テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
そばに寄ると、「待ってたんだ、舞」と、彼から声がかけられた。
「うん……何?」
本当はドキドキと胸が高ぶっているのに、わざとそっけなく返した。
「……おまえのことが、忘れられなくて……」
そう口にして、私を見つめる春樹に、
「うん……」と、頷いて返す。
「……俺と、やり直してくれないか?」
「……うん」と、もう一度頷いて、「いいよ……」と、短く付け足した。
──ついこないだまでは別れて当然とも思っていたのに、一ヶ月ぶりに見た彼氏のかっこよさと、長い間いっしょにいた懐かしさも相まって、つい気持ちがほだされてしまっていた。
別れてから、また元サヤに戻ったっていう話をよく聞くけど、こういうことだったんだと……。一度離れると逆に離れがたく感じてしまうみたいで、やっぱり付き合いが長いと、簡単には解消できないのかもしれなかった……。
「よかったよ……舞。俺も、悪かったと思ってるから。お詫び代わりに、これからデートでもしないか?」
言いながら、私の腰をぐっと掴んで引き寄せて、腕を組んでくる。
こんな風に彼と腕を組んだのってどれくらいぶりだろうと感じると、久々のことにそれだけでときめく。
(我ながら、ちょっと単純かも……)とは、思う。
だけど春樹と別れて、また誰かと最初から恋を始めるよりも、見知った彼とやり直した方がいいのかもと、一方で考えてしまう。
ぐるぐると頭の中でいろんなことを考えながら、スーツの肩に寄り添う。
「ねぇ、どうして春樹は、やり直そうって思ったの?」
ふと彼の気持ちが聞きたくなって、そう尋ねてみる。
「……一ヶ月おまえと連絡も取り合わないでいたら、なんか妙に恋しくなったんだよ……」
すると彼は、照れたように言って、
「言わせんなよ、バカ」
と、笑い顔を向けた。
「そっか……」頷いて、そうだ──このニッて笑う彼氏の表情も好きだったんだと、ふと思い出した。
彼を好きだと感じることさえ、なんだか新鮮に思える。
「……おまえは、どうなんだよ?」
「私? 私は……」
あんなこともこんなこともあって……と頭を巡らせると、気に入らないようなこともあったけれど、お互い様なところもあったかもしれないし、
これからまた新しい気持ちで、長年付き合ってきた彼とは関係を続けていければ、それがいいのかもしれないと思い至った。
「……。……私も、春樹のこと待ってたよ……」
口にすると、そんな風に待ちわびていたような気持ちが本当に胸を込み上げてきて、元サヤも悪くないのかもしれないと感じられるみたいだった……。
コメント
1件
あおいです🌷 「待ってたんだ、舞」——再会シーンからもうドキドキしました。別れて一ヶ月で「忘れられなくて」って言われたら、私も同じようにほだされちゃいそう…。でも舞が「私も待ってたよ」って口にした途端、本当にそう思えてくる感覚、すごくリアルでした。また寄り添いたくなる気持ちも、長年連れ添ったカップルならではの説得力がありますね。戻るのも悪くないかも…と思わせる、優しい空気感が素敵でした✨
312
ホクロの住民
36
278
#学校
より
84