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祝杯の宴は大いに盛り上がった。戦場を制した夜はいつもこうして騒がしい。
セイカは15歳頃から屈強な男たちと酒を酌み交わし始め、酒豪となっていた。だが、どれほど呑んでも酔わず、記憶を失ったり突拍子もない行動をすることはない。
しかし、この夜は少し違った。
「ユイ、俺は今日は別の部屋で寝る。俺が戻ってこなくても案ずるなよ」
「なんで、兄様、どこで寝るの?」
「いや……ちょっと側近たちと重要な話があるんだ。遅くなるから、お前は先に部屋に戻れ。今晩は広々と布団を使え、わかったな…」
セイカはユイの頭をクシャクシャと撫でた。ユイは不安そうに思った。
(兄様、なんか変だ……)
その晩、ユイは一人で床についた。隣にはいつもいるはずの兄の姿がない。寂しさに駆られ、セイカの布団に寝転がる。
ほのかに漂う兄の匂いに、ユイは安心を覚えようと、畳んであるセイカの寝巻きを身に纏った。
(兄様に包まれているみたい……でも寂しいよ。今までこんなことあっただろうか?兄様が城に居る時に離れて寝たことなんてないのに……仕方ない、大事な話だって言ってたし……俺も従うべきだ)
朝、いつもならばセイカやばあやに起こされるユイだが、この朝は違った。
身支度を整えると、城内で兄を探す。
「兄様はどこだ?」
廊下で出会った侍女に尋ねると、彼女はおそるおそる答えた。
「ユイ様、おはようございます。殿は大広間の奥の部屋で眠っておられます」
侍女が言い終える前にユイは大広間へと向かおうとした
「あ! 今はまだ行かない方が……」
侍女が不安気に言った
「もうよい!」
ユイは苛立ち珍しくきつく言い放った
ユイは嫌な予感を胸に、大広間を足早に進み、奥の部屋の扉を勢いよく開けた。
(!)
そこにあった光景は、寝ている兄の両脇に二人の女が抱かれ、ほとんど裸の姿だった。
部屋には男の体液の匂いが漂っている。
ユイは初めて戦場以外で、誰かに殺意を抱いた。
しかも女に対して。
(くっ!)
唇を噛み、血が滲むのを感じながら、ユイはわざと大きな足音を立て布団をめくった。
「おい、女! 娼婦だろ!早くここから出ていけ!」
女性たちは恐怖で飛び起きた、
「お殿様は昨晩は大変乱れておいでで……」
言い訳を口にする女たちにユイは怒鳴った
「……誰がそんな事を口にしろと言った!早く失せろ!」
ユイのあまりの怒りに女たちは裸のまま部屋を出ていった。
ユイは冷たい声で、城付きの兵士に女たちに金貨を渡すよう命じた。
セイカは大声にも動じず、ぐうぐう寝ている。
「兄様! 起きてください! 兄様!」
ユイは必死に兄を揺さぶった。
ようやく上半身を起こしたセイカは、呑気な声で言った。
「なにをそんなに怒っている? 俺は独り身だぞ、女と遊ぶくらい当然だろ」
ユイの目は艶やかに潤み、唇からは血が滲む。
セイカはその目を見て、はっと表情を変えた。
「わかった、俺が悪かった。昨夜は呑みすぎて羽目を外してしまった。心配かけてすまなかった」
兄は立ち上がり、ユイの頬を軽く引っ張る。
「いつまでもそんな顔をするな、泣くな、カンレイ一の美貌が泣くぞ。よし、湯に入ってくる」
セイカの床に残された布団と枕は、ユイの命令で燃やされる。
ユイの鼻にはまだ兄の体液の匂いが残っていた‥嫉妬で気が狂いそうになる自分を抑えるのに精一杯だった——。