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この日の夕暮れ、いつも通りレイブ一人が居残って、翌日の荷出しの手配に心を砕いている時、本日の準教補助として選抜試験官を努めて来たランディが、真下を向いたままで背後から声を掛けたのである。
「し、師匠…… あの、そのぉ……」
「あーこりゃパレットがイカレちまってんなぁー、作り直すとするかぁー! ん? おおランディか、おかえり、どうだった? 問題なかったんだろう? おっと、こっちのパレもそろそろ駄目かな? 参ったなぁー、ロップもそろそろ新調せにゃならんって言うのに、難儀だなぁー」
「ええっと、あのぉー」
「ん? どうしたランディ、パレットやロープの事だったらサンドラかシンディに頼むから心配要らんぞ? と言うかお前は不器用だからな、頼めんよ、わははは! 今日はもう帰って休め! 明日から又、荷役を頼むからな!」
「……れて来い ……と」
「は? 何だって? 聞こえんよ、もう少し大きい声で言えよランディ」
「レイブを連れて来い、だそうです…… 明日もう一度模擬戦のやり直しだと、そうズィナミ様、学院長様が伝えろ、と……」
「えっ…… 明日…… そ、そうか、わ、判った……」
やり取りが一段楽した所でレイブは無表情のまま固まってしまい、なにやら虚空を見つめて思い悩んでいるように見える。
「あ、じゃあお先に失礼しますね」
「お、おう…… あっランディ! これ、明日の工程表っ、ジョディに渡しておいてくれ! それと明日仕切りを変わってくれって、言って置いてくれないか?」
「あ、はい判りました、んじゃ失礼します」
「ああ、おやすみ…… あっランディー! ズィナミは、いや学院長はぁ、そ、その、どうだった? 角、生えてたか?」
「え、角ぉは無かったですね、つるりとしてましたよ」
「そ、そうか……」
「…………じゃ、失礼します」
「おいおいっ! 肌は? 肌はどうだった? 何色だったんだ?」
「肌? 学院長のですか?」
「お、おう、当たり前だろ! 他にいないだろうが!」
「うーん、赤かったですかねぇ? うん、いつもより数段赤かったですけど、それが何か?」
「赤かったか…… そうか…… 赤ね、赤…… 赤か…………」
「? ………………っつかれーすっ!」
「お疲れ…… 赤か…… 数段、ね…… あか、かぁ…………」
その夜ランディが小屋へ帰った後も、一人備蓄倉庫の中で呆然と立ち尽くし、赤だとかアカだとかAKAだとか呟きっぱなしで過ごしたレイブは、翌朝、一睡もしないままで呼び出し通り学院長ズィナミ・ヴァーズの元を訪ねたが、その顔色は死人の如き土気色、そのものであった。