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空港で歓迎式典に参加した私は、ハリソンさん達と一緒にリムジンに乗って移動中。ゆったりとした椅子に翼を目一杯広げてリラックス。こう言うのって隣同士に座るものじゃないのかな?ハリソンさんは別の車両だし、気を遣わせてしまったかな。
式典では記者さんからの質問が飛んできた。変な質問なら無視しようかと思ってたけど、地球の皆さんへのメッセージだから気軽に答えちゃったよ。直ぐにSPの皆さんに囲まれてしまったけど。
ハリソンさんからは急な行動は護衛が難しくなるから控えてほしいってやんわりと言われてしまった。考えるより先に行動してしまう思慮の足りなさを痛感するよ。反省。後悔はしてないけど。
無事にホワイトハウスに辿り着いた私は大会議室に招かれた。既に交易品は飛行場で引き渡してあるから簡単な挨拶かな。
「ティナ嬢、今回も素晴らしい品を有り難う。地球の食べ物はどうだったかな?」
「数日で売り切れるくらい大好評でしたよ。当分は食べ物を中心に頂きたいんですが、どうですか?」
「もちろんだとも。君が提供してくれるトランクや医療シートには破格の価値がある。それに見合った充分な数を用意しよう。しかし、問題は君が持ち帰れる量だが」
「それについては問題ありません。アリア」
『こちらをご覧ください。ティナが新たに手に入れたトランクの容量です』
ブレスレットから壁に数値が投影されて、室内の皆さんが目を見開く。
「これは……運輸局長、どうかね?」
「はい、この数値ですとタンカー1隻分の積載量に匹敵しますな」
「それは凄いな。では、この数値を目安に食品を準備しよう。保存食を中心にして良いのかな?」
「はい、生鮮食品についてはもう少し規模を拡大してからと考えていますから」
その辺りはばっちゃんと相談して決めるつもりだ。私に販路なんて持ち合わせはないし、お店はばっちゃんに頼るしかないからね。
「それは有難い。前回に続き、今回貰った品も有効活用すると約束しよう」
「問題なく使えましたか?」
「うむ、前回貰ったトランクは緊急の食糧支援で大いに役立ったよ。何せ一つでトラック1台分だ。その輸送量には驚かれたよ」
「それは良かった」
相変わらず地球では自然災害が頻発してる。その際の物資輸送に大活躍したらしい。トランク10個もヘリコプターを使えば楽に運べるし、更に運べる物資の量はトラック10台分だ。
「それに今回は医療シートも纏まった数を貰うことが出来た。人類のために使うことを約束しよう」
「お願いします。ただ、トランクと医療シートはそのまま使ってください。研究のためには使わないでほしいです」
「むっ、解析はされたくないかな?」
「と言うより、無駄にしてほしくありません。どちらもマナ……魔法を使った技術ですから、魔法を扱えない地球の皆さんでは解析することが出来ないんです……」
技術供与は外交のカードらしいけど、アードが地球に渡せる技術は意外と少ない。純粋な科学技術の産物はあんまり無いんだよね。だから現物を渡して使い方を教えるくらいしか出来ない。
「なるほど、魔法か。我々には使えないのかな?」
「残念ですが、使えないんです」
「ふむ、分かった。充分に周知させよう」
すんなり納得してくれた。いや、解析は良いんだけど無駄になるから使ってほしいだけなんだけどね。
「それで、国際会議についてなんだが」
「はい、日程に余裕はありますか?」
「もちろんだ。会議そのものは1日だが、各国首脳が君との個別会談を強く望んでいる。もちろん君の意思が最優先だ」
「どのくらい……?」
「軽く100ヶ国以上だな」
うん、無理。
「流石にそれだといつまでも終わらないと思います……」
「当然だな、わざわざ地球に来てくれた君に負担をかけるのは本意ではない。だが、数ヵ国だけは受けてほしい。もちろん厳選するし、時間も短くする。どうかね?」
ハリソンさんには色々お世話になるし、それくらいなら……。
それに、アードとの交渉をアメリカが独占していると見られたら困るし。
「分かりました」
「ありがとう。下手な質問が飛ばないようにこちらからも注意する。肩の力を抜いて会談に望んでほしい」
私小市民なんだけど?まあハリソンさんと雑談してるんだから今更だけどさ。
「さて、難しい話はここまでにしよう。国際会議についての打ち合わせは後で出来る。先ずは長旅の疲れを癒してほしい。ティナ嬢が滞在中の宿泊先については、異星人対策室が用意しているみたいだ。そちらに問い合わせてほしい」
「ありがとうございます、ハリソンさん」
ハリソンさんは笑顔で何人かを連れて部屋を後にした。大統領だもん、多忙なんだろうな。わざわざ時間を作って貰うのが申し訳ないよ。
「ティナ嬢。空港にある戦闘機についてなのだが、注意事項はあるかな?」
軍服を着た将軍さんが聞いてきた。
「ありませんが、下手に触らない方が良いと思います。防衛機構が発動したら大変なことになってしまいますから」
星間航行出来るスターファイターが地球上で暴れ回ることになる。SFかな?まあ、その時点で友好関係は崩れるだろうね。
「わっ、分かった。誰にも触らせないよう厳重に警備させて貰おう」
私の答えに将軍さんが青い顔をした。もしかして解析しようとしてたのかな?
急がなくても教えるよ? もう少し交流を深めてからだけどさ。
私はそのまま異星人対策室のあるビルに案内されて、一階では皆さんが出迎えてくれた。
「久しぶりだ、ティナ。元気そうで何よりだよ」
「ジョンさん!またお世話になります!」
皆さん笑顔だ。私も嬉しく……ん? メリルさんの胸が膨らんでいるような?
『解析完了、腹部の骨の一部に損傷が見られます』
骨に損傷!? 大ケガじゃん!
私は直ぐにメリルさんへ駆け寄った。周りもビックリしてるけど、見過ごすことは出来ない!
「治癒の光よ!」
メリルさんの胸に手を当てて治癒魔法を使った。感触的に、ギブスをしていたのかな?
前世でも肋骨を折ったことがあるけど、呼吸する度に痛みが走って辛かった記憶がある。メリルさんにもお世話になってるし、治してあげなきゃ!
「ティナちゃん……ありがとう、大分楽になったわ」
最初は驚いていたメリルさんも、優しげに微笑んでくれた。良かった、傷を癒せた。
安堵感と同時にとんでもない疲労感と眠気が私を襲う。このくらいの怪我を癒すだけでも私にとっては至難の技。ただでさえ少ない魔力をごっそりと消費してしまう。
「ティナ!」
倒れそうになった私をジョンさんが優しく受け止めてくれた。初日から迷惑かけちゃった……せめて、アレだけは!
「ジョンさん……ごめんなさい……これを……アードの育毛剤です……これで……髪の毛は……」
イクモーダZを確かにジョンさんに手渡して、私は眠気に負けて意識を手放した。