桜舞う、4月。
一般的には出会いや別れの季節と称される多感な季節。 しかし、本日から高校二年生という佐白狐野にしてみれば、さして心踊る変化があるわけではない。
クラス替えというちょっとした儀式によって、通う教室が1階から2階にコンバートされる程度。中だるみという言葉がしっくりくる緊張感のない新学期を迎えていた。
???「やっほー、佐白くん」
窓際後方。出席番号順に振り分けられた机へ鞄を置いたところで一人の男子に声をかけられた。中肉中背。肩まで伸びた髪は先に軽くパーマがかかっていてお洒落な感じ。
佐白「おはよう、颯太」
一年から継続して同じクラスになったらしい、蒲田颯太だった。
中性的な顔に浮かぶ柔和な笑みは非常に爽やかで、年上お姉さんの心をうまい具合にくすぐりそうだなぁと佐白は見るたびに勝手に想像している。
蒲田「また一年よろしくね。いっやー、それにしても運がいいね、僕ら」
佐白「運?ああ、結構一年の時と同じメンツが多いみたいだな」
人間関係を再構築するのにさして苦労もせずに済みそうだという意味では、確かに幸運かもしれないと思い同調したが。
蒲田「またまた~~、とぼけちゃって。そういう意味じゃなくてさ……ほら?」
流し目を作った颯太から脇腹を小突かれる。その動作に思い当たる節は一つもない。
佐白「ほらって何が」
蒲田「え、もしかして、まだ知らないの?クラス分けの名簿見てきたんでしょ⁇」
佐白「見たけど、なんだよ?宝くじの当選発表でも兼ねてたのかあれ」
5組の皆さんにはもれなく金一封をプレゼントです、とか。だったら小躍りして喜ぶレベルだが、、平凡な私立高でそんな都合の良い展開を期待するのは馬鹿馬鹿しい。
蒲田「な、なななな、君って男は…」
佐白「なんだよ」
蒲田「何も知らない佐白くんに教えてあげよう!」
佐白「なに?気になるから早くしろ」
蒲田「___________」
コメント
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かくの上手すぎ… そんけーするんだが…!