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◻︎配属
入社して研修が終わって、俺は希望通りに【新規事業開発室】に配属された。
研修の間も、LINE交換した女の子から食事の誘いや飲み会の誘いもあったけど、全部忙しいからと断った。
あまりにもたくさんの誘いがあるから、架空の彼女でも作ってそれを理由に断ろうかと思ったけど、やめた。
もしもその話が森下さんに伝わったら、『結城には彼女がいる』ということになって、俺が気持ちを打ち明けた時の信憑性が薄れるような気がしたから。
_____好きですと言う時は、真っさらな俺でいたい
なんて考えてるからだ。
配属されたその日、新入社員として俺、来週から育休に入る進藤さん、それから森下さんのチーフ昇格の紹介があった。
総勢30名ほどの人間が取り囲む中、俺たち3人は前に出るように言われた。
それぞれがそれぞれの挨拶をした。
_____まさか、最初から森下さんの横に並べるなんて!
これも何かの運命かと舞い上がった俺は、意気揚々と森下さんにむかって挨拶をした。
「森下さん、いえ!チーフ、今日から一生懸命頑張りますので、ご指導よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。
「なんか、えらく気合いが入ってるけど、空回りしないようにね。それから、新人の指導は指導係がやるから、私は関係なし」
そう言うと、さっさと自分のデスクへ戻ってしまった。あまりにもそっけない態度だった。
「あの、あの時はありがとうございました!」
「なんのこと?」
_____まさか、忘れられてる?
トホホ。
「よお!新人君!俺が君の指導係の三崎亮太だ、よろしくな」
にこやかに先輩が握手をしてきた。
「はい、あ、よろしくお願いします」
「あのさ、森下さんの知り合いなの?」
「はい、そのつもりだったんですけど、なんか忘れられてるっぽいんで…」
「あの人はそんな人、悪気はないんだろうけどね、人の名前と顔を記憶するのが得意じゃないらしい。もちろん、仕事関係はなんとかおぼえてるみたいだけどね。だから、よほどのことがないと、おぼえてもらえないと思うよ」
「よほどのことですか?」
_____あれは、よほどのことにならないんだ
「そ!まぁ、同じチームになったら嫌でもおぼえてもらえるから、そうなるように頑張るんだな」
「チーム分けがあるんですね、わかりました、頑張ります」
三崎先輩の言葉に希望が見えた気がした。
「さてと、まずはこの部署の人間関係と仕事の仕組み、やり方を教えていくから」
「はい、よろしくお願いします!」
「若いって、いいねぇ!元気でさ」
一際大きな声で返事をしたからか、森下さんと、森下さんのことを教えてくれた進藤さんがこちらを見て何かを話していた。
_____進藤さんが俺のことを話してくれてるのかな?
なんて思ったから、背筋を伸ばして歩いた。
けど、首を横に振って『わからない』という素振りをする森下さんが見えて悲しくなった。