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┈┈┈┈┈┈┈ ❁ 〖注意〗 ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
これはアニメ『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-絶望編』の世界で『魔法少女 まどか☆マギカ』の微クロスオーバー二次創作作品です。
キャラクターの性格などが原作とは異なっている場合があります。
ダンガンロンパの方を優先していますので、まどマギのキャラクターは殆どというより、特定のキャラクター達と魔女以外確実に出ません。
以下、たくさんの注意書きがありますので、それをふまえてから次のページにお願いします。
腐向けなので、注意です。注意です!(大事だから二回言いました)
そしてまどマギの方では少女だけでしたが、この作品の中では少年も行けるようにしました。(そうじゃなきゃ成り立たないですので)
ですので「魔法少女」→「魔法戦士」、「魔女」→「魔人」にしてます。『scene0』要素も入ってます。
・色々なCPとか出てきます
・ですが主なCPは狛日とナミヒナです。狛日とナミヒナです!!
・急展開
・キャラ崩壊が崩壊どころでは無いので注意(特に菜摘など)
・原作にはない魔女が出ます
・名前のあるオリジナルキャラが出てきます
・キャラの衣装は頑張って考えました(マギレコキャラの衣装や77期生の絶望時代の衣装などを設定資料などから)
・過去捏造まみれです(特に日向&七海)
・多少どころかがっつり時系列を弄っています
・多分に含まれる無茶や矛盾
・原作以上のグロ表現があります
・小説初心者なので出来るだけ改善試みる
・駄文気味です。文才よ私のの元に降りてきてくれ
・オリジナル展開やストーリーがあります
注意書き多くてすみません。こんな感じで書いていくので、ご了承ください。
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──世界が、終わる。
それは単なる比喩ではなく、本当に世界が終焉へと向かっていっている。沢山の建物がゴゴゴと歪な音を奏でながら崩れ落ち、ありとあらゆる場所を緋色に染まった炎が焼き尽くし、そんな悲惨な風景を虚しく映し出す数多の水溜りなどが包み込んでいる、復興なんて到底されないような有様だ。
「……………また、ダメだった。……何処で間違えるんだろう…」
白髪の青年は黒く紅みがかり終焉へと辿る『絶望』の世界を見つめた後、紅く染まった水を弾きながら後ろへと歩き出した。
───希望あふれる『未来』を望んで。
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✦・─────────────────────・✦
─第一話─
〖はじまりの奇跡〗
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満開の桜が散り葉桜に移り変っていく頃の五月中旬、とある学園も新たな希望に進むべく移り変っていっていた。
──私立希望ヶ峰学園。
様々な分野に秀でた才能を持つ少年少女を迎え入れ、更なる高みへ導いていく事を旨としており『現役の高校生である事』『その分野において「超高校級」である事』を条件に全国から生徒を集めている学園。
そんな希望ヶ峰学園に昨年設立された学科がある。それが『予備学科』。才能を持たない高校生でも、倍率の高い入学試験を合格し高額な学費を支払う事で、入学が出来る。
表向きは「更なる才能の発掘」のために一般の生徒を受け入れているとされているが、本科との交流はほとんどなく、扱いも天と地程の差がある。
才能を認められれば本科へ編入できるシステムも一応は存在しているものの、まともに機能しているかどうかは不明。
そしてその学科に通う生徒は一人、中央広場にある噴水の場所にてベンチで座りながら、本科の校舎を眺めていた。
「……………」
彼の名は【日向創】。予備学科に在籍していても、本科への編入を諦めていない生徒。
『胸を張れる自分になりたい』、という理由で希望ヶ峰学園に憧れを抱き続けている彼。
そんな彼に近づく人物が一人。
「ここに居たわけ? 探したんだけど」
「…九頭龍か」
彼女の名は【九頭龍菜摘】。構成員約三万人以上で国内最大の指定暴力団、「九頭龍組」の組長の娘であり、極道である九頭龍組の跡取りの“超高校級の極道”として本科に通う【九頭龍冬彦】の妹。彼女もまた本科への編入を諦めていない生徒。
「俺に何か用か?」
「用も何も、一緒にご飯食べる約束だったじゃない」
「………あ」
「はぁ? 忘れてたわけ?」
「いや、ごめんな」
「全く、ほらさっさとアンタの分も出してよ」
「あぁ」
予備学科内でも、特に本科への編入を諦めていない二人。そんな二人は最初はとても仲がいいとは言えなかったが、ある日突然菜摘が性格が変わったかのように多少他の人に喧嘩を売るような事をしなくなった。
日向もあまり予備学科の生徒達と仲良くする様子はなく、一人で過ごす日々が続いていたが、ある日【七海千秋】というゲームをオールジャンルでプレイできる“超高校級のゲーマー”として本科に通う女子生徒と出会って以来、本来の性格に徐々にクラスメイト達にも出すようになり、予備学科内での友人も出来た。
「つーか、マジでアンタ最近どうしたのよ?」
「どうしたって……何がだ?」
「さっきみたいにボーッとしてた事よ! 授業中でもボーッとしてさぁ? それで約束も忘れるし」
「す、すまん…」
「それで、何を考えてボーッとしてんの?」
「……………不思議な、夢を見るんだ」
「夢?」
日向が見た夢の内容は、街がボロボロに崩れていく中、黒く紅みがかった歪な空に浮かぶ謎の物体や、緋色に染まった炎が辺りを焼き尽くしている光景を水面は虚しく映し出す夢。何処かの学校内にて何人もの人が殺し合う夢。そして絶望的な破滅で終わる夢……。
日向は約一週間前から謎に満ちた夢を見続けており、先程のようにボーッとしていたのは夢について考えていたと述べ、菜摘にどう思うかと聞いた。
「はぁ……? そんなの悪夢で捉えればいいじゃん」
「いや…俺もそうしようとしたが、何故か全部の夢を体験したかのような感覚なんだよ」
「………ますます理解出来なくなったんだけど」
だよなぁ、と日向は言う。日向が見た夢は到底現実的ではなく、むしろ非現実的の方が近しい。だが日向はここ最近見る夢を全て体験したような感覚に陥っており、謎の夢の真相について推理しようにも本当に現実で起こりうるのかどうかすら分からないものでは、結局は分からずじまいと思いたった。
「……つか、一週間で思い出したけどさ。彼奴…まだ来ないのかな」
「………サトウか」
【サトウ】は日向と菜摘のクラスメイトであり、友人でもある。人物写真を得意とし将来を嘱望されている“超高校級の写真家”として本科に通う【小泉真昼】と親友であり、菜摘も含め三人は希望ヶ峰学園に来る前は写真部として接していた。
その結果希望ヶ峰学園に通えることになった小泉に対し、菜摘は小泉に嫌がらせを始めた。サトウは親友である小泉を守る為に、菜摘が小泉に手を出そうとするとすぐに止める、それが日課のように毎日起こっていた。
「今まで「真昼に手を出すのはやめて!」とかほざいてた癖に、急に学校に来なくなってさ。………どっかで野垂れ死んだのかなぁ?」
「誰かさんが寂しくて俺にサトウのモノマネさせてきたのは誰だ?」
「なっ、約束忘れてたアンタが言うな!!」
「あーはいはい。誰にも言わないでおくから」
「絶対だからねっ!!」
二人は日向の夢について話し合っていたが、いつの間にか青春の一つでもある雑談へと話は変わっていき、昼ご飯を食べ終わる時には夢の話は一切していなかった。弁当を片付けていざ予備学科の校舎へと帰ろうとベンチから立ち上がった。
───その時だった。
「………キミ、日向創クン…でしょ?」
「「!?」」
二人がベンチから立ち上がった時を見計らって、日向に声をかけたのは、平凡な学生の中から抽選で選ばれ“超高校級の幸運”として本科に通い、本科に通う才能を持つ生徒を「希望」と称して崇めたて、予備学科の生徒達からは「希望厨」「超高校級の予備学科嫌い」と称されるほど、才能を持たぬ予備学科をとてつもなく嫌悪している【狛枝凪斗】であった。
菜摘は面倒な奴が来たと内心そう呟いたが、今の日向は違った。日向が菜摘に相談していた「不思議な夢」になんと狛枝似の白髪の青年が出てきていたのだ。
「………何? 予備学科嫌いの“幸運”が」
「あのさ、ボクが用があるのは日向創クンで、九頭龍クンの妹で才能も無い“お荷物”のキミには用無いんだけど?」
「あ゛ぁ゛!? アンタいい度胸あるじゃないっ!!」
「お、落ち着け九頭龍! それで、俺に何か用か……?」
「………二人っきりで話したいんだけどさ」
「何、私は邪魔だからどっか行けって意味??」
「あはは、よく分かってるじゃないか。だからさっさと予備学科の校舎にでも戻っててよ」
「あ゛ぁ゛マジムカつくっ!! 日向っ、さっさとそのキモ男との話終わらせてよねっ!!」
「お、おう…」
菜摘は狛枝の容赦ない言葉にイライラと道にある小石を蹴ったりなどして、予備学科の校舎へと帰って行った。
日向と狛枝の二人だけになった中央広場には、少しの間シーンと見つめあった時間があった。
「な…なぁ、話したい事ってなんだよ…? 俺、お前に何かしたか…? 身に覚えがないんだが……」
日向は自分が何か狛枝に悪い事をしたのかと思い、そう質問したが、狛枝の返事に言葉を一瞬失くした。
「……ねぇ、日向創クン。キミは自分の人生が尊いと思う? 家族や友達を大切にしてる?」
「………は?」
日向は戸惑った。なにせ突然ついさっき初めてあった人から、人生の事や家族と友達について大切かと聞かれたら、誰だって戸惑う筈だ。日向も例外では無かった。
「えっと……た、大切だと思う。……家族も、友達も大事な人達だぞ」
「……本当?」
「ほ、本当だ! う、嘘な訳ないだろっ!」
日向はそう答えた。「友達」は七海と出会い、人生は才能だけじゃない。“人と関わることで思い出を作る事で、才能よりも大切な『希望』が生まれる。”と七海から言われて、予備学科で友人を作り思い出を作っていき『希望』を作り上げていた。
だが、「家族」の所は大切か一瞬日向は迷った。昔から両親から過度な期待をされ、様々な習い事をさせられたが、全て平均の上をいくぐらいで、「超高校級」の所まではいけなかった。そして両親から失望される……そのような日々を送っていた。
その答えに対して狛枝は、日向の答えを見透かすような灰色の目を日向に向けつつ、狛枝は無表情のままこう告げた。
「……………そう。もしそれが本当ならさ、今とは違う自分になろうなんて、絶対に思わないでよね。キミにとって、都合のいい事だけを言ってくる奴らにも。さもなければ、何もかも…全てを失う事になるからさ……」
「え……?」
日向が狛枝の言葉に戸惑っていたが、狛枝はそのまま話を続けた。
「キミは、日向創のままでいればいいんだよ。今まで通り、これからも………ね…」
と言って去ってしまった。中央広場には狛枝の言葉で呆然と立ち尽くしている日向だけを置いて、時間は進んでいっていた。
───物陰からじっと日向を見つめている存在と共に。
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「あっ、日向! お前大丈夫か、本科の希望厨に何かされてないか!?」
「うおっ、…俺は大丈夫だし狛枝から何もされてないぞ」
「そうだぞ谷崎、いくら小学校から高校が同じでもさすがにな。オメー日向のセコムかよ?」
「さすがに心配しすぎじゃね?」
「だってあの日向だぞ? 天然人たらしで何処か抜けてる日向なんだぞ? しかも相手が才能を崇拝する程の愛情を持つ希望厨だ、心配にもなるだろ!?」
「「確かに、天然人たらしの日向だったらなるわ」」
「お前らっ…! まぁ…、ただの愚痴だから気にしてないぞ」
予備学科の校舎に帰ってきたら、友人である【谷崎薫】(たにざき かおる)達から心配された。どうやら菜摘が日向が狛枝に絡まれたと広めたらしい。日向は狛枝に聞かれた質問の事は誰にも言わなかった。
そして夕方、七海と学園近くにあるショッピングモールのゲームセンターにて遊ぶ約束をしており、七海とゲームを楽しく様々なゲームを遊んでいる途中に、日向は七海に最近見ている謎の夢について話した。
「ふむふむ……。それってさ、日向くんは前に狛枝くんと会ったことがあるって事。じゃないのかな?」
「えぇ……? 俺会った覚えないんだが……」
「……日向くん自身は覚えてないけど、深層心理には狛枝くんと会った覚えがある。だからそれが夢に出てきた。………なんて、無理だよねそんな事」
「だよなぁ……。何であんな夢見たんだ俺…?」
「……………」
「………七海?」
日向の夢については結局何も分からずじまいだった。日向は謎の夢を何故見たのかと疑問に思いながらも次のゲームを探しに行こうとしたが、七海が立ち止まっている事に気付き近付こうとした時七海から質問をされた。
「日向くんはさ、今の人生を大切にしてる……よね?」
「……え?」
日向は目を見開いた。なぜなら七海の質問は、まるで昼休みの時に狛枝が日向に質問してきた内容とほぼ似た内容だったからだ。
「………大切にしてるに決まってるだろ?」
「本当に?」
「本当だって。現に今七海とこうして遊ぶのも大切でとっても楽しいぞ」
「………そっか。ならあっちに新作のゲームがあるんだ。行こっ!」
「わ、分かったから引っ張るな…っ!」
七海の返事に少し違和感を抱きつつも、日向はその後も七海と一緒にゲームセンターで楽しんだ。時には七海がその店での最高得点を出したり、日向と一緒にプリクラを何回かしたりと、沢山遊び尽くした。
一方、暗い倉庫のような場所にて謎の生き物が必死になって逃げ回っていた。
白色と深緑色を混ぜ合わせた弾幕が後ろから攻撃されても、謎の生き物は避けて逃げ回っていた。弾幕の威力はごく一部の壁や床を壊せる程の威力であり、謎の生き物にとっては当たったら死ぬと思わさせる程だ。
そしてその生き物を追いかけ攻撃を行っている人物は、学校の男子制服のような服で鋭角的なデザインをしており、砂時計の意匠をモチーフとしている服を着ていた。
その人物は下の階へと降りた生き物を追うために降り、追跡を再開した。
七海と楽しくゲームで未だ遊んでいる日向、現在七海の「太鼓〇達人 〜絶対絶望ver.〜」という音ゲー作品の「絶望性︰ヒーロー治療薬」という楽曲のプレイを、相変わらず七海のプレイスキル高いな、と思いながらプレイを見つめていた。
「………助けて」
「……え?」
何処からか謎の声が聞こえた。日向は七海がプレイしている音ゲー作品からじゃない、と疑問を持ちながらも辺りを見渡した。
「助けて、創……」
「え? え…?」
「僕を……助けてぇ………」
その声の主は直接日向に言っていると気付き、七海に何も言わずにその声のする方へと行ってしまった。
……日向は気付かなかったが、そのゲームセンターに遊びに来ていた菜摘が、日向がゲームセンターのある店の裏側へと行くところを目撃していた。
「誰だ……? 誰なんだよ…?」
日向は謎の声に問いかけながら、その声のする方へと歩いていた。場所はゲームセンターの奥にある店内改装の為立ち入り禁止となっている薄暗い場所。
「助けて………」
その声が店内改装の為CLOSEしている場所の中だと分かった。日向はその場所の扉を開き、恐る恐る前へと歩き出した。
「何処にいるんだ…? お前…誰だ?」
「助…けてぇ………」
その声の主が上に居ると察し、天井を見上げると、天井にあった板がガタガタっ!と、一枚と謎の生き物と共に落ちてきた。
「うわあっ!?」
「へぅ……へぅ………」
落ちてきた謎の生き物は所々傷だらけで、呼吸もやっとなぐらいの状態だった。日向は傷だらけの生き物を見て、不思議に思いながらも近付きそっと抱き上げた。
「お前…なのか?」
「…助けてぇ………うっ…」
すると天井にあった鎖の一部が先程板が落ちてきた場所の先にジャラララと音を出しながら落ちてきた。日向は音の方を見て一瞬時が止まったかのように体が動かなかった。
なぜなら、昼休みの時日向に謎の質問をしてきた狛枝が、制服とは違う服を着て無表情で見つめていたからだ。
「……狛枝?」
「………そいつから離れてよ」
「え? で…でもよ、こいつ怪我してて……」
「へぅ…へぅ…」
謎の生き物が日向の胸の中で今でも荒い呼吸を続けており、離れてしまったら確実に力尽きてしまう程にまで弱っている状態の白い生き物を見て、日向は先程よりも自分自身の中に白い生き物を狛枝の視界から隠すように抱きしめた。
「…だ、駄目だ! 酷い事したらこいつ死んじまう!」
「………キミには関係ないでしょ」
「だけどよ! こいつ、俺の事を呼んでたんだよ! 聞こえたんだ、“助けて”ってよっ!」
「そう………」
狛枝は日向へと近付き今にでも白い生き物を奪い取る雰囲気を醸し出しており、日向は無表情で近付き昼休みの時よりも謎めいた狛枝に白い生き物を抱えながら震え、二人が見つめあっているとどこからともなく勢いが強い煙が狛枝を襲った。
日向が煙が出ている方へと向くと、消火器を手に狛枝に向けて煙を発射している菜摘が居た。
「日向っ! さっさと逃げるわよ!」
「九頭龍っ!?」
日向は突然現れた菜摘に驚きながらも、菜摘の方へと白い生き物を抱えて走って行った。日向が近付いたのを見計らって菜摘は狛枝に向けて消火器を投げ、出口へと向かいだした。
狛枝は消火器から出た煙を瞬時にどかし二人の後を追いかけようとしたが、突然周りに蝶や茨が現れ始め、暗く倉庫のような場所とは打って変わって蝶や薔薇などがふんだんにあるメルヘンチックな場所へとなっていた。
「………こんな時に」
一方、先程の場所から走っている二人は、時折狛枝が来ていないかを確認しながら非常口へと向かっていた。
「なんなのよアイツ、希望信仰変質者から今度はコスプレで通り魔なわけっ!? っていうか何それ日向、ぬいぐるみみたいだけど所々怪我してるし生き物なの!?」
「俺も分かんないけど、とにかく今はこいつを助けねぇと…!」
二人が走っている横で先程狛枝の周りに現れたメルヘンチックな空間が徐々に侵食し始め、二人が非常口に着こうとする直前であった筈の非常口が消え、現実的には有り得ない場所に二人は迷い込んでいた。
「あれ、非常口が消えた!? それにここ何処よ!?」
「変だぞここ…、どんどん道が変わっていくぞ!?」
「あぁもうっ! どうなってんのよ!!」
“イヒヒヒ……”
「っ!? な、何かいる!?」
謎の声がする方へと向くと、そこにはカイゼル髭の付いた綿のような頭から、細長い体と腕が生えていて、下半身は蝶になっている不気味な存在が、まるでこそこそと話しているような仕草をしていた。
そして不気味な存在は二人が逃げられないように囲み、茨の先にあるハサミを近づかさせていた。
「……冗談よね? 私、アンタが話してた夢でも見てるんだよね? ねぇってば、日向っ!!」
「っ………」
日向は菜摘を白い生き物と共に不気味な存在から守るように隠そうとし、近づいてくるハサミや非現実すぎる空間についてやどうにかして菜摘と白い生き物をここから逃がす為の作戦を頭をフル回転していた。
─だから遠くから勢いよく走って来てる存在に気が付かなかった。
「うおぉぉぉぉぉっ!!!!」
「喰らいやがれえぇぇぇぇっ!!!!」
ドゴォンッ!と二人と一匹の前に青と緑の二つの光が勢いよく落ち、二人に迫っていた先端にハサミを付けた茨や不気味な存在を吹き飛ばした。
光が収まっていくと目の前に背を向けてたっている人物が居た。一人の男性は白色で軍の指揮官のような服でシンプルなデザインをしており、腰にあるベルトの中央には青色に輝く長方形の宝石が付いていた。もう一人の女性は動きやすさを重視したインファイタースタイルのような服で、ガントレットのような武器を拳につけており、胸元に茜色に輝く六角形の宝石がある。
二人は地面から拳を上げて何が起きたか分からない日向と菜摘を置いて話し出した。
「ふん、軟弱じゃったのぉ」
「はぁ? んだよ強ぇと思ったのによ。だったらさっさと強ぇ奴の所行くぞおっさん!」
「待たんか終里。先に巻き込まれた人が無事かが先じゃ」
「あ、あの…」
「二人共待ってよー!!」
日向がそんな二人に話しかけようとしたが、後ろから来た人物の声によって遮られた。その人物は少し小太りしていて手にフライパンを持ち頭にはコック帽といかにもシェフのような格好をしているが、先程の二人と同じく腰のバンダナには赤色に輝く小さなコック帽の形の宝石があった。
「おせーぞ花村ぁ!」
「ふ、二人が早いだけだよっ! これでも全力で来たんだよっ!?」
「花村はもっと鍛えた方がワシらに着いてこれるはずじゃ。さて、お前さんたち怪我はないか?」
「は、はい……」
ガタイがいい男性が急にこちらへと話しかけてきて戸惑った日向だが、なんとか言葉を出せた。
「……あれ、キュウべえを助けてくれたの?」
「キュウべえ?」
「今お前さんが抱えている生き物じゃ」
「……ふーん、そうなんだ」
「お、俺…呼ばれたんだ。頭の中に直接こいつの声が……」
「なるほど、そうなんじゃな」
日向が先程から抱えていた白い生き物……【キュウべえ】と呼ばれた生き物は、狛枝から逃げきれて安心したのか日向の腕の中で眠っていた。
「……ん? つかアンタら本科の人間?」
「え? もしかして二人も希望ヶ峰学園の生徒?」
「……予備学科だk」
「だぁぁぁぁ!! つまんねぇーっ!!!」
三人が希望ヶ峰学園の本科生徒だと分かり、日向が菜摘の代わりに予備学科生徒と言う途中にて、茶髪の女性…並外れた身体能力を持つ“超高校級の体操部”として本科に通う【終里赤音】が大声を上げた。
「おいおっさん! 早く強ぇ奴の所行こうぜ!!」
「まずは魔人と戦えぬ人の避難させることが先じゃ」
「そんな事してたら逃げちまうだろ強ぇ奴が!」
「と、とりあえずキュウべえを回復させておくね……」
超一流の料理を作れる“超高校級の料理人”として本科に通う【花村輝々】が日向に抱えられてスヤスヤと寝ているキュウべえへと近付き、手を向けると狛枝から受けたであろう傷が治っていきキュウべえは重い瞼をゆっくりと上げ、日向の腕の中で目を覚ました。
「ん……んぅ…。ありがとう輝々、助かったよ」
「お礼はきみを抱えているムッシュと隣にいるマドモアゼルに言ってあげて。ぼくたちは通りかかっただけだからね」
「どうもありがとう。僕の名前はキュウべえ」
「えっと、お前が俺を呼んだのか…?」
「そうだよ、日向創。それと九頭龍菜摘」
「なんで私らの名前を知ってんの!?」
「えぇ!? 九頭龍って九頭龍くんの事!?」
「うるさいっ! 黙ってろ豚!」
「あ、ありがとうございます!!」
罵倒した花村が逆に喜んで引いている菜摘を置いて、キュウべえは日向を見つめながら話を続けた。
「僕、君たちにお願いがあって来たんだ」
「お願い…?」
「僕と契約して魔法戦士になっt」
「だぁぁぁぁあああ!! もう我慢出来ねーっ!!! 花村ぁ、強ぇ奴の所まで行くぞっ!!!」
「えぇっ!? まだ避難させてなi」
「つべこべ言ってんじゃねぇ、待ってろよ強ぇ奴ぅぅぅぅ!!!」
「嘘でしょぉぉぉおおぉぉ!?」
終里が花村を鷲掴みして結界の奥へと物凄いスピードで走り去っていった。それを自身のマネジメントにて各部を救ってきた“超高校級のマネージャー”として本科に通う【弐大猫丸】が呆れながら日向達の方へと向いた。
「すまんのぅ……、彼奴は強い奴を見つけるとすぐあぁなるんじゃ」
「そうなんだな……」
「ねぇ、さっきこの白い狸の言ってた“魔法戦士”ってなんなの?」
「それはね、このような結界の最奥に潜んでいる“魔人”を倒す力を持つ子たちの事だよ。僕のことが見える子たちだけが契約できて魔法戦士になれるんだよ」
「契約って…?」
「僕は君たちの願い事を何でも一つ叶えてあげるよ。それと引き換えに出来上がるのが“ソウルジェム”、魔力の源であり魔法戦士としての証。この石を手にした者は魔人と戦う使命を課されるんだ」
キュウべえが二人に魔法戦士について話し、ソウルジェムと呼ばれる宝石を持つ者はこの結界の最奥にいる魔人と戦う事を課されるが、契約する時に願い事を何でも一つ叶えてくれるという言葉に二人は集中し、日向よりも菜摘が早く反応した。
「それって本当なのっ!? 本当に何でも一つだけ叶えられるのっ!?」
「なんだって構わない、どんな奇跡だって起こしてあげられる」
「お前さんたちキュウべえと契約するんか?」
「契約するっ! 絶対にっ!!」
「………考えてる途中だけど」
願い事を叶えて欲しい菜摘はすぐにでも契約しそうになっていたが、日向は昼休みでの狛枝の言葉により契約を保留にする事にした。弐大は二人の返答を聞き少し沈黙した後ニッと微笑み、二人にとある提案をした。
「なら、ワシと共に魔法戦士体験トレーニングをする気はないかのぉ?」
「え、邪魔じゃないのか……?」
日向が弐大に迷惑をかける事を危惧し弐大の提案を断ろうとしたが、弐大は日向を安心させるように日向の背中を優しく叩きまるでガッツを与えたかのようだった。
「全く邪魔じゃないわい、むしろこれから出来る弟子のトレーニングと考えればワシは嬉しい限りじゃあ!」
「まぁいいんじゃないの? アンタだってそいつに願い叶えてもらう予定なんでしょ?」
「あ、あぁ……一応」
「なら一石二鳥でしょ、そいつがいいって言ってんだからさ」
「僕も猫丸達の魔人退治を見学していいと思うよ。創もいつか僕と契約する気なんだろう?」
「………なら、いいか弐大?」
「あぁ大丈夫じゃ。それじゃ、終里達の所へ行くぞぉ!!」
弐大を先頭に菜摘、日向とキュウべえの順で結界の奥へと進んで行った。使い魔の襲撃も多々あったが弐大が倒し続けたおかげで二人は無傷でいた。
「つか思ったんだけど、どうやってアイツら倒してんの?」
「ん? あぁそれはな、ワシの場合はこの手袋じゃな」
「………ただの白い手袋しか見えないんだけど」
「魔法戦士が魔人を倒す為の武器だよ。魔法戦士一人一人違う武器を持ってね、猫丸のは手袋だけど魔人の攻撃を掴んだり怪力を使える事が出来る物なんだよ」
「あっ! さっきの衝撃波ってそれで出来てたのか!」
「そうじゃ。他にも“コネクト”という技もあるんじゃ」
「“コネクト”?」
「コネクトは自身の力を他の魔法戦士に分け与えて強化する能力の事だよ。コネクトをするとね繰り出す技が他の技よりも強力になるんだ。………と、着いたみたいだね」
魔法戦士の個人の武器について話していると、目的地である結界の最奥へと辿り着いた。扉を開けるとまるで館にある中庭のような薔薇園を元にした空間があり、その空間には先程最奥へと向かって行った終里と花村の姿もあるが、日向と菜摘の視線は不気味な姿をしている異形な存在に集中していた。
頭であろうその場所にはドロドロと下へ下へと垂れていって薔薇が咲いており、胴体の部分はまるで芋虫みたいな形で六本の足もある。背中には蝶の羽がある存在に、二人は自分たちの知る生物とはかけ離れた不気味な存在こそが〖魔人〗であることを、顔を青ざめながら理解した。
「二人とも、あれが絶望を振りまく存在である魔人だよ」
「うっっわ…グロ過ぎるでしょ」
「あんなのと戦うのか…?」
「大丈夫じゃ、お前さんたちはここにおるんじゃ」
弐大が二人を攻撃から防ぐために結界を出した後すぐさまこの結界の主である〖薔薇園の魔人〗の居る場所へと降り、茨の影に隠れている終里と花村と合流した。
「あ、弐大くんやっと来たんだね!」
「やっと来たかおっさん。さっさとアイツ倒そうぜ!」
「そうじゃな、花村はここから遠距離攻撃を頼むぞ」
「うん、後方支援はこのぼくに任せてね!」
弐大と終里が隠れていた場所から出て〖薔薇園の魔人〗へと攻撃しに行った。 〖薔薇園の魔人〗は二人の存在に気付き自身が座っていた椅子を投げつけ、弐大は後ろに下がったが終里はそのまま突っ込み椅子を破壊し続けて攻撃しようとしたが、地面からでてきた茨が終里の足に絡みついた。
茨は終里の足に絡みついたまま壁や地面に叩きつけ始めたが、遠くから花村の火球が絡みついていた茨を燃やし終里を解放した。
「終里さん大丈夫っ!?」
「っ! クッソォ!」
「ただ突っ込むだけじゃダメと言っとるだろう終里、敵の不意をつく為には予測出来ぬ攻撃を実行することじゃと」
「普通に攻撃していけばいいんだろ!」
「そうじゃない、不意を着くのはこうすることじゃぁ!!」
そう言って弐大は先程終里が破壊した椅子の破片を魔人向けて投げていき、魔人は茨で飛んできた破片を逸らそうとした時、破片に紛れて弐大も来ており弐大は魔人の下の地面に向けて攻撃し、魔人周辺に土埃が起こりまるで霧深い森の奥のようにほとんど何も見えぬ状態へと陥った。
その隙に花村とコネクトした終里が、右の拳に自身と花村の魔力を溜め込みながら魔人の目の前まで接近した。
「オラァァァアアアアッ!!!」
カッ、ドォォォオオオンンンッ!!
赤と緑の閃光が混じり合いながら魔人に突撃し、もろに攻撃を受けた魔人は終里の草に引火した火が体を燃やし、最終的に黒い霧のようになり姿を消した。
「あっ、勝ったの…?」
「凄い…」
二人が魔人に勝った弐大達を見つめていると、結界がまるで捻れ始めたかのように消えていき、元の店内改装で立ち入り禁止となっている場所に戻っていった。
弐大達も結界が消えると共に変身を解き、弐大が“ある物”を拾った後再び日向達に近付いた。
「何それ?」
「これは“グリーフシード”と呼び、魔人の卵じゃ」
「た…卵……?」
「運が良ければ時々魔人が持ち歩いてることがあるんだ。今回はその例なんだよ」
「大丈夫なのか…?」
「大丈夫、その状態では安全だよ。むしろ役に立つ貴重なものだ」
キュウべえが言った後、弐大が自身のソウルジェムを二人に見せた。弐大のソウルジェムは青色に輝いてはいるが少し青色が濁っている、それは花村と終里も同じであった。
「今のワシらのソウルジェムは多少濁ってるが、グリーフシードを使うとじゃな」
スッ…、っとソウルジェムに近づけるとソウルジェムの周りに濁っている箇所が浮き出し、それをグリーフシードが吸収していった。
「綺麗になった。さっきの状態じゃダメなの?」
「基本的には避けたい状態さ。濁っているのはソウルジェムに溜まる“穢れ”と言って、穢れを溜め過ぎると魔力効率が低下してしまうんだ」
「そう…なんだな」
「グリーフシードを使えば戦いや日常で使用した魔力を回復出来るからね。これを“浄化”と呼んでいるんだ」
「あぁ、これでワシらが消耗した魔力が元通りになるんじゃ」
弐大は花村と終里の浄化が終わると日向達の後ろに、深淵のような闇で包まれており光が当たらない場所にグリーフシードを投げた。そして投げたグリーフシードを受け取る音が響き渡り、日向達がその行動を疑問に思いながら振り向くと背筋が凍りついた。
「あと一度くらいは使えるはずじゃ、一応お前さんのおかげで使い魔を簡単に倒すことが出来たからな。お前さんにあげるわい。…狛枝よ」
先程キュウべえを追いかけ日向と菜摘がキュウべえを連れて逃げてきた原因でもある、【狛枝凪斗】が歩いて出てきた。日向はキュウべえを守るようにギュッと抱きしめ、菜摘と共に狛枝を見つめていた。
「……………キミ達の獲物でしょ。ボクはただその場に居ただけだから、キミ達のものにすればいいよ」
狛枝は弐大へとグリーフシードを投げ返し、弐大がキャッチした。
「………そうか、それがお前さんの答えか。なら他にも反応がある、そっちに向かうのか?」
「それよりも、ボクが用があるのは…」
「のみ込みが悪いんじゃのぅ、見逃すと言っているんじゃ」
「…………」
「オメーよぉ。なんでキュウべえ狩りをしてんのか知らねぇけど、弱ぇコイツより強ぇ奴を倒さねぇのかよ?」
「ぼ、ぼくはキュウべえのおかげで助けられたから、そういうのはやめて欲しいんだよね…」
「だから、クラスメイト同士でお互い余計なトラブルとは避けたいじゃろう? 今後の関係に響く可能性があるからのぅ」
弐大達と狛枝が見つめ合い数秒が経つと、狛枝は振り返り無言でこの場を去っていった。日向と菜摘はやっと一息つくことができ安心した。
「さて、魔法戦士体験トレーニングはどうじゃった?」
「………いつもあんなのと戦ってるのか?」
「えっと、そうだね…」
「怖く…ないのか?」
「別に。オレは強ぇ奴と戦いてぇって願ったから、どんな姿でも戦うって決めてんだ!」
「ンフフッ。ぼくはさっきも言った通りキュウべえに願ってもらったから、その礼を魔人退治でしてるんだ」
「ワシはキュウべえのおかげで沢山の選手をそれぞれに適したスポーツを勧めることができ、沢山の選手を輝かせることが叶ったからのぉ。花村と同じ理由で魔人退治をしておるんじゃ」
日向の質問にそれぞれ答えて、“願いは自信が最も願う何かにすればいい”と分かったが、日向はある事を聞きそびれていたことを思い出した、
「そういや、魔人ってなんなんだ? あの時は気にしてなかったけど、魔法戦士とは違うのか?」
「願いから生まれるのが魔法戦士だとすれば、魔人は呪いから生まれた存在なんだ。魔法戦士が希望を振りまくように、魔人は絶望を撒き散らす。しかもその姿は普通の人間気は見えないからタチが悪い。不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ、そういう災いの種を世界にもたらしているんだ」
「理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔人の呪いの仕業なんじゃ」
「うん。形のない悪意になって人間を内側から蝕んでいくんだよ…」
「魔人はつねに結界の奥に隠れてるから、他の奴らが気付かねぇんだ」
「あぁ、さっきのように命懸けで危険を冒してまで叶えたい願いがあるかどうかを、じっくり考えた方がいいと思うぞ」
改めて魔人の事を説明と危険性を教わった日向は、キュウべえに叶えてもらう予定の願いはそれでいいのか、本当に叶えたい願いなのかをまた考えさせられた。
「………つーか、おっさん! さっき近くに魔人が居るって言ったか!?」
「ん、あぁ。さっきより遠くなってるが今からでも辿り着ける距離だと思うぞ」
「よっしゃぁぁぁ!! なら早速倒しに行こうぜっ!」
「えぇっ!? また行くの!?」
「落ち着かんか、全く……。それじゃあワシらは次の魔人の元に行くが、お前さんらはどうするんじゃ?」
「あー……俺は友達を待たせすぎてるから、いいかな」
「…………私も」
「そうか、それじゃあまた会った時にじゃな」
「おう、またなー!」
弐大達は二人と別れ先程弐大が感知した魔人の元へと走り去っていった。
「………さて、九頭龍はどうすr…って居ない!?」
日向は菜摘の方へ向くと菜摘はもうそこには居なく、抱えていたキュウべえも一緒に消えていたのでどこに行ったのかと辺りを見渡した。だが見渡しても居なかった、日向は七海を待たせている事を思い出しすぐさま七海の所へと走って行った。
静かになった空間。柱で隠れていた菜摘が鞄から隠したキュウべえを出し再度確認していた。
「ねぇ、本当にどんな願いでも叶うの?」
「もちろんだよ、なんだって叶えてあげる。君が望む“お兄さんと同じ希望ヶ峰学園の本科に通いたい”のもさ。───九頭龍菜摘、君はその祈りでソウルジェムを輝かせるかい?」
「……………決まってるでしょ」
───私の願いを叶えてよ、キュウべえ。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
「ご、ごめん七海! と、トイレ行ってて遅くなった、居なくなっててすまん!」
「………むぅー…、日向くんが居ないから10曲以上もプレイしちゃったよ」
「………ちなみに難易度は?」
「全て難易度鬼でフルコンボした!」
「ですよね!」
「………さてと、まだまだ新作ゲームあるから付き合ってくれるよね?」
「……やっぱり怒ってるか?」
「怒ってないよ。ただ、日向くんと一緒に遊びたいのがまだまだあるからね。夜の七時に帰れると思わないでね!」
「やっぱり怒ってるよな七海!?」
日向は急いで七海の元へと戻ってきてなんとか嘘をついたが、七海は急に居なくなった日向に最初はムスーッと頬を大きくしていたが、日向とまだまだゲームをすると決めると目を輝かせ顔も元気いっぱいになっていた。
夜の七時半ごろには、沢山遊んで笑顔の七海と七海に付き添い疲れ気味の日向になっており、明日は土曜日だが日向の為に七海がここまでと言ってその日はそれぞれ帰ることにした。
「それじゃ、またな七海」
「うん、また明日!」
「おう…、明日も遊ぶ気なんだな……」
「日向くんが約束破るから、明日も一緒に遊んでよね」
「あぁ、分かった分かった! 一緒にまた遊ぼうな!」
「うん、約束だよ」
日向が現在住んでいるアパートに向けて帰って行き、それを見届けた七海は寄宿舎に向かう前にスマホを取り出しLINEを開いた。
そして画面に映し出されている内容は、こう書かれていた。
[日向くんを見失っちゃった。役割を果たせなくてごめんね]
[こっちも日向クンをキュウべえと接触させてしまったから。ごめん七海サン]
「みゃーう」
「あ、エイミー! また来たんだな」
日向が住んでいるアパートに辿り着くと、近所から可愛がられてる野良猫の【エイミー】が居た。最近は特に日向の住むアパートに滞在しており、特に日向に懐いている。
「みゃーん」
「お、気付いたか? じゃーん、エイミーの好きなチキン味を買ってきたんだ。ほら、どうぞ」
「にゃぁ」
「美味しいか?」
「ウニャウニャ」
「……あ、早く課題して風呂入んねぇと…。それじゃ、またなエイミー」
「…みゃーお」
エイミーから離れ住んでいる部屋に入っていった。エイミーは悲しげに鳴いていたが、自信が最近寝ている寝床へと向かいゴロゴロと鳴きながら眠りに入った。
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バキバキッ…グシャリ、クチャクチャ…ゴクリッ。パリンッ…!
とある魔人結界の最奥。まるで骨を折るような、何かが潰れたような、何かを咀嚼するような、何かを飲み込むような。何かが壊れるような。魔人の足元の血だまりと一緒に、そんな音が結界内に響いていた。
そんな状況の中、結界内にある物で身を隠している花村は酷く身体を震わせていた。
「あっ………ぅ…っ、やっぱりあの時、意地でも二人を止めていれば……っっ…」
花村は涙を流しながら後悔していた。見つけた魔人がとてつもなく強い魔力を持ち、やめておいた方がいいと二人を説得させていればこんな絶望的な事にはならなかった……と。
終里がいつものように魔人の元へと突っ走って行き、弐大と共に追いかけたが最奥には魔人しか見当たらず、魔人の周辺には終里が身に付けていた物が散らばっているが終里自身は何処にも居なかった。
二人は何があったのかをすぐに理解し、弐大は花村に逃げろと伝えたが花村はその場で怖気付いてしまっていた。魔人が二人に気付き襲いかかるが弐大がその攻撃を抑え、急いで逃げろと必死に伝えたが花村は逃げるなら一緒にと反論した。
弐大は渾身の力を込めて魔人を遠くへと吹き飛ばし、花村に共に逃げても二人共殺られる可能性が高いのと、終里を殺した魔人を倒さなければ終里が報われないと告げ、吹き飛ばした魔人の元へと攻撃して行った。花村は仕方なく逃げ隠れ弐大の援護を遠くから始めた。
………だが、結果は魔人に隙を突かれ弐大もこの世を去ってしまった。花村はその光景を目の当たりにして、逃げようにも足がすくんで動けなくいた。
「は、早くここから出ないと……」
…ドチャァッ!!
結界から出ようとした花村の前に、弐大の腕が勢いよく上から地面に落ち赤い鮮血を広がせた。上から唸り声が聞こえ花村がゆっくり顔を見上げると、顔が返り血で濡れて歯の隙間から紅く光沢のある糸が垂れており、花村をまるでやっと見つけた獲物のように目を絶望的に輝かせている魔人が居た。
「う、うぅぅ……、うわああああああああああっ!!」
花村は心の底から叫び声が溢れ出し、頭の中で終里や弐大と共に魔人退治に明け暮れる日々の記憶や、クラスが一つにまとまった時にした楽しいパーティの記憶。様々な記憶を頭の中で浮かばせていたが、どの記憶よりも一番花村の頭の中を埋めつくした記憶は……。
『あぁ、そうだね…。じゃあ、それまでは…、花村食堂を潰さないように頑張らないとね』
『……大丈夫だよ。母ちゃんは強いんだ。病気なんかに負けないって……』
花村が卒業するまで一人で花村食堂を潰さぬように切り盛りしており、花村が希望ヶ峰学園に行っても心配しキュウべえに願いを叶えてもらい、元々病弱だった花村の母親だった。
「…お母ちゃあああああああああんッ!!!」
何も響かなくなった結界の最奥。その地面には使い魔が弐大達が身に付けていた物を丁重に箱にしまい最奥から去る所を魔人は見つめており、魔人しか居なくなった場所は、まるで深い絶望に堕ちてもう戻れなくなった嘆きを表すかのように、魔人の雄叫びが響き渡った。
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✦・─────────────────────・✦
─第一話─
〖はじまりの奇跡〗
終わり
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─あとがき─
ここまで読んでくださいありがとうございます。
一応今年の一月から書き始めましたが、小説初心者なので色々と書き直したり工夫したりして大変でした。
ストーリーとしては最初に書いた通り『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園- 絶望編』を主軸に『魔法少女まどか☆マギカ』や『scene0』等の設定が含まれている感じで、進んでいきます。
オリジナル展開も含みますので、飽きないと思います!………まぁ書いてる人が絶望的に絶望が好きな人なので…
終里赤音、弐大猫丸、花村輝々は本当はマミさん立ち位置にする予定でしたけど、少し変えて一話退場になってしまい誠にすみませんでした。
オリジナルキャラクターである【谷崎 薫】(たにざき かおる)君は“とある人物”と“とあるモブ”をモチーフとしています。予想してみてください。谷崎君以外にもこれから出てきますが、基本的にサブキャラクターばっかりです。
現状の日向君達のプロフィールを置いときます。(谷崎君も含みます)
─日向 創─
希望ヶ峰学園に通う予備学科生徒
昔から希望ヶ峰学園に憧れを持ち、今でも本科に行く事を諦めていない
[プロフィール]
性別︙男性
─狛枝 凪斗─
希望ヶ峰学園に《超高校級の幸運》として通う本科生徒
絶望的な状況下でも、仲間と希望の力を信じている
絶望や凡人、予備学科をとても嫌っており、平然と悪口を放つほど嫌っている
予備学科嫌いだが、日向だけにはどことなく優しさがある
爽やかな顔をしつつ厳しい事も言うが、本人に悪気はないらしい
[プロフィール]
性別︙男性
願い事︙???
固有魔法︙???
属性︙闇
武器︙盾(左側の手首らへん)
ソウルジェムの形/色/位置︙ひし形/碧色/手の甲(左側)
─七海 千秋─
希望ヶ峰学園に《超高校級のゲーマー》として通う本科生徒
77期生のB組の学級委員長であり、皆と仲が良いが特に日向と仲が良い
謎の行動をする狛枝と不思議のやり取りをしている
[プロフィール]
性別︙女性
─九頭龍 菜摘─
希望ヶ峰学園に通う予備学科生徒
兄である九頭龍冬彦と同じ場所に立つために、本科に通うためなら手段を選ばない少女
基本的に授業や休憩時間は日向と共に受けている
日向と共に魔人結界に入った時にキュウべえと出会い、日向が去った後キュウべえに願いを叶えてもらった
[プロフィール]
性別︙女性
─終里 赤音─
希望ヶ峰学園に《超高校級の体操部》として通う本科生徒
戦いと肉が大好きで、いつも弐大と戦い(トレーニング)をしているか、花村に作ってもらった肉を食べている
魔法戦士の活動は弐大と花村の三人で組んでる
とある魔人と戦おうとして不意打ちを食らい、命を落とした
[プロフィール]
性別︙女性
願い事︙もっと強くなって、強ぇ奴と戦いてぇ!
固有魔法︙強化(一部の体の部位を強化する)
属性︙木
武器︙グローブ
ソウルジェムの形/色/位置︙六角形/赤色/胸元
─弐大 猫丸─
希望ヶ峰学園に《超高校級のマネージャー》として通う本科生徒
優れた体格をしている人物が居たら、その人物に会う種目をトレーニングさせ、一流のような実力を持たせる。現在は終里のトレーニング(戦い)をしている
魔法戦士の活動は終里と花村の三人で組んでる
終里の仇と花村を逃がす為に魔人と戦ったが、結果は殺られてしまった
[プロフィール]
性別︙男性
願い事︙今後も優れた人物を育てていきたい
固有魔法︙激励
属性︙水
武器︙手袋
ソウルジェムの形/色/位置︙長方形/青色/ベルト
─花村 輝々─
希望ヶ峰学園に《超高校級の料理人》として通う本科生徒
セクハラ発言をするが、皆に愛されている変態
魔法戦士の活動は終里と弐大の三人で組んでる
終里や弐大の死を目の当たりにして逃げようとしたが、魔人に見つかってしまい最後は母親の事を叫んで命を落とした
[プロフィール]
性別︙男性
願い事︙病弱なお母ちゃんを元気にしてあげて
固有魔法︙治癒
属性︙火
武器︙フライパン
ソウルジェムの形/色/位置︙コック帽/赤色/腰のバンダナ
─谷崎 薫(たにざき かおる)─
予備学科生徒で日向と同じクラスであり、日向の友人でもある
小学校から一緒でほぼ幼なじみみたいだが、交流を始めたのは予備学科から
周りから日向のセコムと言われる程、日向を心配し続けている
[プロフィール]
性別︙男性
容姿︙黒髪の襟足長めで黄色の瞳、勉強時だけ眼鏡をかける
今回はここまでです。次回はオリジナルストーリーも含んでいますので、楽しめたら幸いです。
ここまで読んでくださりありがとうございました!