テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
【第1話】 焚き火の夜
夜の焚き火のそば、羽京は弓を手入れしていた。
静かな表情で糸を張るその指先を、龍水はじっと見つめる。
「羽京、貴様は本当に器用だな」
豪快な声とともに、龍水は焚き火の向かいから身を乗り出した。
「そうかな。ただ、仲間を守るには弓しかないから」
羽京は淡々と答える。だが、その瞳は炎に照らされて、どこか脆さを秘めていた。
龍水は笑い、羽京の隣に腰を下ろす。
「弓で守るのも結構!だが……時には誰かに守られるのも、悪くはないだろう?」
羽京は目を見開いた。
龍水の手が、ためらいなく羽京の手に重なる。
大きくて温かい手に包まれて、羽京の心臓が跳ねた。
「……僕は、弱さを見せるわけには」
「フハハ!弱さこそ人を愛おしくするものだ!」
龍水は迷いのない笑みを浮かべ、羽京を真っ直ぐに見据えた。
羽京は観念したように小さく息をつき、その手を振り払わずに受け入れた。
炎の揺らめきの中、二人の影が寄り添うように重なった。