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初めて戦場に立った十二歳のセイカにとって、そこは想像を遥かに超える現実だった。砦に満ちる喧騒、剣と剣がぶつかり合う金属音、兵士たちの怒号――それらすべてが幼い心を否応なく震わせた。それでも、側近たちが必ず自分を守ってくれるという確かな存在が、若き城主の心を辛うじて支えていた。
十五歳の初陣で、セイカは初めて人の命を奪った。
常に守られてはいたが、幾度も目にしてきた戦場の光景は、いつの間にか身体と精神に戦いの感覚を刻み込んでいた。その瞬間から、彼はもはやただの少年ではなかった。軍を率いる者としての覚悟が、確かに芽生えていた。
時は流れ、二十三歳。
セイカは数えきれぬ勝利を重ね、カンレイ最強と謳われる将軍となっていた。戦場では冷徹にして容赦なく、しかし側近や兵士への配慮を決して忘れない――その姿は父ケイシの生き写しでありながら、同時に彼自身の選んだ道を歩む、新たな英雄の姿でもあった。
「兄様、今日もちゃちゃっと済んだね。早く帰ろうよ」
軽やかな声を上げたのは、十八歳になったユイだった。
仮面のような兜に顔を隠してはいるが、その佇まいには幾多の戦を潜り抜けた戦士の気配がある。同時に、その面差しには麗しかった母リーシの面影が色濃く宿っていた。剣術の才は兄に劣らず、日々の研鑽によって磨かれた技は、ただひとつ――兄を守るという強い想いから生まれたものだった。
城へ戻ると、ばあやが二人を迎えた。
「セイカ様、ユイ様、おかえりなさいませ」
セイカは鎧を外し、衣を脱ぎ、湯へと身を沈める。
長年の戦で鍛え上げられた身体が、立ち上る湯気の中で静かに艶を帯びた。
その背を、ユイは黙って見つめていた。胸の奥に、熱を孕んだ衝動が走る。
「……お前も入るのか?」
振り返ったセイカの問いに、ユイは答えず、ただ立ち尽くしたまま兄を見つめている。
「いつまで突っ立っている。早く浸かれ」
そう言いながら、セイカは思わず視線を逸らした。
理由も分からぬ高鳴りが胸を打ち、わずかな羞恥が頬を熱くする。
一方、ユイの瞳に映っていたのは、決して揺るがぬ兄への想いだった。
(俺は……兄様を、愛している)
心の中でそう認めた瞬間、抑え込んできた感情が静かに燃え上がる。
湯に揺れる視線が、焦がれるように兄を追う。
胸が熱くなり、股の間が硬くなるのを感じた。
「俺は先に上がるぞ、宴がある、お前も早めに上がれよ」
セイカはほんの束の間湯に浸かっただけで風呂を後にした
その逞しい後ろ姿を見つめながらユイは右手を硬くなった股の間にもっていった
「兄様……俺は、兄様だけのものになりたい……兄様を俺だけのものにしたい‥‥」
ユイは兄を想い果てた—–
戦場の疲労も、祝宴の煩わしさも、すべてを胸の奥へ押し込め、ユイはただこの瞬間に安らぎと幸福を見出していた。戦いも、栄光も、すべては兄の隣に在るためのものだった。
「ばあや、俺の着物を用意してくれ」
柔らかな笑みを浮かべるセイカの隣に、ユイは静かに腰を下ろす。
言葉にせずとも、二人の間には深く、確かな絆と情が流れていた。
戦場の英雄として、そして兄弟として—–
セイカとユイの物語は、これからも静かに、しかし確かに熱を帯びながら紡がれていく。