「🌸〜!ほら見てこれ、めっちゃ可愛くない!?ほらほら、このちっちゃい靴!ベビーのくにのちっちゃい王子様みたいじゃん!」
開店5分でテンションMAX。
及川の方が🌸よりももっと。
「透、靴はまだ早いって言ったでしょ。新生児は履かないよ〜」
「えっ、そうなん?…え、じゃあこれも違う?これも?」
さっきから彼が抱えてくるものは、ほぼ“サイズ合わない”か“今は使わない”ものばかり。
「透、落ち着こ?」
「いや落ち着けない!だって俺、パパになるんだよ?ちゃんとしなきゃって…のに俺なんも分かってない…!」
急に真剣顔になって、わちゃわちゃスイッチがオフになる。
「透はちゃんとしてるよ。分からないことは一緒に調べたらいいじゃん」
そう言って笑うと、及川は一気にほわ〜っとした顔で緩む。
「……好き。はい、もう一生ついていきます俺」
「急に宗教みたいなノリやめて」
そこへまた別の棚で可愛いものを見つけて即復活。
「🌸!!これ見て!クマさんのガーゼ!なにこれ、俺が欲しい!」
「子供用」
「え、俺はダメなの?」
「ダメ」
でもしれっとカゴに入れてる。
哺乳瓶コーナー
「ねぇねぇ、どれが良い?なんか種類多くない?俺もう分からん…!」
「じゃあこの2つに絞ろっか。透はどっちが好き?」
「えっ、俺?……じゃあこっち!なんか色が可愛い」
「見た目で決めたでしょ」
「はい。すみません。でも可愛さ大事じゃない?俺らの息子だよ?可愛いの持たせたい」
“息子”と言った瞬間、自分で照れて耳まで赤くなる。
「……透、今の言い方可愛い」
「ちょ、やめて!?惚れ直すのやめて!いややめないで!」
わちゃわちゃが止まらない。
「ねぇ🌸、これは買わないの?」
及川が差し出したのは“抱っこ紐”。
「あそうだった。でもそれ前向き抱っこできるやつじゃないよ?」
「前向きがいい!だってさ〜、俺に似てめっちゃ可愛い顔するかもしれないんだよ?みんなに見せびらかしたいじゃん!」
「透の“見せびらかしたい”は嫉妬深いくせに矛盾してるんだよな〜」
「え、見せるのは俺が抱っこしてるところまでだから。そこから先はダメ。俺以外に“可愛い〜”とか言わせない」
「はいはい、嫉妬深いパパ」
「やだ、なんで嬉しそうなの🌸!」
レジでもずっとそんな感じで、店員さんにクスッと笑われる。
大きな袋を下げて歩きながら、及川がぽつり。
「俺さ、選手って言ったって凡人だし不安だらけだけどさ…」
「うん」
「今日みたいに🌸と一緒なら、大丈夫な気がするんよね」
横顔はいつもより少し大人っぽくて、ふわっと優しい。
「大丈夫だよ、透はいいパパになる」
「……じゃあ頑張る。努力系パパになる!」
そう宣言した直後、
「でも帰ったらまずこれ広げよ!クマガーゼ!」
結局わちゃわちゃに戻るのが“らしさ”だった。
コメント
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え、もう好きすぎる