テラーノベル
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※wkiクズ要素強いかもしれない
※苦手な方はUターン推奨
side:fjsw
きっつ、と息を詰まらせた若井の声が、背後から聞こえる。
そんなの、僕だって。僕の方がそうだ。
散々。指とか潤滑油で丹念に後ろを慣らされたけれど、そんなの、慣れる慣れないじゃない。
僕の体は、肉体的に誰かを受け入れるようにはできていないのに。
「や…っ、ぁ、あ、ッあ」
シーツを千切りそうな程強く握りしめて、顔を枕に押し付けて声を殺す。全然、殺せていなくて厭になる。
腰を掴まれて、のしかかられて。熱がゆっくり入ってくる。
僕じゃない人に僕の体を作り変えられていくような感覚に、胃の中のものが上がりそうになった。
「苦しい、よね?ゆっくり、するから」
若井の声も苦しそうだ。
だからなんだ。苦しいなら、無理に入れるのをやめればいいのに。
出っ張った部分がゆっくり入り込めば、あとはずるっと滑り、全部僕のナカに埋められてしまった。
ぺちん、と肌と肌がぶつかる音と同時に、自分でも意識した事がないような体の奥に熱塊の存在を感じる。
体の中心が、すごく重たい。
「あ、は、ぁっ、あ」
ぐぅっと感じる内側からの圧迫は違和感しかなくて、まともに声が出ない。
痛くしないから、ゆっくりするから、それがなんだっていうの。
大きくて硬い熱を飲まされた皮膚は、隙間も余裕もないくらいに伸びきってじんじん痺れるように痛い。
ゆっくりなんて最初だけでしょ?それだけで終わらないことくらい、僕でもわかるよ。
僕の中に入れただけで、なにかを待つみたいに静止している若井が、息を詰めていて。
どれくらい時間が経ったのかはわからない。多分、数分、数十秒だとは思う。
「動くよ」
ぽつりと呟くように言って、緩く抽挿される。
途端、硬い熱塊が内蔵を擦る感覚に、悲鳴をあげそうになった。
「ーーーっ!ぅあ、ッあ」
なんとか情けない声を上げずに堪えたけれど、立て続けに繰り返される抽挿に、短く弾んだ喘ぎ声が漏れる。
いっかいだってなんだって、いやだ。
若井が好きとか嫌いとかじゃなくて、いやだって言う感情だけがぐるぐるしてて、行為が始められそうな時に、僕なりに抵抗はした。
でも、呆気ないほど、全然適わなかった。
同じ男として、抵抗しきれなかった自分が、いやだ。
若井の記憶の中に、こんな僕の痴態が残るのが、いやだ。
なにがどうなって、こうなったのか理解できないまま。
この行為が過ぎ去った後に、何が待っているのか、こわくて、いやだ。
せっかく築いた大事な関係が、崩れてしまうのが、本当に、いやだ。
いやでしょうがない。
若井が動く度に、ねちねちした水っぽい音と肌が強くぶつかる音が鳴る。
意味の無い僕の声と、若井が息を詰める息遣い。
今この寝室だけ、異質の空間みたいだ。
「いッ…、ぅ、あっ、」
穿たれているところだけじゃなくて、ずっと色んなところが痛い。
からだもこころも。
気付けば、ぼろぼろ涙が零れていた。
こんな弱い自分も、心底いやだ。嫌いだ。
身も蓋もないくらいに大声で泣きたい気持ちを抑えたくて、枕に強く顔を押し当てる。
すん、と鼻を擽ったのは、若井の匂い。
「ねえ、涼ちゃん」
「ーーっ」
よく知ってる。
ここ最近、ずっといちばん傍にいた人の匂いだと思った。
瞬間、名前を呼ばれた。
ずっと、呼ばれていなかった、僕の名前を。
絶妙なタイミングで。
途端に、背筋をぞわぞわとしたナニカが駆け抜けて行ったような感覚に襲われて、がくん、と全身の強ばりがほどけた。
ただただ内側から内臓を押し上げられて苦しいだけだったのに、脈打ってるその形とか大きさとかをリアルに感じ取ってしまう。
僕を抱いている相手が、間違いなく僕のよく知る若井であることを認識した体が、受け入れる準備を始めたみたいに。
じわりと、あからさまな快楽が体中に拡がっていく感じがして、怖くなった。
「や、ぁん、いっ…、やだ…っ、わか、い」
「やっと、気持ちよさそうな声になった」
若井が優しいことは知ってる。僕なんかより全然優しい。
だからきっと、僕をこうするまでに至る何か理由があるのかなって思うけれど。
ただ、性処理したくて。たまたま近くにいたのが僕だった。という理由だったら。
信じたくない。
今日まで確信を持って信じてきたものが、足元から崩れてしまう。
理由やこの行為の真意を知りたいと思うのに、若井は何もそれに対する言葉は言わなくて。
僕は、心を置ける場所がない。
気持ちよさそうな声になった、とホッとしたような声色で言って、僕の体を後ろから抱き締めた。
ぐっと体が密着して、若井の肌を背中に感じる。
内側にある熱が一番奥に届いて、あぅ、と潰れた声が出てしまった。
汗ばんでいるのは、若井か僕か、混ざりあってしまってもうわからない。
「ッぁ、い、や、あぁあっっ」
突然、抽挿が激しくなる。
なにか考える前に、霰も無い声が口から迸って、性急な律動に脳が揺れた。
目の前がチカチカする。
皮膚を叩かれるような、形容し難い鋭い音が何度も聞こえ、それが肌と肌がぶつかって鳴っている音だと気づくまで時間がかかった。
硬い熱が押し込まれては引き摺り出されていく感覚に、背筋がそば立つ。
僕が、若井と。
情事を致している。
そんな事実が、今更ながらに急にリアルさを持って僕を襲う。
「涼ちゃん…っ」
「やっ、ぁ、んっ、ゃだ、わかっ、もぉ…ッ」
余裕の無い上擦った声で僕の名前を呼びながら、僕の言葉には構わず、硬い熱を叩きつけてくる。
いやだ、やめて、と外聞も恥もなく喘ぐ合間に零すけれど、解放してはもらえない。
動きが激しくなるだけだった。
奥を突かれる度に、ジリッと体が痺れ、電流が走るみたいにびくんっと体が反応してしまう。
「ぅっ、も、ぁっ、ぃやだ…ぁっ」
むちゃくちゃにされてる体と心が、痛くて痺れて、熱くて苦しくて、所々で快楽も拾って。
只でさえ思うことがたくさんあって爆発しそうだった脳が、頭が、おかしくなりそうだった。
抱き締めていた腕がとかれ、ベッドに押さえつけられて、腰を打ち付けられて、逃げられない僕は蹂躙されているような気持ちになって打ちのめされる。
うなじを舐めて噛まれて、もう何も考えられない。
もういっそ、意識なんて飛んでしまえたら楽なのに。
「涼ちゃん、出そう」
ねえ、出していい?
少し掠れた、息の上がった声が聞こえる。
本能的に、このままナカに。という空気を感じて、反射的に、いやだ、と首を横に振った。
それを見てか、ふふ、と笑う気配。空気が揺れる。
そんな些細な笑い方さえ、僕の知ってる若井だ。
こんな、わけがわからないまま抱かれるんだったら、知らない誰かの方が、余程気持ちは楽だった。
「やだ、よぉ…っ、」
もう、何もかもが、いやだ。
若井は、僕だって、わかってたんだ。最初から。
勘違いだとか、そういうんじゃないんだ。
どうして、僕だったんだろう?
距離が縮まったって言ったって、やっとプラスになったくらいの関係の僕と、こういうことをしたいと思っていたなんて到底有り得ない。
なら、やっぱり、手頃に欲求不満を解消できる相手が欲しくて、それが僕だったのかな。
休止のタイミング、ルームシェアのタイミング、流行病のタイミング。全部が重なって、僕しかいなかったのかもしれない。
そうだとしたら。
それで、こういうことになったんだとしたら、すごく、哀しい。
外に出すからね、って聞きたくもない言葉を耳元で囁かれ、腰を掴む指先が食い込むほど力を込められて、追い上げる動きが激しくなる。
僕は、為す術もなく、揺さぶられるまま好き放題に揺すられて、意味を持たない文字の羅列を吐き出しながら、ただただ終わりが来るのを待つしかできない。
明日、目が覚めたら、僕はどう感じるんだろう。
若井は、何を思うんだろう。
きっと何かが変わってしまう。
けれどどう変わるかは想像もできない。
もう、目なんか覚めなくてもいいのに。
そう思いながら、僕はようやく意識を手放した。
続く
wkiさんひどい!状態で
更新まで時間が空きそうです
なんだか色々…
私のどストライクの趣味を詰め込むと
誰得〜なこんな感じになります
すみません
(最初の公開でセンシティブ設定にしてなくて待て待て待てと慌てました)
この場を借りて
いいねとフォロー、本当にありがとうございます
ものすごく励みになります
長文乱文、鈍筆ですが
暇潰し程度でお付き合いくださると踊って喜びます
コメント
5件
更新ありがとうございます、めっちゃドキドキでした😍 もう、文章が天才的すぎて、もう、もう〜‼️💓って感じです🤭 💛ちゃんの、嫌だという感情がすごく刺さって、でも決して💙くん自身を嫌だとは言っていなくて、そこがまだなんだか切ないような、いじらしいような、むずキュンでした😣 💙くん、意地悪しないで、ちゃんと言葉にしなさい‼️けしからん、もっとお願いします‼️と頭の中で葛藤しながら、読んでいました🤣
クズ井さんちょっと好きです笑 言葉足らずとかいろいろあるんでしょうけど現時点では…ですね笑 💛さんのこの状況や今後についての疑問や不安や切なさやりきれなさがとても丁寧に書かれていてグッときました…また更新楽しみに待ってます!