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<瞳>
二人でカートを押して買い物をするのは凄く久しぶりで、もちろん正人と結婚していた時は二人で買い物もしたし、スーパーに勤務していた正人にラインをすれば必要なものを買ってきてもらうこともあった。
でも、凌太とこんな風に歩いていると学生時代を思い出す。
不安もあったけど、素敵な日々だった。
レンジでご飯を炊くために耐熱用の容器に米を二合つけこんでおく。
その間に購入した大量のキッチングッズを収納していく。
棚の中はスッカスッカで簡単に収納ができた。
水につけたお米が30分たったのでレンジで過熱をする。
「レンジでご飯が炊けるなら炊飯器とかいらないよな」
「ダメダメ!」凌太の言葉につい反応してしまう。
「今の炊飯器はめちゃおいしく炊けるし、決めた時間に炊きあがるとか神でしょ。だから、こんど凄いの買いに行こうね」
「瞳に任せるよ」と言って笑う凌太を見て私も自然に顔がほころぶ。
洗ったレタスを凌太に渡すとボウルに食べやすいようにちぎっていく。
「この感覚懐かしいな」
「じゃあ次はコレね」と言って、スライサーと玉ねぎを渡すと凌太は皮をむいてスライスを始める。
私は鶏肉をトレイの上でハサミを使って切っていく。
ニンジンのみじん切りとサラダ用にスライスしたのこりの玉ねぎもみじん切りにしてチキンライスの準備をする。
「さっきまで何も無かったのに、キッチンがキッチンらしくなってるね」
「そうだな、俺の部屋じゃないみたいだ。だが、悪くない」
「えー悪くないの?」
「いや、とてもいい感じだ」
なんだか、ずっと笑ってる。
ここ最近は嫌なことが続いていたからこんな風に二人で笑えるのは
幸せだ。
レンジからご飯を取り出し、ラップをしてしばし放置する。
サラダのボウルにアボカドをカットしたものとトマトを入れると凌太がオリーブオイルをかけ始めた。
「なんか思い出してきたよ、あとはレモン果汁100%少々と塩少々だ」
「あたり~」
ご飯が出来上がったところでチキンライスを作り始める。
新しいフライパンは洗っても最初は少し塗料のようなにおいがするが、気持ちがいいほど滑りがよい。
「卵はいくつ?」の問に「4つ」と答えると凌太は冷蔵庫から卵をとりだしてボウルに割り入れていく姿が様になっているので「うまいね」というと「昔取った杵柄だ」と得意げに卵をボウルの端に叩きつけると殻が盛大に割れた。
オムライスを作っている間に凌太はサラダの盛り付けとペットボトルのお茶をグラスに注いでいく。
「ケチャップはどうする?普通にかける?ハートにする?」
「じゃあ、ハートで」
「キュン♡キュン♡って言ってね」
二人でふざけながら笑いながら作ったオムライスとサラダはとてもおいしかった。
リビングでコーヒーを飲んでいるときに、凌太がスマホの画面を見せてくれた。
そこには、各種性病の検査結果が表示されていてすべて”陰性”だった。
「良かった」
正人の件で本当に怖いと思ったし、嫌だと思った。
凌太は好きだけど、複数の女性の影が気になってしまった。
美優一人でうつった事を考えると、複数の女性の中に感染者がいる可能性が無いとは言えないと思ったから。
「キスしていい?」
真顔で聞く凌太がちょっと可愛かった。
「もしかして我慢してた?」
「そりゃね」
凌太の顔が近づいてきてついばむようなキスから徐々に深く深く口づけた。
「今日は健全な時間に帰ります」と言うと、笑いながら「健全に安全に送り届けます」と返事が来て二人で駐車場に向かった。
なんとなく、この車の助手席に馴染んできたようで心地よい。
「瞳」
名前を呼ばれてぐっすりと眠っていたことに気が付いた。
「ごめん寝てたね」
「色々あったんだ、疲れただろ。到着だ」
窓の外には見慣れた景色が広がっていた。
「気をつけて帰ってね」というと、頬にキスをした。
いい年して恥ずかしいとも思ったが、無性にキスをしたくなった。
車を見送って家に入るとお母さんが「デート」と確信をこめて言っている。
笑ってごまかそうとしたら「まだ、父さんには内緒にしておくから」とウィンクをされたが、そのウィンクが私より自然に上手にできていつ使ってるんだろうと余計な事を考えてしまった。
里子にラインで松本ふみ子の両親との話を報告して凌太にもお礼とおやすみのメッセージを送る。
しばらくするとメッセージを知らせる通知音が鳴り、スマホを見ると凌太からの[おやすみ]メッセージだ。そのメッセージを見ながら今日一日の事を思い出していると、Ryoからのメッセージ通知が入る。
[兄のストーカー女性の件はどうなりました?]
何となく嫌な言い方
[本人は入院しているようでご両親と会ってきました]
[そうなんですね、危険な感じでしたからむしろ両親の方がいいかもしれないですね]
別におかしな文章じゃないけど、引っかかることがあると何でもウラがあるんじゃないかと思ってしまう。
[Ryoさんは松本ふみ子さんと知り合いですか?]
引っかかっていたことを聞いてみた。オブラートに包むよりも直球の方がいい気がする。
[実は、松本さんの実家に太陽光パネルの営業に行ったことがあってその時に会いました。ただ、兄さんと知り合いだとは驚きました。奥山さんも兄と関係があるなんて思わなかったです。世間は狭いですよね]
太陽光パネル
確か甲斐Egの主任だった気がする。でも、そんな偶然ってある?
[本当ですね]
[じゃあ、訴えたりはしないんですか?入院中だとしてもキッチリと制裁をした方がいいですよ。僕はいくらでも相談にのります]
[ありがとうございます。その時はお願いします。」
やりとりを終わらせたくて「おやすみなさい」と送信した。
[おやすみなさい」の返事のあとに山茶花の花の写真が送られてきた。
営業先で松本ふみ子に会った。
だから、ふみ子は驚いた?
なんだかとてもざわざわする。