テラーノベル
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「デート、どこに行こうか? おまえは、どっか行きたいところとかあるか?」
デートのリクエストなんて、まるで聞いてくれたこともなかったのにと思いつつ、
「"ラ・レーヌ" のフレンチが食べたいな……」
それぐらいのわがままは言ってみてもいいかなと、ちょっと高めなお店を提案してみた。
「ああ、おまえが前から行きたいって言ってた店か。いいよ、行くか?」
「ホントに!?」まさか本当にOKしてくれるなんてと、信じられない思いで聞き返す。
「ああ……」と、春樹が頷いて、
「これからは、おまえの行きたいところにも、たくさん連れてってやるからな」
なんて、耳元に甘く囁きかける。
(たったひと月で、あの春樹が、ここまで変わるだなんて……)
なんだか不思議なくらいにも感じられる。
「再会に乾杯」
いつにないキザなセリフを吐いてグラスを合わせる彼に、(今度こそは、上手くやっていきたいな)と、心の中で誓った。
お店の料理はさすがにとっても美味しくて、幸せな気分に浸る。
「ありがとうね、連れてきてくれて」
お礼を口にすると、
「おまえが喜んでくれて、俺もうれしいよ」
彼から爽やかな笑みが返された。
その笑い顔が、締めたワインレッドのネクタイにはまって、いつにも増して素敵に見える。
あのネクタイって、そういえば私がプレゼントしたんだっけ……と、思い出して、
こんなにも春樹のことをイイ男にも感じたのなんて、一体どれくらいぶりなんだろうと思った──。
──お店を出て、手を繋いで歩きながら、
「この後は、俺の部屋に来るだろ?」
春樹がボソッと訊いてくる。
「うん……」と、小さく頷く。
あんなに行き慣れた部屋なのに、今後の展開を考えると、なんだか少し照れくさくもなってくるみたいで……。
……繋いだ手がにわかに汗ばんでくるのを感じつつ、何度も通い慣れた道をマンションへ向かう。
エントランスを抜け、エレベーターの前まで行くと、いつものことながら上階に行ってしまっていた。
「ここのエレベーターって、いつ来ても上に行ってるよね」
点滅する回数表示を眺めて、そう呟くと、
「階層とエレベーターの数が、合ってないんじゃないのか」
春樹が口にした。
階数が高い割りに部屋の間取りが広めで、一階層当たりの戸数があまり多くはないここのエレベーターは、全部で三基あった。
だけどその内の一基は、地下駐車場に通じているため、暗黙の了解で地階利用者の専用になっているとかで、フロアへ上がる時に稼働しているのは、その実二基だけになっていた──。
コメント
1件
おお、14話読んだわ。春樹くん、まさか「おまえの行きたいところに連れて行く」って言うなんて、めちゃくちゃ成長してるじゃん! 前のエピソードからガラッと変わってて、私も「えっ同じ人?」ってびっくりしたよ。ネクタイのプレゼント思い出すシーンと、エレベーター待ちの他愛ないやり取りが、逆に二人の距離が縮まった証拠みたいでじーんときた。続きが気になるわ🔥
かの
69
林檎
278