テラーノベル
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※捏造注意
※呪鬼のその後の話
〈天野視点〉
とてもではないが整備があまり行き通っていない歩道を走る。
誰にもバレないように。
封印されているものといえば厄災、祟り神や怨念等、良くないものばかりだろう。
今持っているこれもそうだ。
猿の偶像。
願いを叶える代わりに誰か一人が犠牲になる恐ろしい呪具だ。
実際、これには酷い目にあった。
古い館でも、かつての母校でも大切な人に追われ、そして殺された。
どちらもあの子達のお陰で封印することが出来たのだが。
あの日からぽっかりと穴が空いたような気持ちになった。
すべて終わったのに。
全部守ったのに。
いや、違う
守れていない。
親友を
幼馴染を
大好きだった人を
彼はいなくなってしまった。
まるで最初からいなかったように
俺も、彼の声を、姿を、忘れてしまいそうだ
それが怖かった。
俺だけは覚えていたかった。
ふと悪い考えが頭をよぎる
偶像を持ち出せば、また彼と。
考えついた頃には神社に居た。
あの日みんなで封じ込めた場所。文字通り必死で抗った。
それを無碍にしようとしている。
ダメだ。
帰らなくては
会いたい
声を聞きたい
顔を見たい
今度こそ、しっかり話をしたい
そして今に至る。
自分の中の正義感を押し殺して、今、偶像が、俺の手の中に、、
汗と震えが止まらない。
また殺されるのではないか。これがあの子達にバレたら、
そんなことは分かっている。
視界が歪む、
空が赤くなる
あの時と同じだ
『おい』
あぁ、この声だ
視線を向ければ俺の部屋に猿山がいる。
あの時と同じ服で
「らだぁ…」
瞬間、視界が揺れた。
首を掴まれ、地面に叩き伏せられたんだ。
『お前がどういうつもりなのかはしらねーけどさ、』
『偶像を自室に持ってくるなんて、また殺されたいってことかァ?天野』
彼の口元が大きく歪む
首を掴まれて声が出ない。
『俺は嬉しいよ、お前が正義で居てくれるから俺はお前のこと一方的に恨めるよ』
…
彼の手を掴む、そっと、優しく。寄り添うように
『…何笑ってんだよ』
彼の手が緩む
「ケホッ…らだぁ。」
「謝りたかった。ずっと」
「お前のこと、ちょっとは知ってるつもりだった。お前とずっと一緒にいたから」
「でも、実際は全然だったよ。俺さ、お前のこと全然気づいてなかった。」
「お前が世間からどんな目で見られてたか、親からどんな扱いを受けてたか、あの日、どんなつもりで警察の夢を諦めたのか。」
『…何が言いたいんだよ』
『お前がどんな正義感ぶら下げようと俺がお前を恨む気持ちは変わらない。あの日からずっと』
「だから!…俺はらだぁのこと、全部知りたい。」
『は?…』
首を掴む強さが増す
「カハッ…」
『お前の!そうゆう無駄にキラキラしたのが大っ嫌いなんだよ!』
「ら、だぁ」
『ずっと憎んでた。お前は結局夢を叶えて、俺の苦労なんか微塵も知らなそうな目をしやがって、』
『お前が笑うたび、話すたび、ずっっと苛立ちを覚えてた』
あ、目が、霞む、
ダメだ、まだ話さなくては、
まだ…
…急に、彼の手から力が抜ける。
らだぁ…?
『そして、なにより…』
『俺のこと心配してくれて、救おうとしてくれたお前にこんな醜い嫉妬心を覚える自分のことが、世界で一番、何よりも、大嫌いだ』
『どうだよ、これがお前の知りたかった本音だぞ』
『お前の優しさは全部俺にとって呪いだったんだ』
「ら…だぁ…」
『分かったか、俺はお前が思っているような綺麗な人じゃねぇんだよ』
「…俺、らだぁのこと何にも知らなかった」
「あんなに一緒にいたのに。俺が一番側にいたのに」
「ごめんね、らだぁ。」
『言いたいことは終わったか?』
「…らだぁ」
「好きだよ」
『…は?』
「俺、ずっとらだぁの背中追っててさ、何でも出来るお前が俺にとってヒーローみたいでさ。」
「上手く言えないけど今度は俺がらだぁのこと、助けたい。」
『…だから、お前の優しさが全部厄介だって言ってんだろ 』
『お前は今、自分を殺した殺人鬼を前にしてるんだぞ』
『お前の理想の俺と今の俺は違うんだ。青春ごっこも甚だしいぞ』
「うん。でも、それでも」
『俺はお前のことが嫌いだ』
「好きだよ、らだぁ」
『嫌いだって、言ってるだろ』
「らだぁ」
『…お前の、側が一番安心した。気を許して話し合えるのはお前だけだった』
「うん」
『お前は俺にはないものを全部持ってた。
暖かい家庭、ふざけあえる友達、自由な選択。』
『俺には、お前しか居なかったのに、お前はいろんなやつとつるんでた。大切な弟がいた』
『取られると思った』
「うん」
『お前のことが大嫌いなのにお前のことが何よりも好きだった』
『俺は、どうしたらいい、天野…』
「二人で、考えようよ。」
「またさ、駄菓子屋かなんかでアイス買ってさ、ベンチで話そ。」
『お前は…楽観的だ』
「お前はいらないこと考えすぎ」
『似たもん同士か、俺ら』
「そうだよ」
「らだぁ、会えてよかった」
『俺も』
「俺と一緒にいてくれる?」
『うん』
『お前、泣き虫だし』
「あ、おい!いつの話だよ!」
『今もだろ』
「らだぁだって泣いてる癖に」
『うるせ』
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コメント
1件
あおいです🌷読ませていただきました。 らだぁの苦しみがこれでもかと溢れていて、胸がぎゅっとなりました。「お前の優しさは全部俺にとって呪いだった」———この台詞、重すぎて何度も反芻してしまいました。それでも天野さんが「好きだよ」って真っ直ぐ向き合い続ける姿勢に、涙が出そうに。最後の「二人で、考えようよ」に希望が見えて、本当に良かった。お互いにしか埋められないものを抱えた二人の距離感、とても繊細で素敵でした。続きも楽しみにしています📖