窪谷須くんへ。放課後、2F空き教室に来てください。待ってます。
丸文字で書かれた手紙が窪谷須の机に入っていた。果たして、この手紙の差出人は誰なのか? ラブレターか、果たし状か。
それとも……。
どちらにせよ、放課後の予定がひとつできてしまった。
休み時間にトイレに行ったとき、窪谷須は個室に引きこもって考えあぐねていた。
〝放課後に空き教室へ〟と書かれていたものの、そのまま素直に行くべきか。
罠の可能性も否定できない。
しかし……もしこれが本当にラブレターだったとしたら。
ラブレターをもらったことは何回かあるが、やはり嬉しかった。
でも俺には好きな人がいる。
同じクラスの🌸だ。ピンクの長い髪が良く似合う殴ったら一発KOしそうな細身の彼女。
「俺はには好きな人がいるのを伝えるのに行くべきか…」
……
そして窪谷須は悩んだ末に、行くことにしたのだった。
放課後になり、窪谷須は指定の場所へ向かった。
空き教室の扉を開けると、そこには……意外な人物がいた。
「🌸?」
「あ、窪谷須くん。来てくれたんだ」
なんと、呼び出した相手は🌸だった。
「なんでお前がここにいんだよ」
「いや……その……」
なぜか恥ずかしそうにする🌸。心なしか顔も赤いようだ。
窪谷須は不思議に思いながらも、理由を聞くことにした。
「なんだよ、なにか言いてぇ事があんだろ?言えよ」
「えっと……うん……やっぱり直接言おうと思って……」
「なんだ?」
🌸は深呼吸をしてから、窪谷須に伝えた。
「す、好きです!私と付き合ってください!」
「あぁ!?」
唐突な告白に、窪谷須は思わず目を見開いた。
窪谷須が、こんなにも驚いた顔をするなんて。そのギャップが可愛くて、🌸は思わず笑ってしまった。
「あはははっ!窪谷須くんったら驚きすぎだよ」
「いや……だってよ……」
「……返事は?聞かせてくれる?」「お、おう……。俺でいいのか?」
「うん、窪谷須くんがいいの。」
「そうか……ありがとな……。じゃあ、これからよろしく頼むぜ」
「本当に?嬉しい……!」
窪谷須は少し恥ずかしそうに口を開いた。
「ならよォ、将来住む家の内見行こうぜ」
「ん?な、内見?」
「おう、内見」
「…………あぁ!内見!家を見るやつね!」
「そうだな」
少し間を空けて口を開く🌸。
「当たり前に内見行こうとしてたの!?」
「あ?うん」
「いや……うん……って、え?」
「なんだよ」
「家を見るのに内見に行くのはわかるけど、なんで一緒に住むこと前提なの!?」
「だってよ、将来結婚するんだから一緒の家に住むだろ」
「け、結婚!?そんないきなり!?」
「い、いや…嫌って訳じゃないけどさ、早くない……?」
あまりに急な展開に、🌸の頭は混乱しっぱなしだ。
すると、そんな🌸を見て窪谷須は何かに気づいたかのようにハッとして謝った。
そしてなぜか土下座をした。
あまりの急展開と窪谷須の土下座に驚きを隠せない🌸をよそに、彼は続けた。
その口からは謝罪の言葉が漏れていた。
「すまん……俺、そういう気が早くて……。お前が嫌ならいいんだ。忘れてくれ……。」
「いや、その……嫌な訳じゃなくて……」
🌸は考えるよりも先に言葉が出た。
「むしろ嬉しいんだけど。でもまだ心の準備ができてなくて……」
「そうか」
窪谷須は安心したかのように笑った。
「じゃあよ、今日は一緒に帰ろうぜ。」
「……うん!」
2人は手を繋いで教室を出たのだった。