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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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読ませていただきました……第107話、「引き金が重い」って感覚、すごく心に響きました。 ゲームの中だって分かっているのに、大切な人に向かって撃てなくなる。その“重さ”が、夢月さんの人間らしさを一層深く見せていて、とても好きです。クロさんがシックス=白川さんかもしれないと気付きかけるラストの焦りも、二人の関係性がこれからどう変わるのか気になります。お互いが「撃てない」という同じ気持ちを抱えているのが切ないですね……。続きが本当に楽しみです。
「流石に……コレは多すぎる!」
『残り時間あと僅か! どうにか踏ん張れ!』
予定していたルートを大きく外れてしまった私は、その後secondのサポートが受けられずに戦闘続行。
お互いのサポーターがどうにか進路を合わせようとしてくれたみたいだけど、どうしても噛み合わない。
というか、今回のチームの人数が多いから無理!
路地裏で戦う事を諦め、屋内に逃げ込んだ結果。
本当に袋小路というか、いつも通りのソロ戦に陥ってしまっていた。
「ふっ! せいっ!」
短い声を上げつつも相手の首にナイフを突き立て。
武器を奪い取ってから、コレを使って周囲に向かって威嚇射撃。
コレを繰り返しながらも、屋内だからこそギリギリステルスキルが狙えると言うもので。
派手に戦った後は一度身を隠し、死角から攻めて一人ずつ減らしていく作業の繰り返し。
もういっぱい戦ったよ!? 流石にもうイベント終了で良いんじゃないかな!?
などと思いつつ、また次の敵を討伐してみれば。
ガッ! と。
背後から、強く踏み込む音が聞えて来た。
まさか後ろを取られた!?
そんな事を思いつつ、立ち上がりながら振り返ってハンドガンを構えてみると。
「っ!」
そこには、クロさんが居た。
彼の狙撃を警戒していたからこそ、極力姿を見せない様に行動してきたのに。
今の彼は、対物ライフルなんて持っていない。
手にはハンドガン……というか、私がこのイベントの前まで使っていたソレを構えて。
真っすぐ、此方に銃口を向けて来ていた。
更には、彼の瞳。
いつも私を見ている優しい目じゃない。
何処までも鋭く、此方を殺す事を躊躇していない視線を向けていたからこそ。
「フッ!」
「なっ!?」
上体を逸らしながら、あえて此方から接近した。
これと同時に空いている左腕を使い、クロさんの銃を逸らすが……一瞬判断が遅れたのが、よく分かった。
彼を攻撃する、という事に本能が拒否した気がする。
少しだけ遅かった私は、慌てて彼が放った銃弾を浴びてしまった。
けど大丈夫、防弾スーツの上だ。
だからこそ、すぐにキルされたりしない。
そんな訳で、無理矢理相手の銃を退かし此方も銃を構えたのだが。
…………あれ?
引き金って、こんなに重かったっけ?
体勢を崩された相手が、またハンドガンを構え直してしまった。
だからこそ此方も、彼に向かってもう一度銃を構える。
すると、先程出っ歯さんと対戦した時みたいな。
お互いに銃口を向け合う様な姿勢になってしまったが……今の彼が、余分な時間をくれる訳がないと本能的に理解した。
だからこそ至近距離で肘を突き出し、相手の銃をまた逸らす。
クロさんが撃った弾丸が此方の頬を掠めて、多少のダメージが発生したのが分かった。
いつもだったら気にしない、この程度何でもない傷。
だというのになんでか……VRなのに。
“痛い”って、そう感じてしまったのだ。
「せいっ!」
「嘘だろ!?」
こちらは構えを解いて、相手の銃を此方の銃で殴りつける。
この瞬間クロさんの手からはハンドガンが離れ、武装解除に成功した時の癖で足払い。
すると彼はその場で倒れ込み、此方を見上げて来る訳だが……これに対して。
私は、見下ろしながら銃口を向けたけど。
「クソッ……やっぱ、強いですね」
悔しそうにしながらも、相手は此方を見て……少しだけ、笑ったのだ。
憎しみとか、そういう怖い感情じゃない。
どこまでも鋭いけど、でも確かに別の目的を持った様な。
それこそ、プラス方面の思考を持っているのだろう予想出来る、そんな瞳。
武器を失った彼は、負けを認めた様子で此方を見上げている。
だからこそ、なのか。
少しだけ、いつもの“黒沢君”みたいな表情を浮かべている気がしたのだ。
「…………」
「……シックス?」
銃口を向けたまま動かない私を不穏に思ったのか、彼は不思議そうな顔を浮かべたが。
どうしても、引き金が引けなかったのだ。
セーフティでも掛かっているんじゃないかって程に、ピクリとも動かない。
コレはゲームだ、気にする必要なんか全く無い。
彼がキルされたというログに、私の名前が残るだけ。
黒沢君ならきっと、明日からも普段通り私に接してくれるだろう。
挨拶したり、一緒にお弁当を食べたり、サブキャラでは共に戦ったり。
そんな毎日が繰り返されていくと分かっているのに。
“のめり込み過ぎた”影響なのか……私のハンドガンのトリガーは、これまでに経験した事が無い程に重く感じたのだ。
『夢月……時間だ。お前の“仕事”は、終わりだ。お疲れ様』
インカムから兄の声が聞こえて来て、イベントの終了時間を知らせてくれた。
タイムリミットに救われた、そう言葉にするしかないのだろう。
私は……多分。
ゲームだからと言っても、クロさんに。
というか……黒沢君に向かって銃弾が放てないプレイヤーになってしまったんだ。
今まで、こんな事無かったのに。
グレーさんや出っ歯さんとだって、ちゃんと“試合”として戦えたのに。
黒沢君にだけは、出来なかった。
撃鉄が銃を叩く瞬間を想像するだけで、全身が震えてしまったのだ。
だから私は……私と言う賞金首は。
きっと、この人を“殺せない”。
「ごめん……なさい」
「……え?」
ポツリと呟きながら、イベント終了と共に強制ログアウトした。
仕事としてやっている以上、一個人の誰かに対してこういう行動は良くない。
それはよく分かっているのだ。
でも、どうしても。
私には……撃てなかった。
だってあの人は、私にとって。
“リアル”だって楽しい事はいっぱいあるんだと、いつも教えてくれる。
本当の意味で、“初めての友達”なのだから。
こればかりは、私自身の心が全力で拒否したのが分かったのだ。
ゲームで銃弾を放つ事が、こんなにも怖いと思った事は無い。
「ごめん、お兄ちゃん……最後、変な映像残しちゃった……」
『いや、あれくらい良いさ。いくらでも言い訳が利く。お疲れ様、夢月。今回も頑張ったな、凄いぞ』
兄の言葉を聞きながらも、私の“仕事”は終了した。
今回の成果、私とsecondのタッグは一度もキルされなかった。
本当に充分、百点満点の仕事が出来たと思って良い結果なのに。
最後に黒沢君に銃を向けてしまった事が、なんだか物凄くズンッと心に重く伸し掛かるのであった。
これまでずっと優しくしてくれた、私なんかに構ってくれた。
色んな所に連れて行ってくれて、暖かい笑みを浮かべてくれたその人に。
私は……“武器”を向けたんだ。
そんな感情と共に、そのまま“リアル”へと戻って行くのであった。
◆
「兄貴! ねぇ兄貴!」
「おぉ? なんか勢いが凄いな? 見てたぞ~お前の活躍、すげぇじゃねぇか。シックスを目の前にして、ちゃんと生き残った」
ゲームのイベントを終え、兄の部屋へとすぐさま突撃してみれば。
相手はケラケラと笑いながらも、此方の成果を称えてくれた。
でも、ですね。
スナイパーとしては、今回全然役に立ってない訳でして。
あろう事か、賞金首の中で一番弱いんじゃ? みたいに言われているsecondに裏を掛かれ、ライフルを放棄。
窓の外へと退避して難を逃れようとした結果、真下に止まっていた大きめな車のルーフがクッションとなり。
普通だったら死んでるわっていう傷をアイテムで癒してから、その後は必死こいて探し回った挙句。
どうにかギリギリと言って良いタイミングで、何とかシックスに追いついただけ。
結局ハンドガンでもろくな事が出来ず、相手に圧倒された。
けど……撃って来なかったのだ。
そのお陰で、今回俺は生き残りとなった訳だが。
逆に俺一人生き残っていたせいで、他のチームの順番が回って来なかったとクレームを頂いてしまいそうな状況でもある。
まぁ、今はそんな事どうでも良いとして。
「シックスって……白川さんのお兄さん、なんだよね?」
「ぶわぁぁか。それこそ仕事の内容だし、何より相手の個人情報だ。俺がYESともNOとも答えられないの、分かるだろ?」
問いかけてみれば、兄は非常に呆れた様子で両手を広げてみせる。
やっぱり直接聞き出すのは無理か、分かっていたけど。
でも、最後の言葉。
表情自体は、いつものシックスだったというか。
完全に無表情だったし、見下ろされて銃口を突きつけられた時は、漏らすんじゃないかって程怖かったけど。
けどあの言葉と、喋り方。
声とか、雰囲気とか全然違うのに……何故か、“白川さん”と被ったのだ。
圧倒的な強さ、冷静沈着な態度。
どんな状況においても表情一つ変えず、とにかく“結果”だけを残す賞金首。
まるでお手本の様に、自分達にも出来るんじゃないかって動きを組み合わせて、どこまでも“無敵を演じる”ナンバーズの一人。
この時点で、他の賞金首とは違うのだ。
分かりやすく言うのなら……全然、“人間臭さ”が無かった。
まるでゲーム内の教育プログラムの完成系というか。
ある意味、誰しもがお手本にしやすい強キャラクターみたいな存在だった。
だというのに今回、俺の目の前で感情らしきソレを見せた。
彼も人間なんだと、はっきりと分かる程の反応を見せてくれた。
何故?
以前彼個人に黒星を上げさせたチームだから、感情が動いた……とか。
いや、これなら俺を撃つ事に躊躇なんかしない筈だ。
中身が白川さんのお兄さんだった場合、大事な妹に寄って来る“悪い虫”である筈の俺なんて、それこそ全く躊躇無く撃ち抜く事だろう。
でも彼は、シックスはそれをしなかった。
それどころか……。
「お願い、本当の事を教えて。シックスは……いったい“誰”なの?」
「…………ぶわぁぁかめ! だから仕事に関わるって言ってんだろうが。ペラペラ喋る訳にいかない契約結んでんの、こっちは。家族だからって調子に乗るなよ? ホラ、出てった出てった。この後、俺の出番もあるんだからな。お前は生放送でも見ながら、俺の雄姿でも観察してろってんだ。ちったぁ勉強になるだろうさ」
そんな言葉と共に、部屋を追い出されてしまうのであった。
VRの世界は、何でも出来る様であってそうじゃない。
システムアシストに頼らないと、身長や体重、そして各所のサイズが少し違うだけでも“違和感”が発生してまともな操作が出来ないってのが常。
人間の脳みそは、それくらいに“自分の情報”を自然と記憶しているモノなのだ。
だからこそ、システムのアシストに頼って“別の誰か”になるのがフルダイブVRゲーム。
だと言うのに……ガンサバイブオンラインには、それが極めて少ない。
多分本場の戦士達がプレイヤーを見たら、鼻で笑ってしまう程もっさりと動いている事だろう。
そういう予想だって出来るくらいに、あのゲームでは皆“普通”なのだ。
だからこそ、活躍し続ける賞金首の存在は大きい。
けど、もしも。
本当にもしも……“全く別の誰か”に成り代われる才能があったとしたら?
例えばそれが、普段の自分には存在しない筈の能力を、VRでは扱えるだけの適応能力があったとしたら?
それこそ……白川さんのキャラクター、46leather。
普通の人間だったら再現不可能な超高速ダッシュに“馴染んでしまう”才能の持ち主なら、どうなのだろうか?
以前兄と、白川さんのお兄さんが話している所を見た。
相手の声は聞えなかったけど、それでも彼が6keyなのだと確信を持てる会話をしていた筈なのだ。
でもその情報が、今回の件で揺らいだ。
本当に僅かな、とても細い糸だとも言える可能性まで検討するのなら……。
「関係者だからこそ、代わりにお兄さんが話していた……とか? だとすれば、あの人に一番近い人間。そしてお兄さんに絶対の信用を預けている人物が……シックス?」
そうなって来ると、俺の想像では一人しか思いつかないのだ。
まさか、いやまさか。
あり得ないだろう、そんな事。
彼女は近くに居ると、実はとても感情豊かなのが分かる。
それに慌てんぼうだし、困った事があると分かりやすく焦る。
毎度ながらコレを整えてあげるのだって、最近では俺の役目になって来ているのだ。
俺の知っている白川さんは、“シロさん”はそういう人。
でももしも……あのシックスの中身が、彼女だとすれば――
「ぇ、あ、え? 俺、どうすれば良いの? そうなると、俺……シックスを撃てないけど」
兄貴の部屋の前で、呆然としたままマヌケな表情を浮かべてしまうのであった。
姿形は違うとしても、白川さんに銃を向けるとか……無理なんだが?
いや、まだ決まった訳じゃない。
中身が彼女だと確信した訳じゃない。
だから焦るな、焦るなよ? 俺。
けども……。
「あのお兄さんが俺に対して、あんな口調で謝って来るとか、全然想像出来ない。むしろ白川さん本人だったら物凄く納得いく……リアルだったら、あれと一緒に頭下げて来そうだけど」
こればかりは、本人に聞くしかなさそうだ。
けど……どうやって?
無理でしょ、普通に。
俺は彼女の特別でも何でもない、ただの友達でしかないのだから。
ウチの兄貴同様、“秘密”にしない訳が無い。
あ、あれ? これ、本気でどうすれば良いんだ?