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<凌太>
「すごーい。めちゃくちゃ便利」
瞳はフロアガイドを見て楽しそうにしている。
マンションからそれほど離れていない場所にある商業複合施設の中にあり、存在は知っているが初めて入った事を伝えると「ありえない」と言って笑っている。
飾り気のないシンプルなデザインで統一感もありなにより瞳が使いやすいということで、食器類と鍋などの調理器具をカゴに入れていく。
「まだ実感はないけど寒くなったら使おう」
そう言って、土鍋をカゴに入れる。
未来の約束がまた一つ増える。
「夜、何を食べる?」
「んー、何だろう?オムライス?」
急に聞かれても何も浮かばず、とっさに出たのがオムライスとか自分でも笑ってしまう。
学生時代にチャチャっとつくるね~と言って作ってくれたオムライスを思い出す。手慣れていてご飯が卵に隠れていく所が凄いと思ってみていた。
「わかった。一旦荷物を部屋に置いてからスーパーに行こう」
たしかに大きなショッピングバッグが2つになりこのままではスーパーに行っても邪魔になりそうだ。
自炊をしないから米も炊飯器もない。スーパーの前に家電ショップに行った方がいいんだろうか?
「米も炊くものもないぞ」
「今日はレンジでチンして作っちゃう。でも、今度は高級なおいしく炊ける炊飯器を買いに行こうね」
「高級なおいしく炊ける炊飯器ね」
そんな話をしながら部屋に荷物を置いてからまたエレベーターに乗りこんだ。
「ちょっとしたリゾート地に来た感じね」
「リゾート地?」
「なんていうか、なんでもあってリゾートホテルっぽいっていうか。今は実家で戸建てだし、その前は普通のマンションだったから・・・なんていうか・・・連続で買い物に出るとちょと面倒というか。凌太はあまり感じない?」
「水とかは運んでもらうし、外食だし、コーヒーのカセットも通販だしな。考えたこともなかった」
急いで車を出そうとしたときも感じたが、瞳とこの先があるのならタワーマンションを卒業するのもいいかもしれない。
俺がカートを押して瞳が色々と物色しながら「凌太のお金だからいい卵と有機野菜をメインに」と言いながら品物をカゴに入れていく。
バタバタしていて忘れていたが、検査結果が昨日メールで届いていた。
メールを開くときは緊張したが結果を見た瞬間、体中の力が抜けた。
瞳の元旦那の話を聞いたときはさすがにぞっとした。
元旦那の場合はゴムもつけずにヤっていたということだったが、だとしてもこんな身近で感染した話を聞くと不安になる。
もうあんな風に現実から逃げることはもうないし、これ以上大切な人に危険な目にあわせたくないし、悲しませることもしたくない。
「ねぇ?」
考え事をしていると瞳が俺の顔を覗き込んでいた。
「アイス食べる?乳固形分15%のやつ」
無邪気なところ、変なこだわりがあるところ
すべて愛してる
「ああ、乳固形分15%のやつな」
ふふふと微笑みながら各フレーバーを次々と投入していく。
「凌太の冷蔵庫ってクラッシュアイスしか入ってないからこれくらいイケるでしょ」
「ああ、瞳専用にしてもいいくらいだ」
「でた、私に甘い凌太」
レジに向かう途中で「いけない!米」と言って急いで米コーナーに行くと5Kgの魚沼産こしひかりをカートの上にのせた。