
「若井」
帰ろうとする若井を大森が呼び止める。
「なに?」
「…ありがとう」
若井は一瞬だけ照れた顔をして、
「どういたしまして」
と言い、軽く手を振って部屋を後にした。
最愛の親友と最愛の恋人。
愛の種類は違えど、2人は大森にとってかけがえのない大切な存在に他ならなかった。
end
前編と後編の間が開きすぎてしまった申し訳ない💦