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それまで泣き言は言わず弱気な発言は絶対にしてこなかった銀次郎。
だが、その胸のうちにしまっていた過去の孤独や傷、どこにもぶつけようのない感情を少しだけさらけ出してくれた気がした。
桜子はそれが嬉しくてたまらなかった。
桜子の目に涙が溢れる。
「なんでお前が泣くねん…。」
「そう言う萬田くんだってさっきちょっと泣きそうになってたやん…。」
「そんなんと違う…。」
「またそうやって強がるんやから。」
「強がってへん。」
「なんか…。私ら小学生の頃と全然変わってへんね。」
桜子は小学生の時に銀次郎とあの約束をした日、同じようなやりとりをした事を思い出した。
桜子に差し伸べられた手を突っぱね続ける銀次郎。
必死に強くあろうとする少年の姿が思い出された。
人の優しさを受け入れるのが怖くて、自分が強くある事で頑なに自分を守ってきたのだと思うと。
桜子は銀次郎の事が愛しくてたまらなくなった。
と、同時に自分自身も銀次郎と似たような生き方をしてきた事に気付いた。
「…お前はあの頃から強引やったな…。」
「確かに…笑。 私な家族に捨てられて今までずっと一人で生きてきたって思ってたけど…そんな事無かったって今気付いた。」
「…人間どうせ結局みんな一人やぞ…。」
「ううん、そんな事ないよ。大阪に帰ってきたのもあの日の約束破ってしまった萬田くんとまた会いたいって、そう思ったから。そしたら大阪で色んな人に助けてもらってそこで人の優しさ知れた。 自分のクラブ開こうと思ったのも萬田くんと再会してもっと強くなろうって思えたから。そう思ったら…私って全然一人じゃないなって。」
「米原…。」
「強引なやり方しかできんくてほんまにごめん…。」
そう言うと桜子はお互いの手首にかけられていた手錠の鍵を外した。
カチャッ…
「やっと外してくれたな。ほんまに…お前はいっつも強引過ぎるんや。」
「どうしても萬田くんの側に居たくて…。 私が今こうなれてるのも萬田くんのおかげやから。」
「やめろ…わしは別に何もしとらん…。」
「私が勝手にそう思ってるだけやからいいねん。」
グイッ…
桜子の体は銀次郎に力強く引き寄せられた…
「え……!」
突然のことに固まる桜子。
銀次郎の腕の中に包まれていた。
「ま、萬田くん…?」
「今のお前は自分の力で強うなってきたんや。わしのおかげなんかやない。そやから…もっと自分の力に自信持たんかい。」
銀次郎は桜子を抱きしめながら、不器用だが真剣に自分の思いを伝えた。
「グスン…。」
これまで色んな事を経験してきた自分の努力を銀次郎は全て分かってくれている気がした。
それがあまりに嬉しくて再び泣き出す桜子。
「そうやって泣くとこは好かんけどな…。」
銀次郎は呆れたように桜子を抱きしめながら頭を撫で慰めた。
「ゔぅ…もうやめてよ…。余計に一緒にいたくなってしまう…!」
「さっき”自分は一人やない”って気付いたって言うとったやないか。別にずっと側で一緒におることだけが…お互いを思っとる事の証明やないやろ?」
「ゔぅ…。だじがにぞうやげどぉ…
(翻訳:確かにそうやけど)」
「それに…。」
「それに何?グスッ」
「わしはどこにも行かへん。
その… お前の事思っとるから…心配すな。」
………!
それに答えるように桜子は自分を抱きしめている銀次郎の背中に手を回し強く抱きしめ返した。
「でも…一緒にはなってくれへんのやね…。」
「今のわしにはそれは出来ひん。」
「分かった…グスン…。私も…自分の店頑張る。 」
「おう。それでこそ米原や。」