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「ちょっとー、二人して何してるんだよー」
晴陽さんは茶化しながら私の頭をタオルでワシャワシャする。我々は盛大に池ボチャをやらかした後に無事晴陽さんに回収され、すぐ近くの晴陽さんのマンションでシャワーを貸してもらっていた。
「しかたないだろ。ハルも遅れてきただろうが。」
シャワー上がりの湊が頭を乾かしながらあるきまわるとしばらくして私が座っている晴陽さんのベッドに落ち着く。
「湊なんでちゃっかり私の服きてんの?!」
「あったから。てか男物じゃん。彼氏?」
「おにいちゃん」
「そういえばいたなー、明日香先輩なつかし」
先輩か。六年間帰宅部だった私はいつも遠目で高校のみんなの部活という名の青春を見守っていただけで実際に先輩や後輩がいたことはそういえばなかったかもしれない。
「先輩っていいなー…」
「紫雨ちゃん先輩欲しいの?」
「嘘、声に出てた?」
キラキラな青春を送ってきたであろう人達の前でなんて不甲斐ないことを行ってしまったのだろうか。
「ずっと帰宅部でちょっと憧れるかも。」
「そうねー、先輩欲しくなったらお兄ちゃん紹介するよ。」
「ふふふ、そこまでじゃないって」
あれ、なんだか馴染めてる?
「紫雨、先輩なんていいもんじゃないぜ?」
運動部の人はだいたいそういうのだ。そんなもんなんだろうか?晴陽さんが素早い動作でぱっと湊のほうを向いた。驚きと何かが混ざった表情。
「呼び捨て?!」
「え、」
言われるまで気づかなかったがたしかにそうだ。私も湊の方を見る。目があってすぐ逸らされる。
「まあ、、、ほら、俺等池ボチャを通してマブダチになったから。」
「へ〜、、、、」
湊をみる晴陽さんの視線が一瞬とても鋭くなったように感じたが次の瞬間にはそんなことはなく、今度はこっちを向く。
「いいなーマブダチ」
明るい声と笑顔で見えなくなりかけたほんの少しの焦りと悲しみ。感情コントロールのプロがみせる小さな隙を私でなかったら見逃していたろう。