テラーノベル
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食卓に並べられた朝食。ほかほかと湯気がたっている。
久しぶりに食べた治の手料理は、どこか懐かしくて、ずっと求めていた味だった。
豆腐とワカメのシンプルな味噌汁をずずっとすする。
体の芯が暖まる感じがした。
(この飯が毎日食えるなんて、治に選ばれたやつは幸せやな)
「…?」
珍しく何も話さない俺を不思議に思ったのだろう。治がチラチラ視線を送ってくる。
「どしたん侑。具合悪い?」
「いや、なんもない」
どうしたと聞かれて本当の事を言えるわけが無い。女の物を見つけて嫉妬して、そんなやつよりも俺を選んで欲しいなんて。
「ごちそうさま」
手を合わせて挨拶をする。もちろん完食した。
時計を見ると、まだ午前6時をすぎたくらいだった。
「今日予定ある?」
立ち上がった俺を引き止めるように、治が話しかけてきた。
「8時から部活。昼は適当に買って食うわ」
稲荷崎は春高常連校の強豪だ。休日も練習は必ずある。
「そおか」
「ちょっとしたらランニング行ってくる」
「きいつけてな」
「おん」
10分ほどリビングで胃を休めた後、運動用のジャージに着替えた。
外はまだ日が登りきっておらず、涼しくて走りやすかった。
でも、頭の中は治だらけで、どうしても集中出来なかった。
いつものランニングコースから外れたり、なんどかつまずきそうになったのはそのせいだ。
家に帰ってこれたのは7時過ぎくらいで、丁度いい時間だった。
服を着替えて、荷物を持つ。
治は厨房で食材の下準備をしていた。
「治」
何も言わずに出ていくのはいくら身内でも良くないと思った。せめてお礼だけでも言おう。
「飯とか..その、泊めてくれたりとか..色々ありがと」
言い慣れていないのと、恥ずかしさでカタコトになってしまった。
「ええよ、そんなお礼なんか。部活頑張ってな」
笑顔で手を振り見送ってくれる治。そのおかげで気持ちを切り替えて学校に向かうことができた。
─────
───
侑が学校へ向かったあと、まだ開店まで時間があったので、寝室の様子を見に行った。
昔はよく寝具が荒らされていたり、物色されたりしていたが、流石にもうそんなことはしないと思う。でも一応。
がちゃ。
部屋を見回す。
ベッドは掛け物が綺麗に3つ折りになっていた。
床に目を移すと、本が置かれていることに気がついた。侑が置いたのだろう。
本を手に取る。これは元カノの忘れものだ。今も持っているのは何となく。元カノと言っても、別に好きだった訳では無い。俺からしたらただのセフレだ。
侑は気づいてくれたのだろうか。
この本はわざとすぐ目がいく所に置いていた。見つけて欲しかったのは挟めているしおりだから、目立ちやすい色の本にした。このしおりはチューリップの押し花で作ったものだ。数年前貰ったあの赤いチューリップ。
でも、侑が朝食を食べに来た時はなんだか表情が曇っていた。
(そおか…)
きっと侑は勘違いしているんだ。女のものが家あって、きっと俺に彼女がいると。
侑がいつもに増して機嫌が悪かったことにも納得がいく。
でも、安心せえ。俺はずっと前から気持ちは変わっとらん。
なんせ、俺は一途やし、大事なもんはずっと手放さんから。
侑は知るはずもないが、俺はずっと前からお前のこと大事にしとるし、兄弟以上だと思っとる。
だから、早く気づいてや_
あとがき─
赤いチューリップの押し花の意味は「永遠の愛」、「真実の愛」などです。
前回の投稿から時間が結構空いてしまいました、ごめんなさい🙏
部活とか勉強とかがあってだせてませんでした😭
あとどうでもいい話なんですけど、8月1日は私の誕生日でした!今年で14歳です
私チョコが好きなので、チョコケーキ食べれて最高でした😋
ではまた次の投稿で👋
NEXT♡500
コメント
14件
お誕生日おめでとう!!!🫶💕🎉 中学生?くらいでこんな素晴らしい作品が書けるの羨ましすぎる!!!👏 Ranちゃんの作品は全て神作品だからいつも見てるけど、なかなかコメできなかったから久しぶりかも?🤔 これからもずっと応援してます🔥
花言葉とかそういうのもこだわってて凄いです👏私とは格が違いますね笑あと、意外と歳近くてびっくりした、、中学生であのクオリティは高すぎです…!これからも応援します📣✊
お誕生日おめでとうございます🫰🏻💞いつも作品をしてるんですが最高すぎていつも楽しみにしています😿💞これからも頑張ってください✊🏻❤️🔥´-