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ナムギュの唇は乾いていて、ひび割れていた。ミンスはそこにもう一度、ゆっくりと唇を押し当てる。
「……っ」
ナムギュの指がピクリと動いた。
拒絶の動きか、それとも別の何かか。
「……お前、マジで気持ち悪い」
かすれた声でそう言ったナムギュは、ミンスを突き放さなかった。
ミンスはナムギュの肩に指を食い込ませる。
「……僕が、君にされたこと、全部返すよ」
「は……? 何言って――」
言葉を最後まで言わせることなく、ミンスはナムギュを押し倒した。
ナムギュの体は軽かった。
いつも自分を見下ろしてきた男が、今は真下にいる。
「僕に敬語を使えって、いつも言ってたよね」
「……」
「なら、君も使ってよ。僕に」
ナムギュの目が見開かれる。
ミンスは、その表情が心のどこかで痛快だった。
「っ……冗談だろ?笑」
「冗談なわけないよ」
ミンスはナムギュの顎を掴み、無理やり上を向かせた。
「僕は君に、ずっとバカにされて、見下されて、利用されて……」
ナムギュの喉が、ごくりと鳴る。
「……もう、終わりだよ」
ミンスは、ゆっくりとナムギュの胸元に手を滑らせた。
乱暴にジャージのファスナーを下ろす。
「お、おい……っ、お前マジで、」
「君は、もう僕のもの…」
ナムギュが初めて見せた怯えた表情に、ミンスは不器用に微笑んだ。
「…僕から逃げられるなんて、思わないでよ」
ナムギュの胸元に触れた指先が、微かに震える。
それを誤魔化すように、ミンスはさらに強くナムギュのジャージを掴んだ。
「……僕は、もう君に怯えない」
ナムギュの肌は汗ばんでいた。クスリのせいか、それとも――
「……チッ、なぁ」
ナムギュが、乾いた唇を舐めながらミンスを睨みつける。
いつもの余裕は消えていたが、それでも簡単には折れないらしい。
「お前さ、本気で俺をどうにかできるって思ってんの?」
ミンスは返事をしなかった。
代わりに、ナムギュの顎を掴んだまま、無理やり顔を近づける。
「痛ッ……!」
「今まで僕にしてきたこと、忘れた?」
ミンスの目は冷たく濁っていた。
ナムギュは初めて、その目にゾクリとした寒気を覚える。
「お前、ほんとにどうかして――」
「僕がどうかしてるんじゃないよ」
ミンスは、喉の奥で小さく笑った。
「君が僕を、こうしたんだよ」
ナムギュは息を呑んだ。
いつもヘタレで弱々しく、怯えてばかりいたミンスが、今は上にいる。
それが、妙に現実味を帯びて感じられた。
「……なぁ、ミンス」
ナムギュは、喉を鳴らして笑う。
「やっと、俺と同じとこまで落ちたか?」
挑発するようなその声に、ミンスはそっとナムギュの頬を撫でた。
「違うよ、ナムギュ」
囁くような声で、ミンスはゆっくりと唇を近づける。
「僕は君より、もっと深いところまで堕ちるよ」
そして君を、そこに引きずり込んでやる。
そう告げるように、ミンスはナムギュの唇を塞いだ。