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ある日の昼下がり、王宮の廊下──
「ヴィクトール陛下!こちらの書類、お時間のあるときにぜひ……っ」
「ふふ、そんなに急がなくていいよ。ありがとう、助かる」
「い、いえっ!それではまた……!」
そのとき、廊下の陰で様子を見ていた小さな影──
「…………」
ハイネ、すんっ……と鼻を鳴らして、その場を立ち去った。
その夜、陛下の執務室──
「……ハイネ、少し話をしてくれないか?」
「……お忙しいのでは?」
「今日は早めに切り上げた。君と話したくてね」
(……それがほんとうなら、どうして昼間はあんな顔を他の人に……)
「それより。昼間、何かご機嫌斜めだったようだが……」
「……別に、なんでもありません」
「……ハイネ」
「……なんでも、ありませんったら」
「…………ヤキモチを妬いているのかい?」
「……っ」
一瞬で耳まで赤くなるハイネ。
「そ、そんなわけ……」
「君は、他人にこんな顔を見せることは滅多にない。つまり、私にだけ見せてくれる、特別な顔だ」
「……っ、ヴィクトール」
「嬉しいよ。君に妬かれるなんて」
そのまま椅子に座ったまま、ハイネの手を引いて、そっと自分の膝の上に抱き寄せた。
「……っ……!!!」
「私の心は、いつだって君にしか向いていない。だから、そんなに可愛い顔で拗ねないでくれ」
「……むぷ」