テラーノベル
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初戦場はやはり12歳でやってきた、本物の戦場はやはり想像を絶するものだった、その後も幾つか戦場に出、いつも屈強な側近達が守ってくれていた
15歳での出陣で初めて人を斬った、守られ控えていたとはいえ12歳から戦場を見てきたため斬って斬られる体感はなんとなくわかっていた、ここからのセイカの躍進は凄まじかった、
見事に軍を率いて自ら先陣を斬るようになった、セイカ軍が出る戦は連勝ばかりだった
そしてセイカは23歳の最強将軍になっていた、
「兄様、今日もちゃちゃっと済んだね、早く帰ろうよ!」
仮面のような兜を被った武将がセイカに話しかけた、そう18歳になったユイだ
18歳になったユイはリーシそのものだ、顔を隠すために仮面のような兜を被っている
だが剣術の才は兄にも劣らぬ才能を開花させた、才能というより人知れず努力をしてきた結果だ、全ては兄セイカを守るために
「セイカ様、ユイ様、おかえりなさいませ」
そう言い出迎えたのは父と母を同時に失ったあの頃からずっと二人の世話係をしているばあやだ
「俺は先に風呂に入る、側近達には先に浴びるほど酒を振る舞ってやってくれ」
「はいはい、畏まりました。セイカ様ゆっくりお浸かりくださいませ」
セイカは部屋を歩きながら鎧を脱ぎ捨て着物も脱ぎ捨てていく、近頃はすっかり見慣れた光景だが
兄の逞しい裸体の後ろ姿を見ながらユイは自分の心になにかが走るのをいつも感じていた
セイカは湯に浸かりながら今回の戦場のあれこれを考える、これがすっかりセイカの習慣だ
ギィー、風呂の扉が開く音がした、ふと見るとセイカが立っていた
「な、なんだ、お前も来たのか..」
ユイは湯に入らずずっと立っている、セイカは何故か分からないが恥ずかしい気持ちになったセイカは顔を背けながらユイに言った
「いつまで突っ立っているんだ、早く湯に浸かれ」
そう言われユイはようやくゆっくりと湯に浸かってきた
「お前は今回も凄かったな、お前の活躍は本当に大きい、ご苦労だったユイ」
そう言いながらユイの方を見ると、ユイはセイカの目の前にきていた
セイカはギョッとした、ユイがカンレイの宝石と言われたほど絶世の美女であったリーシに生き写しな事は当時5歳だったセイカはわかっている、湯煙の中で見るユイは妖艶で恐ろしいほどに美しい
セイカはなにやら自分の中に不快なものを感じた
「俺はもうのぼせてきた、先にあがるぞ、お前はゆっくり浸かっていけ」
セイカはユイを残し風呂を出た
(兄様..兄様..)
ユイは自分の心に走るなにかがなにであるかをはっきりと自覚していた
(俺は兄様を愛してる..兄様..兄様..)
セイカを想うだけで体が熱くなる、
右手が堅いものを擦りはじめる
(あ、兄様..あ..あ..兄様兄様兄様!)
湯の中でユイは果てた実の兄セイカを想いながら
(兄様..兄様は違うの?兄様が俺を愛してくれているのと俺が兄様を愛する意味は違うの?兄様、兄様のものになりたい、兄様を俺だけのものにしたい..兄様..)
フゥーと大きく溜め息をついたユイは湯を出た、戦に勝った祝杯の場に顔を出さなきゃいけないからだ
ユイはそういう事は全て面倒で嫌いだったが愛するセイカの隣に座れる事だけはなによりも嬉しく幸せな事だった
弟といえど普通は城主の隣には座れないが、昔からユイをとにかく可愛がってきたセイカはそれを許した
「ばあや!俺の着物準備してー」