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目を覚ました瞬間、わたしは確信していた。
ここは、あのゲームの世界だ。
壁の装飾、香るシーツ、朝日に揺れるレースのカーテン──すべてが完璧に作られた、あの世界そのまま。
……いや、“あの世界”なんて言い方は生ぬるい。
この『聖なる刻のロゼリア』は、わたしが血と涙と時間を費やしてプレイし尽くした、愛してやまない人生の一部。
その中でも、最推しは第一王子ルシアン=サフィラ様。そして、ラスボスは悪役令嬢・クロエ=オルディア。
彼女を断罪し、王子と結ばれ、民に称賛される──それが、聖女ユリアの”正しい結末”。
わたしはそのシナリオを完璧に理解している。
だからこそ、今ここにいる自分が”ユリア=フォールン”だと知ったとき、思わず笑いが込み上げた。
(ふふっ……選ばれたんだ、わたしが)
転生系乙女ゲームで、主人公になれる確率なんて天文学的だ。
でも、なれた。神様ありがとう。絶対にバッドエンドなんて迎えない。
わたしは聖女。
誰よりも美しく、優しく、王国に愛される存在になる。
──すべては、“物語通り”に進めばいいのだから。
部屋の扉がノックされる。
「失礼いたします、聖女様。王からのご挨拶です」
来た。初イベント。
ここから、すべてが始まる──
(神託? 魔法? クロエ? ぜーんぶ知ってる。
この世界の勝ち方は、わたしがいちばんよく知ってる)
これはわたしの世界。
わたしが、ユリア=フォールンとして、正しく生き直す世界だ。
──ようこそ、攻略ルートへ。
全部、全部、なぞってあげる。
完璧な“正解ルート”を。
たとえその先で、誰かが泣き叫ぶとしても──関係ない。
だってこれは、“ゲーム”なんだから。