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【第2話】寄り添う温もり
龍水の大きな手に包まれたまま、羽京は少しだけ視線を落とした。
「……龍水って、ほんと真っ直ぐだよね」
「無論だとも!大海原を進む船のごとく、我が心は揺るがん!」
豪快に笑うその横顔に、羽京は思わず口元を緩めてしまう。
いつもは人を射抜くほど鋭い瞳なのに、今はただ、安心感しかなかった。
「……なんか、不思議だね」
「何がだ?」
「龍水のそばにいると……警戒心が抜けちゃう。気を張らなくても大丈夫だって、思えるんだ」
龍水は一瞬黙り、焚き火の明かりに照らされた羽京を見つめる。
そして、ふっと優しく微笑んだ。
「羽京。貴様はすでに十分強い。だが……強さの中に安らぎを求めてもよいのだ」
そう言って、彼は羽京の肩をぐっと引き寄せた。
不意の温もりに、羽京の心臓が跳ねる。
けれど、嫌ではなかった。むしろ、安心感に包まれて胸が熱くなる。
「……龍水」
「ん?」
「少しだけ、このまま……いい?」
「フハハ!望むところだ!」
龍水は誇らしげに笑い、羽京の頭を自分の肩に預けさせた。
夜風が吹き、焚き火の炎が揺れる。
その音に混じって、羽京の小さな安堵の吐息が龍水の胸元に落ちた。
豪快な海の男と、静かな弓の使い手。
まるで正反対の二人の時間は、確かにやさしく、甘く流れていた。
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