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最終章:息もできないほど、愛してやる
宇野の首には、黒いチョーカー。
普通のアクセサリーっぽいけど、実質“俺の証”だった。
それをつけて登校してくる宇野に、周りは何も言わなかった。
というより、もう“俺たち”に関わるやつはいなくなった。
無意識に距離を置かれてる――それでいい。
誰も宇野を見ない世界。
宇野も誰を見ない世界。
その中心に、俺だけいればいい。
⸻
「今日、帰り寄り道しないよな?」
「しねぇって…つか、GPSまで入れるのおかしいって」
「心配だからでしょ?」
「はいはい、束縛モンスター様」
宇野はため息をついたけど、笑ってた。
だけど俺は、心の奥に小さな不安をずっと抱えてた。
――こいつは、俺の手からいつか、こぼれ落ちるんじゃないか?
⸻
そして、事件は起きた。
宇野が、帰ってこなかった。
GPSの反応は、学校裏の森の方で止まっていた。
焦った俺はスマホを落としそうになりながら走った。
木々の奥、薄暗い中で見つけたのは――
「……お前、なにしてんだよ」
制服を汚して、倒れてた宇野。
手には血がにじんだナイフ。
「アイツ…しつこかったから、もう限界で……」
――例の女子。
まだ宇野にちょっかいかけてたんだ。
「俺が…俺が、誰のもんか、ちゃんと見せてやらなきゃって思って」
そう言って、泣き笑いする宇野に、俺はそっと手を伸ばした。
「やっと…お前も、俺と同じになったな」
「……うん、俺もう、他の誰にも触れられたくない」
⸻
その日から、宇野は俺の家に住んでる。
学校には「体調不良」でしばらく休み。
外にも出ない。誰にも会わせない。
俺の見てる景色だけを与えて、俺の言葉だけで動いてくれる。
「なぁ、悠真。俺、もうずっとここでいいからさ…お前だけのもんでいいから…」
「わかってるよ。お前は、俺だけの宇野だから」
俺たちは、誰にも触れられない世界で、
お互いを縛って、
お互いを溺れさせて、
お互いを――愛してる。
それが、幸せかどうかなんて、もう関係ない。