テラーノベル
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翌日。
玲司とルナリアは街の中央図書館を訪れていた。
「思ったよりでかいな……」
玲司は建物を見上げた。
三階建ての石造り。
長い年月を感じさせる古びた外壁。
街の中心に堂々と建つその姿は、
まるで歴史そのものを閉じ込めているようだった。
「この街で一番古い図書館だから」
隣でルナリアが言う。
「昔の資料もたくさん残ってるらしいわ」
「頼むから成果あってくれよ」
玲司は肩を回した。
「何も見つからなかったら心が折れる」
「まだ始まってもないのに?」
「やる前から諦めるのも才能だ」
「威張ることじゃないわね」
ルナリアは呆れたように笑った。
◇
図書館の中は静かだった。
高い天井。
並ぶ本棚。
古い紙の匂い。
利用者の姿は少ない。
ほとんどの人が黙って本に目を通していた。
「じゃあ手分けするか」
「そうね」
二人は別々の棚へ向かう。
玲司は歴史関係。
ルナリアは魔法関係。
それぞれ調査を始めた。
◇
二時間後。
「眠い……」
玲司は机に突っ伏した。
収穫はほぼゼロ。
どの本にも魔法の存在は書かれている。
だが原因については何もない。
どれも曖昧だった。
まるで大事な部分だけ抜け落ちている。
「世界中が知らないのか、隠してるのか……」
その時だった。
「カミシロ」
ルナリアが小走りでやって来た。
「見つけたかも」
「本当か?」
玲司は即座に起き上がる。
ルナリアが持っていたのは一冊の古びた記録書だった。
表紙は擦り切れ、文字も消えかけている。
かなり古いものらしい。
二人は机を挟んで本を開いた。
ページをめくる。
そこには年代ごとの出来事が記録されていた。
『王歴四百二十年』
『宮廷魔術師団による新たな研究成果を発表』
『魔法学園の増設決定』
『北方地域にて新属性魔法を確認』
玲司は目を見開く。
「本当にあったんだな」
「ええ」
ルナリアも頷いた。
誰も見たことのない魔法。
だが確かに存在していた。
それだけは間違いなかった。
さらにページを進める。
すると記録に変化が現れる。
『王歴四百七十年』
『魔法発動率の低下を確認』
『原因不明』
『調査継続』
玲司とルナリアは顔を見合わせた。
次のページ。
『*王歴四百七十二年*』
『*魔法使用者減少*』
『*原因不明*』
さらに次。
『王歴四百七十四年』
『全国規模で魔法消失を確認』
『原因不明』
そこで文章が終わっていた。
しばらく沈黙が流れる。
「五十年前……」
ルナリアが呟く。
「その頃に何かが起きた」
「ああ」
玲司は頷く。
少なくとも方向性は見えてきた。
魔法は突然消えた。
誰にも理由は分からない。
そしてそのまま五十年が過ぎた。
「続きは――」
玲司がページをめくる。
そこで手が止まった。
「……なんだこれ」
「え?」
ルナリアが覗き込む。
次のページがなかった。
正確には。
ページだけがなくなっていた。
破れたのではない。
燃えたのでもない。
誰かが丁寧に切り取ったような跡が残っている。
「なくなってる……?」
「いや」
玲司は指で紙の跡をなぞった。
「最初からじゃない」
そこには確かに何かがあった。
そして。
誰かが意図的に消した。
「何が書いてあったんだろうな」
玲司の言葉にルナリアは答えない。
ただ切り取られた部分を見つめていた。
妙に長く。
妙に静かに。
「ルナリア?」
「あ……ごめん」
彼女は我に返ったように顔を上げた。
「少し気になって」
「まぁ俺も気になる」
だが考えても答えは出ない。
分かるのは一つだけ。
誰かが隠したかった何かがある。
それだけだった。
◇
帰り道。
夕暮れの空を見上げながら玲司は歩いていた。
「収穫はあったな」
「そうね」
「原因は分からなかったけど」
「でも前進はした」
ルナリアはそう言った。
確かにその通りだった。
五十年前。
魔法が消えた。
そして何者かが記録を隠した。
それだけでも大きい。
「面倒なことになりそうだなぁ……」
玲司はため息を吐く。
本音を言えば平和に稼ぎたい。
だが。
こういう謎を見つけると放っておけない自分もいる。
「帰る?」
ルナリアが尋ねる。
「いや」
玲司は少し笑った。
「もう少し調べてみたくなった」
その言葉に。
ルナリアも小さく笑った。
「私も」
夕日が二人の背中を照らす。
その先に何が待っているのか。
まだ誰も知らない。
消えた魔法の真実も。
切り取られた記録の意味も。
そして。
なぜか胸の奥に残った小さな違和感の正体も。
今はまだ分からなかった。
コメント
1件
ああ、第3話、読ませていただきました。図書館のシーン、すごく好きです。高い天井や古い紙の匂いといった描写が、物語の世界にすっと入っていける感じがしました。そして、記録がぱったりと途切れて、しかも誰かに切り取られた跡がある——あの場面の静かな緊張感がたまらなかったです。ルナリアが妙に長く見つめていたのも気になりますね。二人が少しずつ前に進んでいる感じが伝わってきて、続きが本当に気になります。ありがとうございます、楽しみにしていますね🌷
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