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#溺愛
桜咲かな
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桜咲かな
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#百合
第三十七話 知らないはずの記憶
翌日。
彼女は朝から、昨日の写真のことを考えていた。
写真に写っていた二人。
片方は、相手かもしれない。
じゃあ、もう一人は誰なのか。
考えても答えは出ない。
それでも、写真を見るたびに
胸の奥が妙にざわついた。
放課後。
帰宅してから、彼女はアルバムをもう一度開いた。
写真の前後を探していると、
一枚だけ見覚えのないものが
挟まっていることに気づいた。
「これ、いつの……?」
写真には、夕方の道が写っている。
昨日の写真と同じ場所。
けれど、今度はベンチが少し遠くに見える。
裏返す。
そこには日付だけが残っていた。
彼女はその日付を見た瞬間、手を止めた。
どこかで見たことがある。
でも、どこでなのか思い出せない。
その夜。
いつものようにサイトを開く。
『今日、変な写真見つけた』
『俺も』
『え?』
『昨日の写真のこと』
『何かあった?』
『日付が分かった』
彼から送られてきた日付を見て、彼女は息を止めた。
自分が見つけた写真の日付と同じだった。
『……同じ』
『やっぱり?』
『うん』
二人とも、しばらく何も送らなかった。
同じ場所。
同じ日。
同じ言葉。
そして、同じように思い出せない記憶。
偶然だと考える方が難しくなっていた。
『ねえ』
彼女が送る。
『うん』
『その日って、何かあったのかな』
『たぶん』
『私たち、同じ日にそこにいたのかもね』
『……俺もそう思う』
その言葉を見た瞬間。
彼女の頭の中に、また一瞬だけ何かが浮かんだ。
夕方。
誰かと歩いている。
笑っている。
そして、別れ際。
「またね」
聞こえた声。
今度は、昨日よりはっきりしていた。
彼女は思わずスマートフォンを握り直す。
『どうした?』
『今、声が聞こえた気がする』
『誰の?』
『分からない』
『何て言ってた?』
彼女は少し迷った。
『「またね」って』
画面の向こうで、彼も息を止めた。
自分が何度も思い出していた言葉と同じだった。
『俺も』
『……え?』
『ずっと、その言葉が浮かんでた』
二人の間に、長い沈黙が落ちた。
もう、単なる偶然とは思えなかった。
けれど、それでも肝心なことは分からない。
誰と会っていたのか。
何を約束したのか。
そして、なぜその記憶だけが残っていないのか。
『会ったら、絶対に話そう』
彼が送る。
『うん』
『写真も全部持っていく』
『私も』
それから二人は、少しだけ別の話をした。
いつも通り笑って。
いつも通り「また明日」と言って。
でも、今日は二人とも知っていた。
自分たちが追いかけている記憶は、
もう「昔の誰かの話」ではない。
自分たち自身に関係している可能性がある。
そして彼女は、
アルバムを閉じる前に写真を一枚だけ取り出した。
写真の中の二人。
そのうち一人の顔は見えない。
けれど、もう一人の手には――
見覚えのある小さな紙が写っていた。
コメント
1件
うわああ第37話…!💦 写真の日付が一致して、二人とも「またね」って同じ言葉を思い出すの、もう胸がぎゅってなったよ…!😭✨ 特に「会ったら絶対に話そう」って約束するところ、すごく切なくてエモい…。最後の「見覚えのある小さな紙」の伏線が気になりすぎて続きが待ちきれないよ〜!!🌸