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自分の気持ちを理解してもらえない苛立ち、桜子の強引なやり方に遂に銀次郎は怒りを爆発させた。
「お前は金貸しに抱かれる言うことがどういう事なんか全く分かってないんじゃ!」
「…!ほらそうやって金貸しとか肩書きを盾に使って逃げようとする!私は…萬田くんの本当の気持ちが知りたいねん!」
「前にも言うたやろ、わしは腐っても金貸しなんや。それが無くなったらわしがわしで失くなるんや!」
「じゃあ、萬田くんはこれから一生誰かを好きになったり、誰かを愛したり…出来ひんって事!?」
「そうや!わしが金貸しの道選んだから、わしはこの仕事に命かけとるんや!」
「私だって夜の女として生きていくために命削ってるわ!」
「それやったらわしの気持ち分かるやろ!」
「そんなん分からへん!分かりたくもない…。」
「人生で欲しいもん全部手に入れようなんぞそんな甘い話あらへんのや。人間何か一つ得よう思ったら他のもん辛抱せなあかん、それがルールや。」
「そんなん…萬田くんが勝手に作ったルールやろ!?」
「はぁ…。こうなる事分かっとったから三年前わしはお前みたいな頑固で聞き分けの悪い女好かん言うたんや。」
「だって…自分が選んだ道のために好きな人と一緒にいる事諦めるなんて…私には出来ひんもん。」
「ほな本当の事教えたる。絶対上手くいく言うて一緒になってお互い身滅ぼした女と金貸しをわしはこの目でぎょーさん見てきたんや。」
「その人らと同じになるとは限らんやろ…!?萬田くんは何のために金貸しやってんの?何を守りたいん?何をそんなに恐れてるん!?」
「……やめろ!!!」
…………!
銀次郎の一際大きな怒号が響いた。
桜子に核心をつかれた銀次郎はうつむき、肩で息をしている。
問い詰められ、自分の中に長い間閉じ込めていた感情が溢れ出して抑えられなくなった。
……………。
少し間をおいて覚悟を決めたように銀次郎は口を開いた
「お前にそうなった奴らと同じ思いさせられへん…させたないんや。わしが選んだ道のせいでお前を傷付けてまう…。そんなとこ見たないんや。」
「萬田くん…。」
始めて聞く銀次郎の弱気な発言。
桜子はいつも何事にも動じず感情に動かされない銀次郎が自分の弱さをさらけ出し自分に向き合ってくれた事が何よりも嬉しかった。
と、同時にお金が原因で家族や住む家、安らげる場所を失った銀次郎の癒えない心の傷が見えた気がして、胸の奥が締め付けられるような気持ちにもなった…。
「私、そんなヤワな女やないよ…。」
「いや…お前は銭の怖さを分かってないんや。」
「私だって…人間のドロドロした汚いとこ、今まで生きてきて嫌と言うほど見てきた。お金で人がどう変わるかも知ってる!だからこそ…それを知ってる萬田くんが好きやねん!」
「…………。」
桜子の言葉に沈黙する銀次郎…。
…………
…………
…………
「……… 自分の欲望を満たすためだけのどうでもええ女やったら、今ごろお前に手出して抱いとる。お前が…大事やからこそキズモノには出来ひん。わしかて男の理性必死に保っとんのや。頼むから…分かってくれへんか。」
………!
銀次郎は少しだけ目の中を潤ませながら真剣に桜子の目を真っ直ぐに見てそう言った。
ミナミの鬼と呼ばれている人が涙を浮かべながら、真剣に自分と向き合い正直な思いを伝えてくれている…
それが銀次郎にとってどれだけ勇気のいる事だったのだろう…
そう思うと桜子の目にも涙が溢れた。