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僕、『神内悠火(じんないゆうひ)』は、昔から身長が高かった。
小学六年生の頃には、平均身長よりも遥かに高くなってしまった自分の体に不安感を抱いた。
小学校からの帰り道、ふと小さくなってしまった公園の前に立ち止まる。
公園内のブランコに自分よりも小さい子達が乗っていて、正直羨ましいな、なんて思った。
一年後、身長がまた20cm伸びた。
成長痛によって動けない程、身体中に激痛が走る、初めて中学校へ行ったのは、六月が始まった頃だった。
身長の高さからバスケ部や、バレー部からの勧誘を受けたが全て断った。
日々伸び続ける身長でおきる成長痛は痛みを伴い、激しい運動は難しいからだ。
よくクラスメイトや同級生からは、『ほんとにでけーなぁ、巨人じゃん!』なんて言われたりもするが正直あまりいい気分にはならない。
けれど大切な友達であるから、苦笑いをしてその場を乗り切る。
幼馴染達は庇ってくれたりするが、正直、居た堪れない。
そうして、心の中に虚しさを抱えたまま日々が過ぎてゆく。
中学一年生になった後期に、転校生が来た。
自分よりもやはり、背の低い子だった。
それでも他の人と比べて高い身長で、紫髪の、、綺麗な顔をした子だった。
その子は休み時間になってわざわざ、一番後ろの僕の席まで来て、話しかけてきた。
「なぁ、お前!名前はなんて言うんだ?」
キラキラとした顔でそう言われる。
他にも人がいるのに、わざわざこちらに声をかけてきてくれたのにびっくりして目を見開いてしまう。
「あ…えっと、神内 悠火です…」
戸惑いながらも答える、小声でも充分聞こえてたらしく、「悠火!!いい名前だな!!」と太陽のように眩しい笑顔で言われ、目が眩む。
「だ、大丈夫か?!、」
心配そうにオロオロとこちらを除く、そんなに心配しなくてもいいのに、なんて思ってしまって、失笑する。
「君の名前は?」と思わず聞いてしまう、おかしいな、だって自己紹介し終わったあのなのにこんなこと聞くなんて。
そんな自分のおかしさまでも今なら笑えてしまう。
「俺?、俺は玲王だ!よろしくな!!悠火!」
彼は一瞬キョトン?としたがすぐに笑顔になっては手を差し伸べてくる。
「うん、宜しく、玲王くん、」
そうして僕らは握手を交わす、自分よりも明らかに小さい手は、少し力を入れれば折れてしまいそうだった。
彼は強いカリスマ性があり、人を惹きつけ、二週間もすれば、学校中の人気者になっていた。
僕は身長以外は平均的な、いわゆる凡人と呼ばれる人種で、顔が良くて、頭も良くて、運動もできて、…そんな完璧人間な彼とは天と地ほどの差がある。
どうしてこんな僕と仲良くしてくれるかは不明だ、けれど、彼が僕に対してかける言葉や優しさは、嘘なんてものは無い。
半年もすれば、僕らは親友と言っていいほど仲が良くなった。
彼は”僕にだけ”、と自分の欠点を教えてくれた。
それは、酷い飽き性であるということ。
熱しやすく冷めやすい、一度飽きてしまうと、一瞬で興味が無くなってしまう。
それが、自分の一番の欠点だと、彼は照れくさそうに教えてくれた。
……彼は、人に自分の特別だ、と思わせるのが上手だとつくづく思う。
僕自身、『おまえにだけには言っておきたいんだ』『こんなに飽きないのはお前が初めてだよ』なんて言われ思わず、舞い上がりそうになった。
言うなればガチ恋製造機、もし彼がホストなら、天下無双していると心の底から思う。
帰り道、チラリと彼を見下ろせば、彼が出会った頃よりも少し伸びた髪をハーフアップにしているのが目に映る。
始めた時は思わず可愛い、なんて思ったが、さすがに失礼だと思って口には出さなかった。
その代わり、『似合ってるね』と言ったら、『そうだろ!』と自慢げに笑みを浮かべて嬉しそうに一回転して、ふわりと紫色の髪が踊るように舞う。
「…どうしたんだ?悠火、俺の顔になにかついてるか?」
不思議そうに上目遣いで聞かれる。
まずい、見すぎたか。
「いや、…綺麗な顔が着いてるな〜って、思っただけだよ、」
冗談半分で言ってみる、けれど半分は本気だ。
「ふはっ、なんだそれ!!」
たはっと猫のように彼は笑う。
「急に口説いてくるなんて、頭でも打ったか?」
夕焼けの色が白い肌に乗り、アメジストの瞳が光り輝く。
「僕が頭を打ってないのは、レオくんがよく知ってるでしょ?」
彼の質問に僕はにんまりと笑って答える。
だって僕は彼と共にずっと行動しているのだから。
「たはっ、!たしかに!」
また彼は笑う、彼の笑顔は太陽のように輝かている。
嗚呼、ほんとに幸せだ。
願わくば、この時がずっと続きますように。
そう、別れが来ることなんて、始めからわかっていたのだ。
「じゃぁ、中学校卒業したら、東京に?」
「…うん、そう」
昼食時、屋上の鍵を借りて彼と二人でお弁当を食べている最中に言われたのは、普通に考えたら当たり前なことで、僕にとっては辛いことだった。
彼は中学を卒業したら、元いた東京に戻り、有名な『白宝高校』に通うらしい。
辺鄙な街の学校に通っている僕ですら知っている進学校。
日本で一、二を争うほど頭のいい高校、というのも知っていた。
寂しそうな顔をする彼の顔は儚げで美しい。
中学三年生の…中学校生活、そして彼と一緒にいれる最後の夏。
「帰りにさ、駄菓子屋寄ろう。」
半分ほど食べ終わった弁当箱を見つめながらポツリと呟く。
「…いいな、それ」
一瞬驚いたような顔をした彼は優しく微笑む。
なんだか寂しそうに微笑んだ彼は月下美人のように、たった一日で散ってしまいそうだった。
嗚呼、ここに違うよ
今だけでも、君の一番の理解者であろう。
これからも、君の味方であろう。
世界を破壊しなければ君が死ぬなら、喜んで世界を破壊しよう。
君は、僕のタカラモノだから。
この重く歪んだこの愛は、墓まで持っていこうと思う。
僕は高校一年生になった、とは言っても、中高一貫の学校に通っているから、生徒の顔ぶれはほぼほぼ変わらない。
たまに転校生が来たり、逆に他の人が学校に転校したりなどもあったが、それでも微々たる差だ。
わかっていたけれど誰も僕の身長を越すような人はいなかった。
彼がいない学校生活は何かが抜け落ちたように意味の無い空洞が心に残り続けた。
幼馴染達にも心配されてしまった。
情けない限りだ。
……今、彼は何をしているのだろう。
夏休みに、東京に行って彼に会いに行ってやろうかとも思ったが、やめておいた。
急に行って困らせてしまっては迷惑だろうし、何より僕は彼の連絡先を持っていない。
「あーぁ、中学生の時に、スマホ買ってもらうんだった。」
後の祭りではあるが、そう溜息混じりに呟く。
会いたいなぁ、レオくん。
「…ブルーロック?」
「そう!、今建設工事してる〇✕山あるでしょ?なにかなー?って思って調べて見たらびっくり!そこが五角形の大きな施設になってさ、そこでサッカーの強化合宿をやるんだって!」
高校生活二度目の夏休み、一番上の姉である『弧春(こはる)』がそんな事を話し始める。
サッカーは兄や姉達がやっているのを見ていたりしているだけで、熱狂的なファンでは無いものの、1番好きなスポーツだ。
唯一、僕が楽しめたスポーツ。
「へぇー、対象年齢は?」
そう後ろから声をかけてきたのは二番目の兄である『唯冬(ゆいと)』である。
彼は現役でサッカーをやってるだけあって、少し嬉しそうな声色だ。
「18歳以下ね!。」
「ありゃりゃ、まじか〜。じゃぁ俺たちは対象外でっか、かなC〜」
ぴえん!と言った風にわざとらしく悲しんでいる、が、悲しいのは事実なのだろう。少しばかし、寂しそうにしている。
「ま、人生そういうもんさ。」
1番上の兄である『夏鉈(かなた)』は珈琲を片手に、ポンっと唯冬の肩に手を置く。
彼もまた残念そうにしているのは言うまでもない。
「あれ、」
先程から地面に座り、黙っていた二番目の姉である『秋鳴(あきな)』はスマホの画面をスクロールしていた指を止める。
「?、どうした?秋鳴。」
不思議そうに唯冬がソファに寄りかかりながら聞く。
「ねぇ、玲王くんじゃない?、これ。」
秋鳴はそう言いながら口を開きスマホの画面をこちらに見せる。
「ん?、あれ、ほんとだ」
画面には『白宝高校、またもや強豪を破る!!』と大きく書かれた記事と共に写真が載っていた。
写真には、玲王くんと、別の知らない白髪の男の人が写っていた。
「なになに?、”突如として現れた、高校サッカー界の新星。御影玲王&凪誠士郎。その実力は強豪を次々と破るなど、これからの活躍に期待。”」
夏鉈が秋鳴の手からスマホを取り、記事を読んでゆく。
ふと読んでいる声が止まる。なんだ?と思い後ろを振り返ると、夏鉈は目を皿のようにして、ふるふると震えている。
「ん〜?。…は?」
スマホの画面を覗いた唯冬は苦虫を十匹ほど噛み潰したかのように顔を顰める。
そして覚悟を決めたように、夏鉈はゆっくりと口を開く。
「…御影玲王は、パートナーである凪誠士郎の事を『宝物』と呼んでおり、将来を誓いあった中であると公言。凪誠士郎本人もそれを否定するどころか、『俺と玲王は運命共同体』と、肯定した。」
「はぁぁ?!なによそれ!!。」
と記事の内容を聞き絶叫したのは弧春であり、勢いよく振り返り、ソファの上から膝立ちして前のめりに記事を見ようとする。
「はる姉落ち着いて、」
ご乱心の弧春を秋鳴が宥めるが、秋鳴自身”凪誠士郎”とかいう人の『俺と玲王は運命共同体』というセリフが癪に触ったのか、不機嫌ですというオーラを隠していない。
「運命共同体ってよォ、…玲王くんの何を知ってんだよこいつは」
額に青筋を立てながらいまにも堪忍袋の緒が切れそうな唯冬がそう呟けば、そうだそうだとみな同意する。
もちろん、僕も。
最終的には彼のいい所をあげていく話になり、1時間以上も続いた会話の中、全員の口が止まることは無かった。
いつの間にか皆笑顔になっていて、正直ホッとした。
「あ、そういえば悠火、お姉ちゃん達、海外に行くことになったから。」
「…はい?」
突然のことで思考が追いつかなくなり情けない声が出る。
『あ〜、そういえば』という感じにほかの三人も同調する。
「…なんで?」
「スカウト。サッカーの。」
あーーーー、と納得してしまう。
現役サッカー選手の彼らには、海外でスカウトされるだけの能力はあるのだ。
「…ちなみにいつ?」
恐る恐る聞く、正直、未だに信じられない自分がいる。
「明日。」
…今この人なんて言った?
「え、明日?」
思わず聞き返す。
「うん、明日。」
当たり前でしょ?と言わんばかりの顔で弧春は答える。
「…行くことが決まったのは?」
「ちょうど二ヶ月前だったかな?。みんな一緒にスカウトされたぜ。」
考えるように腕を組みながら唯冬は言う。
「oh……」
なんということでしょう、僕はこの二ヶ月間何も言われていません。
思わず天を仰ぐ。
心の準備全くできてないんですけど?。
「…どこ行くの?」
「私はドイツね。」
「俺はイギリスだな。」
「私イタリア〜。」
「俺スペイン!」
始めに弧春が答えると、それに続くようにいつの間にか台所に立っている夏鉈が答え、だらけた格好でスマホをいじりながら秋鳴が言い、最後にニヒルな笑みを浮かべた、唯冬が言った。
「ちょっっと待って、みんな一緒にスカウトされたんだよね…?。なんで行く国がちがうの???。」
手のひらを向け四人を静止する。
全員一緒にスカウトされたはずなのに行く国が違うとはこれ如何に。
「そりゃ、五箇所からスカウトがきたからね。」
「oh….」
うーん、この。
五箇所からのスカウトがきたというパワーワードに選ばれなかった一箇所が可哀想だなぁ、と思わず現実逃避をしてしまう。
ストレートをパスしたら魔球が帰ってきた時って何が正解なんだろうかと真剣に考えてしまう。
「本当なら、私達みんな離れたくなかったんだけどね。それじゃいつまでたっても此処から成長できないでしょ?。だからみんな別のところにしたの。」
「日本でどんなに強くなっても、世界に通用する力をつけなきゃ、意味無いからな!。」
…僕はこの人達のこういう、躍進しようとする姿が好きだ。
こうやって優しく頭を撫でてくれるこの人達が好きだ。
「…応援してくれる?悠火」
優しい瞳でそう聞かれる。
考えるまでもない。答えは決まってる。
「もちろん。帰ってくる時は、連絡頂戴。」
「「「「うん!/嗚呼!」」」」
「それじゃぁ、みんな、行ってらっしゃい。」
翌日、空港で別れを告げる。
合宿だとか、そんなものとは比にならないくらいに、彼らは長い間こちらへは帰ってこないだろう。だからこそ、笑顔で送り出す、これが最後の別れにならないことだけを祈って。
「じゃぁ、最後に…。」
そう言いながら弧春はほかの三人に耳打ちする。
「嗚呼、それはいいな。」
「はる姉に賛成。」
「おれもー!」
「?、」
こちらがハテナを浮かべると彼らは両腕を広げる。
「「「「おいで」」」」
「…!!」
気づいた時には走り出していた。
「絶対、生きて帰ってきてね、…死んで帰ってきたら塩撒いて追い返すから…。」
「あはっ!俺らデスゲームでも行くのかよ!!」
「ま、あながち間違いじゃないかもね。」
「悠火こそ、先に死んだら容赦しないからね?」
「すぐ帰ってくるようにするからね。」
数分間抱き合っていた体を離して、真っ直ぐと四人の目を見て微笑む。
「今度こそ、行ってらっしゃい。」
「「「「行ってきます。」」」」
一人になった帰り道はどこか寂しいような感じがしたけれど、なんだか新鮮だった。
ふとLINEの着信音がなる、画面を見れば弧春からの連絡が入っていた。
『そういえばいい忘れてたんだけど。』
『私達、貴方のこと、ブルーロックマネージャーとして推薦しといたから。よろしくね。』
「は、……」
腑抜けた声が出てしまう。ブルーロックマネージャー…?え、マネージャー?!!!!????
『なんでッ?!』と急いで返事を打つ、予想以上に早く返答は帰ってきた。
『一番信用できて、一番私たちのそばにいたから。』
その理由は余りにも単純で、けれど納得出来てしまう理由だった。溜息をつきながらふと横を見る。
橋の上から見た川はキラキラと宝石のように光り輝いていて、美しかった。
「レオくんにも、見せたいなぁ……」
そう呟いて、写真を一枚撮る。
いつか再会した時に見せれるように。
いつか一緒に見れるように。
ブルーロックに、きっと彼は招待される。
もしホントに招待されたとすれば、また会える。
そんな淡い期待を胸に抱きながら、また歩き出す。
嗚呼、そういえば、今年は閏年だったか。
百鬼夜行の時期がおそくなる。
気おつけておこう。
6017文字、お疲れ様でした。
これにてProlog、というより過去的なもの終わりです。
と、ここで悠火キュンの姉兄達の紹介をさせていただきます。
《神内 弧春(じんない こはる)》
神内家長女。神内夏鉈の双子の姉。長いストロベリーブロンドの髪と翡翠の瞳が特徴的。現役サッカー選手であり、普段は髪を下ろしているが試合中は高く結ぶ。後にドイツ、バスタードミュンヘン所属選手となる。英語は無理だったがドイツ語はいけた。
《神内 夏鉈(じんない かなた)》
神内家長男。神内弧春の双子の弟で、くるんとしたくせ毛のストロベリーブロンドの髪の毛と翡翠の瞳が特徴的。現役サッカー選手2。後にイギリス、マンシャイン・C所属選手となる。英語はできる。コーヒーが好き。髪の毛が長く、細い三つ編みをしている。
《神内 秋鳴(じんない あきな)》
神内家次女。神内唯冬の(一応)双子の姉。もふもふとした短いツインテールのストロベリーブロンドと紫の瞳特徴的。兄姉の中で一番物静か。スマホ中毒なところがある。現役サッカー選手3。後にイタリア、ユーヴァース所属選手となる。
《神内 唯冬(じんない ゆいと)》
神内家次男。神内秋鳴の(一応)双子の弟。片目が少し隠れている七三分けをしたストロベリーブロンドの髪と紫の瞳が特徴的。面白いことやテンションの上がることが好き。1番コミュ力が高い。現役サッカー選手4。後にスペイン、FCバルチャ所属選手となる。面白いものが好き。
ーーーーー
というような感じになっています。
実は三年くらい前から海外に行ってたり…?。
初期案では玲王が転校して来る時期を中学二年生の初めから、中学一年生の後期に変更。
その他加筆修正後に再投稿完了。
不定期投稿の駄文野郎ですがこれからもよろしくお願いします。